真剣勝負
数日経ち、ついに学内トーナメント一回戦が始まる日が来た。
コロシアムは一つしかないし、Aブロックから順に一回戦を行うことになるが、優勝商品はなく、今後就職する上での資格にしかならないので、初めから棄権する者も少なくないのだそうだ。
つまり、想像してたほど時間はかからないらしい。
Aブロックの俺は当然出番も早く、椅子のある待ち受け室で待機する。
待ち受け室には俺以外にも何人かいるが、対戦相手はもうひとつの待ち受け室にいるし、空気がピリピリしてないので割りと居心地は良いな。
俺の前の出番の人が席を立って試合に赴くと同時に、アナンダ先生がやってきた。
「どう?調子は?」
「普通……です」
「なら大丈夫ね!
空くんの対戦相手は確か、ベクトルの向きを操作するシッディを持ってるわね
じゃあ、頑張って!」
それだけ言って、アナンダ先生は去っていった。
朝、係員からシッディを聞いたときに思ったけど、ベクトル操作って現世で聞いたことある能力だな……。
俺のシッディで対処するには……。
出番が来たのでコロシアムに行くと、観客が大勢見ているのが分かる。
制服を着てない人もいるので地元の人も来てるのであろう。
はぁ……緊張する。
「あらあら~、初戦の相手は坊やかしら?」
目の前にいる対戦相手の人が話しかけてきた。
「は、はい」
どう見ても年上のお姉さんだが、これくらいの年の人も珍しくはないので、特に驚きもなかった。
それよりも、ベクトル操作なのに男じゃないことの方がビックリである。
コロシアムの端にいる人が、右手を高く掲げ始める。
これはもうすぐ試合を始めるという合図。
どうせケガしないので、審判は端で邪魔しないように試合を見守るのだ。
「坊やでも手加減しないからねぇ」
こっちだって負けたくないんだ、手加減はしない。
「試合開始!」
審判が右手を降り下ろすと同時に、試合開始の宣言がなされる。
ここからは真剣勝負!
「行くわよ坊や!!!」




