誰もいない空き教室で
文化祭当日、準備期間中俺に話しかけてきたのは結局アナンダ先生だけで、何の役割も与えられないまま開催を迎えてしまった。
アナンダ先生にサボったら留年と釘を刺された俺は、朝のクラス集会に来ていた。
「皆さん、メイド喫茶を成功させましょう!」
「「「「おー!」」」」
アナンダ先生の一声でクラス内の士気が高まり、皆準備に取り組み始める。
「何よそれ……アストラル!あんた女の子より可愛いじゃん!」
「本当……可愛い!」
メイド服を着て女装しているアストラルを、アンナとマノが誉めたてる。
「か、可愛い……わけないでしょ!」
ヴィジュニャーナも、アストラルの女装を気に入っているようだ。
「そ、そうか?恥ずかしいな……」
満更でもなさそうなアストラル。
俺はぼっちでありたいと思ったんだ。
異世界転生した頃のように友達出来るかもなんて甘え考えはない。
でも、暇だ……。
そんなこんなでいよいよ開園時間。
メイド喫茶やお化け屋敷、その他もろもろがオープンする。
早速、生徒の家族や地元の人が集まり、騒がしくなっている。
その頃俺は、空き教室の隅の席でぼーっとしていた。
いないものとして扱われている俺が仕事をするわけもなく、かといって一人で文化祭を回るわけもなく、ぼーっとしていたのだ。
そういえばマヤは来たのかな、文化祭は二日間開かれるから、明日かもしれない。
現世だったらスマホだのゲームだの出来たのになぁ。
……
まだ日が落ちかけてないから夕方ではないか。
文化祭終わりにもクラス集会があって出席取られるから帰るわけにもいかない。
……
始まってからどれだけの時間が経ったのだろうか……。
ノスタルジーというか悲壮感というか、物悲しい感覚がある。
こんなことならもう一回戦争でも起こった方が退屈しないかもな……。
……。
……
ゴーン
はっ、鐘の音が聞こえる。
いつの間にか寝てたのか、この鐘は文化祭終了、自分のクラスに集まれという合図。
結局、文化祭初日は何もすることがなかったな……。




