ジャンヌ様はリンゴがお好き
そんなことを考えてるうちに、いつの間にか周りが白く光始めていた。
ジャンヌ様が目を閉じて手を組み、何かを祈っている。
周りの様子に気づいてすぐ、光は消え、ジャンヌ様も祈るのをやめる。
「終わったぞ」
本当にすぐ終わった。
「これで俺もシッディを……」
「うむ、お主は"あらゆる物や概念を∞にする"シッディを手に入れた」
何かよく分からない異能力だ。
強力っぽいことは何となく理解できるが……
こちらが聞くまでもなく、ジャンヌ様は解説し始めた。
「これだけ凄いシッディはかなり久しぶりなのじゃ……
例えば腕を振ったときの風圧を∞にすれば、目の前の物は全て消し飛ぶに違いない」
おお!ジャンヌ様のお墨付きもあるということは、間違いなく凄い能力!
「リンゴがいっぱい食べたいときに∞個に増やすと大変なことになるとか不器用な面はあるが、戦闘に関しては申し分ないじゃろう」
これこそ異世界転生だ!この能力でチーレムしてやる!
ところで……
「なぜリンゴに例えたし」
「う、うるさい!」
「リンゴ好きなんだな、可愛いところあるじゃん」
「ワシはお主より数十年も歳上じゃと言うのに!」
ジャンヌ様をからかうのはこの辺にして、色々気になる、この世界について聞いてみるか。
「ところで、俺はあまりこの世界について詳しくないんだ
色々教えてくれないか?」
「だからあの小娘を案内に付けたのじゃな
よかろう、学園に入る前に必要な知識を授ける」
「それじゃまずは……シッディとシッダについて教えてくれ」
「シッディは、それを授からないとどんな人間でも使えないような力
シッダはシッディの所有者という所じゃな」
大方予想通りだ。
シッディ=異能力、シッダ=異能力者ということだろう。
「ジャンヌ様は神と対話できるって本当なのか?」
「本当じゃ
何故かは分からんが、第一戦争の時から祈れば話せるようになった」
「第一戦争って?」
「第一戦争も知らんのか?
本当に変わっとるのお」
知らないと恥ずかしいレベルの知識らしい。
もしジャンヌ様に聞かなければ、学園で常識知らずとして笑われる存在になっていたかもしれない。危ないあぶない。
「すまん、この世界については本当によく知らないんだ」
「やれやれ……
この国の歴史について簡単に話してやろうかの」
ジャンヌ様によれば、この世界はいつから存在するのか分からないが、少なくとも第一戦争の頃からの歴史は明確にされているという。
西暦0年……棄糸、ネーション、カントリーの三国が戦争をした。
この時まだシッディはなく、ジャンヌ様も普通の女性で、戦争と言っても戦乱の時代のような原始的な争いだったと言う。
しかし西暦4年、ジャンヌ様は何の脈絡もなく神との対話が可能になり、シッディを授けることも出来るようになる。
ジャンヌ様はその神がかった力を盾に戦争の終結を提言、西暦5年に和解という形で戦争は終わり、シッディを三国民に分け隔てなく授けるようになる。
これが、西暦65年現在で第一戦争と呼ばれる出来事らしい。
西暦という言葉もこちらの世界と共通しているのが不思議だが、異世界だししょうがないよな。
今後はこういうことを気にしないようにしよう。