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あの頃は良かった

 記憶はある。

 過去に戻り、また元の可能世界に戻るまで何度も記憶移動を繰り返した記憶だ。

 どうやってここが元の可能世界だと知ったのかと言えば、ジャンヌ様かヨーニに聞いた。

 最早何でもありなんじゃないか?とすら思うのだが、そんな俺でもアストラル一人救うのにここまで苦労しているわけだから、人間とはか弱い存在である。


 元の可能世界に戻り、教会まで瞬間移動、ジャンヌ様に元の世界かを聞いたところから、この世界が再び動き出す。


「ついに戻ってきたのか!?」


「その通りじゃ、よく頑張ったな」


 ジャンヌ様が俺の頭を撫でようとして、身長の関係から届かないことに気づく。


「……」


「な、なんじゃその目は!

ともかく、プラーナに脳を制御させて発狂しないようにしていたとはいえ、それなりに疲れたであろう?」


「いや、脳の疲れも取ってくれてるみたいだ」


「そうか、なら安心じゃ」


「今のところ、NJについての対策法は見つかってない

アストラルたちに話したらまた面倒なことになりそうだし、理学部に行ってみようと思ってるんだが」


「分かった、ワシも戦闘に活かせる発想力があれば手助け出来るのじゃが」


 理学部の元を目指して、瞬間移動しようとすると、ジャンヌ様が俺を引き止めた。


「アーサーは、元気じゃったか?」


「ああ、元気そうだったよ

寿命をシッディで伸ばしてるみたいだった」


「アーサーが生きておった頃は、学園は分裂していなかった

たまに教会に元気そうな生徒たちの声が聞こえてのお……

アーサーも大変だったが楽しそうじゃった

……と、ついつい昔話したくなってしまうのが年寄りの性

変な話をしてすまなかったな、空」


 正直、ジャンヌ様の言わんとしていることは分かった。

 ジャンヌ様の願いなら、極力叶うよう努力してみようかね。


「……行ってくる」


 目の前が溶け始める。

 NJを操作するシッディか、どんな対策すれば良いんだ?





「神様……ワシは用済みなのか?ヨーニはワシの代わりなのか?それとも……」

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