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世界と世界の狭間を越えて

「プラーナさんの量子を操る力がありますよね?

それを隣の可能世界に使います

可能世界同士は物やエネルギーをやり取り出来ない

つまり可能世界一つ一つは孤立系ですが、人の長期記憶はシナプスで繋がったニューロンの核のDNAと、それによって生成されたタンパク質によって管理されています

それを操作すれば、物質やエネルギーをやり取りせずに記憶を書き換えることは可能なはずです

記憶さえあれば隣の世界のプラーナさんが更に隣の世界の記憶を操る、と繰り返してアーサーさんが生きている世界に行けます

そこでアーサーさんに過去に戻させてもらって、更にこの世界に戻ってくるんです!」


「ちょっと待て、僕のシッディは宇宙の外にまで使えるほど範囲が広くない

机上論という奴だ」


 ガルバは、さっきから何か考え込み、聞いていない様子である。

 その間にヨーニが作戦を説明する。


「能力の拡張については大丈夫です

ヴィジュニャーナさんのシッディで私の力をプラーナさんに分け与えます

x = 私の力の範囲 として y = xとなる関数を用意して貰います

私とプラーナさんが一緒に入れば、行けます」


 理論上は行けるのかもしれない、しかし不安面が多すぎる。

 それに……


「何で君がそこまで……」


 ぽっと出なのに、なぜアストラルを助けようとここまで奮闘するのか、分からない。


「人を助けるとはどういうことなのか、知りたいから……です

それに……兄君さま、あなたに興味があります」


 帰ってきた答えは、よく分からないものだった。


「……君やジャンヌの言う通りなら、アストラルが生きている可能世界だってあるはずだ」


 プラーナのそんな一言に、アンナが反論する。


「今この世界で生きてなきゃダメなの!

私は可能世界とかよく分からないけど、私は私しかいないよ!」


 私とは何なのか、それは誰にも分からないが、シュレディンガーは世界こそが私だと言っていた。

 俺こそが世界なら、隣の世界は俺じゃないとも考えられる。

 まあ、そんなこと考えてもしょうがないか。


 プラーナが、悩んだ末に結論を出した。


「……分かった

ガルバが考え込んでる間にとっとと済まそう」


「アストラルにはそこそこ恩があるし、助けてあげたいんだからねっ!」


 最早普通のデレになっているヴィジュニャーナがブラックボックスを出し、プラーナとヨーニが入る。

 ちょっとしたあと、箱が開き二人が出てきた。


「どう……?」


 アンナが尋ねると、プラーナが答える。


「今、ちょっと動かしてみたけど、確かに隣の世界に使えているようだ」


 プラーナにはどんな風に見えているのか、それは分からないが、とりあえず後は隣の世界の誰かの記憶を書き換えてもらうだけだ。


「私の記憶を書き換えて!」


 アンナが志望する。

 紛れもなく、今この場でアストラルと最も関わりが深いのはアンナだし、当然だろう。


「……俺にやらせてほしい」


 しかし、俺は名乗り出た。


「何でじゃ?」


「確かにアストラルとは仲がいいわけじゃない

だが、アストラルとガルバを戦わせたのは俺なんだ……」


「何よそれ……あんたはジャンヌ様を救うためだったんでしょ……?」


 仕方がなかった、と言う表情でこちらを見つめるアンナ。

 先程とは違い少し冷静さを取り戻しているようだ。


「もっと早く、他人にもこのシッディを使えることに気づけていれば、アストラルを救えたかもしれないんだ

それに今回のやり方だと、ここからある程度離れた可能世界では、プラーナが能力を外の可能世界に使えない、あるいは能力を持ってすらいない可能性だってある

その時はどうなるか分からない、だったら友達も親もいない俺が行くしかないだろ」


 と、表向きには述べるが、本心は違った。

 俺だって一度落とした命を拾って貰ったんだ。

 アストラルは気にくわないところもある、それでも、俺だけが生き返ったなんて他の奴に知られたら何て思われるか分からない……。


 要するに、ジャンヌ様やアンナ、マノ、ヴィジュニャーナ、プラーナ、ヨーニから嫌われるのが、怖かったのだ。


「親もいない……じゃと?

前から思っとったんじゃが、空、お主はどこか違和感がある

本当にこの世界の住人か?」


「ぼっちって意味では世界から隔離されてるかもな

とりあえず、プラーナ、任せた」


「やれやれ、これならガルバに付いていた方が良かったかもしれないな

もし僕が君のことを知らない世界になったら、僕の母さん……ルンの名前を出してくれ

それじゃ、行くぞ!」

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