ヒロイン候補かと思ったらそんなことはなかったよ
外に出ると、マヤの家は住宅街にあるみたいで、似たようなレンガ造りの家が並んでいた。
そんな景観の中に一際高い建物がある。
見た目から言ってあれが教会なのだろう。
確かにマヤの言う通りここからそう遠くはない位置であった。
道中、
「色々ありがとう、この恩は必ず返すよ」
「大したことはしてないですからいいですよ
ところでその服、似合ってて良かったです」
「そ、そう?」
程度しか会話しなかったのはまさにぼっちの性であるが、ともかく無事教会に到着した。
「ここが教会です、ここでジャンヌ様にシッディを貰うんです」
「ジャンヌ様?」
「はい、この教会の主であり、神と対話できる唯一の方なんです」
この世界における宗教の教祖か……?
でも、確かにシッディというものは存在するみたいだし、怪しい感じではなさそうだ。
中に入ると、聖堂が広がっている。
よくある教会のように、ステンドグラスを通して全体がきらびやかに照らされ神秘的だが、こちらの世界にあるような聖母の絵は飾られていない。
「ジャンヌ様!シッダ候補を連れて参りました!」
マヤが大きな声でジャンヌ様とやらを呼ぶ。
シッダというのは名前的にシッディを持つ者の総称だろう。
「そんな大声出さなくても聞こえるのじゃ、小娘」
予想に反して、可愛い声が返ってきた。
「す、すみません……
それより、この人にシッディを授けていただけませんか?」
「ふむ……成人した男か……?」
ジャンヌらしき人物が右奥にある部屋から出てきた。
が、驚くべきことにその姿はまさに幼女であった。白髪であることを除いて、西洋にいそうな、顔立ちの綺麗な幼女である。
小さな体に合わぬ大きめの白いドレスが、白髪と調和している。
「あなたが……ジャンヌ様……?」
「男、安心しろ
辺境から来た奴は皆ワシの若々しい体を見て驚くのじゃ」
「ジャンヌ様はこう見えて100年以上生きていらっしゃいますからね
その話だけ聞いた人は、可愛い体に驚いちゃうんですよ」
「可愛い体とは何じゃ!ワシはナイスバデーじゃ!」
キュッキュッキュッの体を震わせながら、マヤを睨んでいるジャンヌ様に
「シッディを貰えるって聞いてきたんだけど……」
と尋ねると、ジャンヌ様は気を取り直してこちらの方を向き言った。
「ああ、すぐに出来るぞ」
「そうなのか?」
「神様は全能じゃからの、時間はかからんよ」
マヤから、ジャンヌ様は神と対話できると聞いていたが、どうやら事実らしい。
神とか全能とか色々聞きたいことはあったが、とりあえずはシッディを貰って、その後に質問しよう。
シッディとやらがあれば、見知らぬこの世界でも地に足がついて安心だ。
「それでは私は帰りますね、学園生活頑張ってください!」
あれ?俺と仲良くしてくれるヒロイン候補じゃないのか?
「マヤは学園に通ってないの?」
「私は幼い頃に入って卒業しました
大丈夫ですよ空さん、学園には様々な年齢の方が通ってますから、成人男性も目立たないんです
あ、もしかしたら成人してないかもしれないですが……」
マヤの目線は、俺の股間を向いている。
「俺は23歳だし、成人してるから!」
「ふふ、そうでしたか、すみません
では失礼します、ジャンヌ様、空さん」
マヤは本当に帰っていった。
ま、まあ後には学園生活が控えているんだ。
そこでハーレムや好感度を教えてくれる男友達が出来るのがテンプレの展開、焦る必要はない!