経験は活きるか経験を活かすか
周りの景色が溶け、そこはネーションの学園のコロシアム。
勝機が見えない以上、学園の中で安全に戦っておきたい。
勿論、ジャンヌ様も連れて身の安全を保つ。
「なるほど、ここなら死ぬリスクはないということか……
僕の力で君をまた別の場所に移しても堂々巡り、意味がないからね
卑怯な戦い方だ」
「何とでも言え」
「兄君さま!」
突如、コロシアムの出入口からか弱い叫び声が響き、黄色髪で年少用の制服を着た幼女がこちらに走りよってきた。
「兄……俺が?」
「年上ですから!」
そりゃそうか。
妹モノの作品に影響受けてつい妹だと思ってしまった。俺は妹も弟もいないけど。
「ってそんなことより、何だ?」
「私、プラーナさんのシッディ分かりますよ!」
「え?」
「プラーナさんは量子の状態を操作できるんです!」
何でこの幼女が知ってるんだ?
プラーナは割りと情報漏洩に気を付けていたし、ネーションの学園内でばらすようなことはしてなさそうだが……。
とりあえず聞いておくか。
「つまりどういうこと?」
「量子っていうのは分子とか原子をさらに細かくしたものなんです
私もあなたも、全ての物は量子から出来ています
でも、量子の位置とか運動量は確率によって色々可能性があって、人に観測されて初めて決まるんです
その確率を操作できるのがプラーナさんの力!
さっきプラーナさんが宇宙の端から帰ってこれたのも、量子の位置は確率によって制御されるから、出来るだけ地球に近い位置を選べばすぐに戻ってこれるってわけなんです!」
「お、おう……
細かい説明は後で聞くとして、まずはプラーナを沈めないとな」
「兄君さまは∞にするシッディ
初めて兄君さまとプラーナさんが会ったとき、兄君さまは∞にするシッディでプラーナさんのシッディを突破できました
つまり、兄君さまのシッディは本質的にプラーナさんのシッディを上回っているんです
量子の位置を、兄君さまが決めてしまえば勝てます!」
「でもさっき宇宙に飛ばしたとき……」
「それは兄君さまが途中でシッディをやめてしまったから
使い続けるんです!」
「わ、分かった」
「作戦会議は終わったかい?
僕もそろそろ本気で行こうかな!」
プラーナが本気を出した直後、俺のシッディでプラーナを月の近くまで飛ばし続ける。
しかしそのとき、俺の体は硬直し、シッディが解けプラーナが戻ってきた。
「確かに君が僕の位置を固定すれば、僕は僕を操作できなくなる
でも、君は操作できるんだよ!」
くっ、そうか……。
つまり、相手に行動する時間を与えてはいけないわけだ。
こうなったら∞に加速して……
「待って兄君さま!速度を∞にしてはダメ!」
「え……?」
さっきから何を知っているんだ?
この戦いが終わったら色々問い詰めるか。
さて、考えろ……。
俺は今まで、色んな経験をしてきたんだ。
そこに突破口はあるはず。
そういえば、初めてアストラルと戦ったときに、こうやって考えることを学んだんだっけ。
あのときはアストラルが分身を出しまくって……そうか!
「突破口が見えたよ、プラーナ」
「突破口?バカな……」
プラーナはこの学園では死なないと余裕ぶっている。
だが、一時的に外へ送ることは可能だ。
その時は俺にシッディを使えばいいと思っているんだろう。
だが……!
「バカな……空が……分裂している!?」
プラーナが、驚きの声を上げる。
アストラル、お前のやり方をパクらせてもらうよ。
お前が+1して自分を増やしたなら、俺は100に∞に近い数だけ俺を増やす!
「これで俺のシッディを一度に何度も使えるようになった
なぜなら俺がいっぱいいるわけだからな!」
コロシアム全体、それどころか組体操をしてる奴もいるぐらい、辺りは俺で埋め尽くされていた。
何と仰々しい光景だろう。
「プラーナ、覚悟しておけ!」
勢いに任せ、言いたかった台詞を言ってみる。




