新しい可能性
「お前は……!」
ジャンヌ様には恩がある。
結局主人公みたいにはなれなかったが、それでもこのシッディのお陰で前より自信が付いたし、これでもジャンヌ様に感謝しているのだ。
勿論、そんなことを表現できるほど感情表現が上手かったら、ぼっちではない。
だが、誘拐と聞いて黙っているわけには行かない。
そんなわけで、シッディを使いジャンヌ様の元へ馳せ参じると、そこは教会だった。
目の前には、お姫様だっこされたジャンヌ様と、それをしているプラーナがいた。
「よく気づいたね、僕がジャンヌを誘拐することに」
「ガルバの所まで行ったら、伝聞係がバラしてくれたよ」
「やれやれ、僕もとことんガルバから信頼されているらしい
でなければ君はガルバに殺されている」
「そんなことよりジャンヌ様を離してあげてくれ」
ジャンヌ様は俺がプラーナのシッディを受けたときのように体が硬直しているみたいだ。
動く気配もない。
「僕が君の言うことを聞く義理がどこにあるんだい?」
「お前はガルバを信頼してないみたいだな
ダーラはガルバを様付けで呼んでたが、お前は呼び捨てだし」
「あの女は人間的に好きじゃないんだ
頃合いを見て殺るつもりだったんだよ、光秀がアーサーを殺したようにね!」
「そんなことペラペラ話して良いのか?」
「あのときは状況が状況だったから身の上は話さなかったが、今は違う
君はここで死ぬんだからね!」
そう言ってプラーナが右手をかざすと、体が固まる。
奴のシッディだ、だが、俺のシッディで瞬間移動すれば防げる!
「背後は貰った!」
いつもの通り気絶寸前のパンチを放つ。
決まったらすぐさまプラーナの抱えているジャンヌ様を救出!
が、
「痛っ!」
光の壁が、俺のパンチを遮った。
当然その反動が右手を襲う。
「僕が人の動きを止めることしか出来ないと思ったのかい?
あれは僕の能力の一部でしかない」
くそっ、またこのパターンか。
せめて相手が能力を自慢げに話してくれれば良いのに……。
プラーナが教会の椅子にジャンヌ様を置くと、こちらを睨み付けて言った。
「そろそろ、本気を出させてもらうよ」
来る……!
相手のシッディは今のところ考えても分からない、ならば分かっている俺のシッディの使い方を考え直すしかない!
今までは瞬間移動とパンチぐらいにしか使わなかったが、他にも使い方があるはずだ……。
待てよ、俺は今までこの力を自分にしか使っていない。
相手にも使えるのか?
あらゆる物を∞に出来るのなら、使えるはず!
気合いを入れて、プラーナを宇宙の端まで∞に近いところまで飛ばそうと念じると、見事にプラーナは教会から消えた。
「な、なんだ、意外とあっさりだったな……」
「瞬間移動は君の専売特許じゃないんだよ」
声がしたと思ったら、再びプラーナが姿を表す。
この方法もダメか……。
このままじゃ殺される……ここは時間稼ぎだ。
「プラーナは何でガルバにすりよる?何が狙いなんだ?」
「またお喋りかい?
これ以上話す義理はないよ!」
くっ、どんな対処法も上手くいかない!
こうなったら、最後の手段だ!




