捕らわれた教祖
シッディを使って、瞬間移動する。
そこは王室のような部屋であり、王座には一人の女が座っていた。
見た目20代後半で、赤いローブと、装飾の多い緑の服を身に纏い、偉そうにふんぞり返っている。
「ダーラがやられたか……役立たずな奴だ」
間違いない、こいつがガルバだ。
「お願いがあって参りました
戦争を止めては頂けないでしょうか?」
まずはへりくだる。
丁寧に話せばあるいは……
「ハッハッハ!これは面白い
無論、却下だがな」
ダメか。
「なら、実力行使しかないですね」
「この私に勝てる気でいるのか?空よ
お前の話はプラーナから聞いているが、私に敵うとは全く思えないのだがね」
これはまた、ボスの中のボスみたいな奴だな。
異世界転生した俺にはふさわしい相手だが。
ガタン!
突然背中側から、門が開く音がした。
「ガルバ様!ご報告申し上げます」
門から入ってきた男は俺を横切りガルバの前で跪く。
「どうした?」
「ジャンヌを捕らえました」
「フッ、やったか」
ジャンヌ……ジャンヌ様か!?
「下がってよいぞ」
「ハッ」
男が立ち上がり、早々と退出する。
「待たせたな。さて、始めようか」
「ちょっと待て、ジャンヌを捕らえたって……」
「本当は時間をかけて取り入りたかったのだがな
貴様のお陰で予定が早まったから、半ば強引に誘拐させてもらったよ」
「ジャンヌ様をどうして……」
「シッディを産み出せるのは彼女しかいない
我々の夢を叶えられる唯一の存在ということだ」
「夢……?」
「私は最初、この力を貰ったとき、使いどころが分からなかった
そして、命令が全てのカントリーにおいて、命令を与えられても成果を残せなかった!
そしたらどうなる?」
ヴィジュニャーナから聞いた時の予想は当たっていたか。
「カントリーでは年齢や出身地など関係ない、全てが実力至上主義だ
そして実力によって4つの階層に分けられる
最上位からブラーフマナ、クシャトリヤ、ヴァイシャ、スードラ
そして、その4つのどの階層にも当てはまらない最下層、アチュート
私は当然アチュートに落とされた!」
しっかし何でこいつはこんなにもペラペラ自分の境遇を話してくれるんだ?
まあ、それがボスらしさというやつか。
「スードラの奴等ですらアチュートを奴隷のように扱う
その上、他のアチュートのストレスの捌け口が、当時無能力に等しかった私へと向けられたんだ!
私は孤独だった……寂しかった……」
ガタン、と再び門が開く音がした。
俺は直感で、振り返らずとも誰が来たのか分かった気がした。
「あのー……」
「何だ?これからが起承転結の転なのに」
「そろそろジャンヌ様を助けに行きたいんですけど……
話や戦いの続きは、彼らに任せますよ」
ガルバに話しつつ、目線を彼らの方へと向ける。
瞬間移動できる俺しか、今すぐにはジャンヌ様を助けに行けないしな。




