3次元空間
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「作戦会議は終わったかしらぁ?」
「ああ、待たせた」
「で、でも、そんなことが本当に可能なのかしら
私が扱うのは関数なんだからねっ!?」
ヴィジュニャーナが不安がっている。
無理もない、この作戦で一番負担が大きいのはヴィジュニャーナだ。
しかし、この中で唯一∞が扱えそうなのはヴィジュニャーナのみ。
「大丈夫、上手く行くって!」
根拠のない励ましで、ヴィジュニャーナを慰めると、敵の方を向き、
「行くよ!」
と注意を向ける。
「アンナ!」
「分かったよ!」
アンナに合図を出し、矢を沢山出させる。
更に、俺の力で矢の数を+1、+1と繰り返し、二人でなければ出せないほど多量に浮かばせて一斉発射の準備を整える。
「二人でたくさん出せば届くと思ったのかなぁ?」
既に数十万の矢が空中に浮かんでいた。
多量の矢を一斉発射する。
「甘いわよぉ!」
発射された数十万の矢は、全てアンナの方を向き直して動き出す。
「ぐわぁっ!」
全てが突き刺さり、アンナの悲痛な叫び声が町中に響き渡る。
相手の計算能力はこちら二人を優に越えているらしい。
「残念だったわねぇ、せっかくの作戦も無駄に……ん?」
「こっちよ、年増!」
ヴィジュニャーナが無駄に敵を煽って振り向かせる。
「まさか、さっきの矢はフェイクぅ!?」
「そう、俺達に注意を向け、マノとヴィジュニャーナから視線を反らすのが俺達の作戦!
矢は予め威力を押さえてあるんだ!」
準備を終えたマノが
「よし、今だ!」
と叫ぶと、ヴィジュニャーナが出していたブラックボックスが開き、口を覆うのが精一杯なほど小さなバリアが、ふわふわと敵の口元に向かって進み覆う。
「く、糞……息が……!
空間操作が……使えない……!
……」
バタッと音をたてて敵が倒れる。
しばらくはまともに動けないであろう。
「上手く行ったね」
と、マノが感想を述べると、アンナがマノを煽り立てる。
「それにしてもあんた、必死になると結構男っぽい低い声なのね~」
「う、うるさい!
アストラルが嫌かと思ってごにょごにょ……」
今までは無理して高い声出してたのか?
俺のせいだとしたら申し訳ないな。
「いや、かっこいいと思うぞ
似合ってるし、気にする必要ないよ」
「そ、そうか?分かった……」
ヴィジュニャーナが改めて先の戦闘を振り替える。
「超実数なんてものがあったなんてね
お、教えてくれたアストラルに感謝してる訳じゃないけどねっ!」
「結局何だったのか分からないんだけど!」
作戦の時はとにかく矢を放つようにとしか言ってなかったせいか、おいてけぼりにされたアンナが説明を求めてきたので、俺が簡単に
「要は∞次元空間の孤立系なら敵も操作できなかったってことだ」
と説明すると、
「もっと詳しく教えてよ!」
とアンナが納得の行かなそうな顔をした。
ヴィジュニャーナが、ふう、とため息をつくと、アンナに説明しようとする。
人に話すついでに自分に言い聞かせて頭の中で咀嚼しようというつもりなのだろう。




