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ブラックホールを抜けると、そこは異世界であった。

「う……ん……」


 赤レンガの屋根が目に入る。

 どうやら藁の布団で寝ていたらしい。

 しかし、俺はブラックホールに吸われて死んだはずなのだ。

 ここはどこなんだ?

 上半身を起こしてキョロキョロと辺りを見渡すと、いかにも中世ヨーロッパって感じの、レンガ式住居の中みたいだ。

 実際、冷蔵庫とかもないような古いキッチンで女の子が調理している。


 ん?女の子……?黒髪セミロングの女の子!

 とりあえず何がどうなったのか聞くため声をかけようとする。

 すると、先にあちらがこっちを見て、装飾の少なく動きやすそうなピンクのドレスをひらりとさせながら、振り向き様に


「あ、目が覚めましたか?」


と言った。


「あ、うん……よく分からないけど、君が助けてくれたのか?」


 彼女が調理を止めて、こちらに寄ってくる。


「私もよく分からないんです」


 助けてくれた女の子も事情が分からないらしい。

 コミュ力のない俺だが、混乱した状況では発するべき言葉が自然と見つかるような気がした。


「それじゃ、お互いの身に起きたことを話そう」


「あ、はい!」


「まず俺から……」


 俺は、自分が地球もろともブラックホールに吸われたことを話した。

 勿論、女の子に俺がニートだなんてことは話してない。

 それはともかく、彼女は驚いている様子だった。


「変ですね……こちらではそのようなことは起きていません

そもそもブラックホールなんて見たことないですよ」


「そんなはずは……

もしかして、地球の中で生き残った国があるのか?

日本がたまたま運悪かっただけで……」


「日本?どこですか、それ?」


 おかしな話だ。何故日本語が通じて日本を知らないんだ?

 そんなとき、ふとある考えが脳裏をよぎった。

 異世界転生――――

 異世界に転生したとすれば、日本語が通じて日本が存在しないというのも納得が行く。

 しかし、まさか本当に、自分が……

 考えを巡らせるなか、彼女は自分の身に起きたことを話し始めた。


「私は、手をかざすとすぐに人とか物を治せる治療のシッディを持っていて、簡単に言えばお医者さんをやっているんです

それで、とあるお客様から預かったワンコに手をかざして治したら、何故か急に、ワンコに覆い被さるようにあなたが現れて……」


「シッディ……君は何を言っているんだ?」


「シッディを知らない人がこの世界にいるなんて、あなたは本当に不思議な人ですね」


 どうやらシッディはここではメジャーな単語らしい。


「そうだ、まだ名乗っていませんでしたね

私はマヤって言います!」


「俺は海濶空、よろしく

この世界には全然詳しくないんだ、よければ教えてくれるかな」


「分かりました、ざっくりお話ししますね――――」


 彼女……マヤによると、この世界の地球にはカンティネント大陸という大陸があり、そこには三国があるという。

 棄糸(すていと)、ネーション、カントリー……

 そしてここはネーション国らしい。

 更に、この世界にはシッディと呼ばれる、こちらの世界でいう異能力があり、ネーションとカントリーの国民はシッディが広く浸透して生活に大きく役立てられているのだそうだ。


 うん、間違いない!俺は異世界に転生したんだ!


「シッディを手に入れるにはどうしたらいいんだ?」


「ちょうどネーションとカントリーの間にある教会で申請すれば貰えますよ

ここからそんなに遠くないですし、案内しましょうか?」


「俺、才能とかないけど……」


「大丈夫です、誰でも貰うことが出来ます

それにシッディを貰ったばかりの人は、ネーションかカントリーのどちらかの学園に無料で通えるんです

寮も借りれますし、空さんにはここネーション国の学園に通うことをお勧めします!」


 学園生活……転生モノらしくなってきた!

 シッディとやらで俺は、第二の人生を歩んで見せる!!


「あ、そうだ」


 何かを思い出したのかマヤは、右手のグーで左手のひらをポンと叩き、言った。


「案内する前に、男性でも似合うような服をお貸ししますね」


 あまりの状況に忘れていたが、俺の服はブラックホールの彼方へと消えてしまっていたのだ。

 俺のおたんこなすがマヤに見られたのかと思うと、恥ずかしいやら興奮するやらで複雑な気持ちであった……。

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