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これは、一人ぼっちの男の物語

「ジャンヌ様、お話して?」


 真夜中、眠れない小さな女の子が、子守唄がわりにワシの話を求めてきた。


 ある一人の男がワシを救ってから、ワシはどう生きていくべきか悩んでいた。

 シッディを与える力を失ったワシに、残りの命で何が出来るのか考えていたんじゃ。


 そんなときにプラーナと邂逅した。

 プラーナは、過去に親に置いていかれ、大変な思いをした経験があるという。

 そこでワシは、全国の孤児を集め教会を孤児院にし、この世界で最も長寿のワシが知り得る知識を、子供達に授けることを思い付いた。

 せっかくの長生きじゃから、これぐらいはやらんとな。


「お話は……?」


「ん、まあそう急かすな、そうじゃな……

次は"一人ぼっちの男"の物語を語ろうかの」


「一人ぼっち?」


 …………


「こうしてその男は、この世界から去っていった……おしまい」


「何か可哀想だね

でも……私も神様を倒せる人なんて怖いかな……」


「そうじゃな……きっとそれが、知人でもない人の普通の反応じゃろう」


「そっか、その人は一人ぼっちだったから追い出されちゃったんだね……

じゃあ何でその人は、友達がいなかったのかな?」


 何でぼっちだったのか。

 何でぼっちは生まれるのか。

 きっとその問いに答えはあるのじゃろう。

 しかし、……


「ワシには分からん

じゃが、この話をした理由ならある」


「理由?」


「人間誰しも孤独になる瞬間はあって、その時はきっとつらい思いを味わうことになるじゃろ

しかし、常に孤独な人間もいる

そういう人間がおるんじゃから、ワシらも孤独に耐えられると考えることが出来るじゃろ?」


「うん……」


「良いか?嫌なことからは逃げていいんじゃ

しかし、好きなことが、やりたいことが一つでもあるのなら、人生から逃げてはいかん

あの男が何をしたかったのかはワシには分からん

じゃが、ワシは今やりたいことをやれて幸せじゃ」


「……」


「結局、人間の生きる理由はそこにあるんだとワシは思う

だからこそ、それを果たすために、他の人という存在がいて影響を与え会う……

その中で嫌なことがあったとき、ワシの話を思い出して、少しでも生きようと思ってほしい

そう思うんじゃ……」


「……ぐぅ」


 窓から射し込む明るい月光が、女の子の寝顔を映し出す。


「ふふ、寝おったか」


 ワシもそろそろ寝ようかの。

 布団に入り、目を瞑る。




 また明日、やりたいことがやれますように。

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