この木何の木気になる木
木と聞いたアストラルが少し悩み、その後いつもの顔に戻って俺に問う。
「木……
どうやら知らない世界があるのはお互い様のようだね
良ければ説明してくれないか?」
それに了承する。
アストラルも可測基数について教えてくれたし、あの地球に戻ったら数学を使う機会も少なくなるだろうから、どうせならな。
「木は半順序集合(T,≦)で、それぞれのt∈Tに対して{s∈T|s≦t}が整列集合となるものだ
言い換えればどんな要素tを集合Tから取ってきても、それ以下の要素sを集めた集合は整列集合になる、ということだな
集合(T,≦)が整列集合とは、≦が全順序な二項関係で、Tの空でない部分集合が、必ず全順序関係≦に関して最小元を持つこと
全順序とは、半順序≦が更に、考えてる集合の任意の二要素に対して使えるという性質(比較可能)を持ってる時に言う
特に整列集合は木になってるな」
「……」
「勿論これだけじゃない、木には高さや根や枝がある
tにおける木の高さht(t,T)は{s∈T|s≦t}の順序型のこと
木T自身の高さは各t∈Tにおける高さより大きい最小の順序数だ
根は高さ0であるようなt∈Tのことを言う
木の枝は木の鎖(chain)だな
木の鎖は木の部分集合で、半順序かつ任意の二要素が比較可能なもの、つまるところ別名全順序集合だが、鎖は全順序関係のことも全順序集合のことも表すことが多い
木の枝は全順序集合の方を言っている」
「そんなものがあったのか……」
「まだ一つある
順序数aに対して木のa番目のレベルの定義は、高さaであるような木の要素を全て集めた集合のことだな」
これで木の性質は十分なだけ揃った。
「定義だけでも大変だね」
「これらの定義を踏まえて、アロンシャイン木というものを考えられる
アロンシャイン木は、全体の高さが非可算で、レベルの濃度と枝の高さが高々可算であるような木のことを言う
これを一般化して出来るκ-アロンシャイン木は、全体の高さκで、レベルの濃度と枝の高さがκ未満であるような木のこと」
我ながら長々と説明していると感じるが、メタれた理由なので説明しなきゃいけないのが辛い。
可測基数はその点説明が簡単だな……。
「アロンシャイン木、か……」