ポセットの中がお気に入りねフィルター
可測基数は、弱コンパクト基数より無矛盾性が強いとは学んだものの正直よく分からなかった。
だが、アストラルが到達不能基数以上で来ることは何となく分かっていた。
だから勝てたんだ。
「君は可測基数を知らないのか?
κが可測基数であることの定義は、κ上の非単項なκ-完備超フィルターが存在することだよ」
「え?」
何言ってるか分からん。
フィルター……?
「半順序集合(P,≦)の空でない部分集合Fが、
任意のx,y∈Fに対して、あるz∈Fが存在して、z≦xかつz≦yが成り立つことと、
任意のx∈Fに対して、x≦yとなるようなy∈Pがy∈Fでもあることを満たす時、
Fをフィルターと呼ぶんだよ」
半順序集合は知っている。
集合Pの元で定義された二項関係≦(結果的に不等号がぴったりなので不等号を使っているが、まだこの二項関係がよく知られる不等号かは分からない。例えば集合で考えれば⊆も以下を満たす。)が
反射律(任意のa∈Pに対しa≦a)、
推移律(任意のa,b,c∈Pに対しa≦bかつb≦cならばa≦c)、
反対称律(任意のa,b∈Pに対しa≦bかつb≦aならばa=b)
を満たす時、≦を半順序(半順序関係)と呼び、集合Pと二項関係≦の組み合わせ(P,≦)を半順序集合(partially ordered set、略してposet)と言うんだったな。
「このフィルターがこれ以上細かくならない時に超フィルターと言い、Pの元を一個含む最も小さいフィルターを単項フィルターと言う
κ-完備は、κ個未満の交わりで閉じているということ
交わりっていうのは具体的には束論をやらなきゃいけないけど、簡単に言えば濃度κ未満でf⊂Fとなるfを集めても結局フィルターF内に収まるということだよ」
なるほど、分かったような分からないような。
「まだまだ俺の知らない数学の世界があるってことが分かったよ、アストラル」
「なら、何で俺は負けた……?
一瞬だけ、木が見えた気がしたけど……」
「たった少しのきっかけだよ
お前は無矛盾性の強い巨大基数を目指し、俺もそうなりそうだった
でも、アナンダ先生がたまたまヒントをくれたんだ」
「ヒント……?」
「木、だ」