本当の気持ちは秘密だよ
夜も近い黄昏時、部屋にノックが響き渡る。
「はい」
戸を開けると、そこにはアナンダ先生が立っていた。
「空君……事情は聞いたわ
あたし達も力になる、だから維持張ってないで助けを求めて?」
神にまで宣言したことを今更引っ込める気もない。
「……お断りします」
「それだけじゃ分からないわ
空君の気持ちを聞かせてちょうだい」
俺の気持ち……。
俺は、どうしてこの世界を捨てるのか。
地球に帰りたいというのもあるし、ぼっちのままでいたいっていうのもある。
皆を巻き込みたくないっていうのもあるだろう。
それと、この世界が怖いんだ。
地球ではあんなに俺に冷たかった世界が、この異世界は暖かかった。
少ないながらも俺を頼る人や信じる人がいた。
そんな奴等が、今の大衆のように、俺を見放すかもしれない……それが怖い。
だから人間関係から逃げたいんだ、きっと。
トントン。
俺が立つ間もなく、ノックの直後に戸が開き、パンが入ってきた。
「ダメだよ空くん!自己犠牲なんて!」
自己犠牲なんて大層なものじゃない。
自分のため、だ。
黙る俺に、その辺に座ったパンが続ける。
「戸卒さんもね、第二戦争の時に利用されて、自分のせいだと酷く落ち込んだんだって
でも武蔵さんが救い出してくれて、助けてもらうことを知ったって……
空くんは十分人を助けたよ?だから今度は、私達が空くんを助ける番
皆の誤解晴らしてみせるから!」
……そうやって、優しい素振りを見せられるのが、一番怖いんだよ。
パンや、ジャンヌ様、マヤ……皆が俺を絶対裏切らないということを証明することは出来ない。
いや、三世が俺を取り込む可能世界を引き出そうとしたように、そんな可能世界もあるかもしれない。
我ながら強い自己保身かもしれないが、自分を守らなければぼっちはやってられないだろう。
結局のところ、俺にとって、友達は重荷にしかなり得ないんだ……。
「すみません、パンさん
元の宇宙に帰ろうかなと思ってたので丁度良かったんですよ
ほら、あまり一緒にいるとあなた達まで疑われてしまいますよ」
手で追い出すジェスチャーを行うと、汲み取ったのか二人は立ち上がり出口へと向かう。
「空君……」
「空くんは私のライバルなんだから!忘れないでね!」
そう言い残し、二人は去っていった。