大企業の社長
受付に自分が空であることを告げると、すぐに社長室へと通された。
マヤをさらう時点でまともな人間ではないが、一体、どんな奴が待ち受けているのか……。
「ようこそ、空君」
ドアを開けると、光が目に入る。
俺の目の前には机と椅子、その奥の全体窓ガラスの壁、そしてそこから外を眺める白髪の男。
白髪の男は、背中越しにそう言った。
「あなたは……」
白髪の男がこちらを振り替える。
その顔は、優しそうだが、どこか胡散臭そうな印象がある。
「私は三世、この会社の代表取締役です」
ニートだった俺に代表取締役とかはよく分からない。
だが、一番偉いというのは分かった。
「何故マヤをさらったんですか?」
「君の知り合いでさらえそうなのがあの子しかいなかったんですよ……
率直に言いましょう、私の会社に入ってくれませんか?」
俺が会社にスカウトされた……?
だが、こいつはマヤをさらったんだ。
何か裏がある。
「何でですか?」
「君に断る権利はないですよ、よってその問いに答える義務もありません
とりあえず放送室へ移りましょうか」
そう言うと三世はゆっくりと歩き、ドアの方へと向かう。
「ああ、ちなみに私に何か危害を加えれば、あの子は無事じゃすまないことを言っておきましょう……」
三世を瞬殺してもマヤに危害が及ぶということか……。
連絡が来るまで大人しくしておこう。
三世の後を付いていき、テレビ番組を撮るようなカメラ等が置いてある放送室へと入る。
機材は自動で動いてるようだった。