いざ鎌倉
驚くべきことに、棄糸は日本の東京とそっくりだった。
周りは高層ビルが立ち並び、街頭テレビもあって、技術力の高さが伺える。
第二戦争後にシッディを封印してから、地球のように技術力を研ぎ澄ませていったのだろう。
すぐそこに建つ、一際大きなビルが中央ビルに違いない。
だが、今乗り込めばマヤに何かあるかもしれない。
早すぎず遅すぎずのタイミングで行かないと。
適当に周囲を歩いていると、懐かしい感覚に陥った。
スーツ姿の大人、学生服を来た子供、俺が日本で見てきた姿と似ている。
ヨーニは日本を、ぼっちが多いから気になっていたと言っていた。
だからきっと、この国が日本を踏襲するように世界を作ったのだろう……。
……
少し時間が経ち、プラーナがやって来た。
「話は聞いたよ、空
僕もお母さんに会わせてくれた礼があるし、誘拐を見過ごす気もない
協力させてもらうよ」
「ありがとう、プラーナ
プラーナは量子を操作して通信していたらしいけど、それに沿う携帯端末はある?」
「なら量子コンピューターを小型化した奴があるからそれを使おう
あの店に売ってるのが見えるだろ?」
……どうも技術力は地球より高いらしい。
ヨーニが色々この世界に情報を持ち込んだから発展も早いのだろうか。
「分かった、シッディで出すか」
その小型量子コンピューター――見た目がそれっぽいのでスマホと名付ける――を0個から1個に増やすと、手元にスマホが現れた。
しかし、電話やネットに繋ぐことは出来ない。
技術力はヨーニが持ち込んだものがあるが、通信インフラ整備はそれに追い付いてないらしい。
少し通信テストをして、プラーナは帰っていった。
プラーナは量子を操作してスマホに任意のメッセージを残せるし、逆にこちらがメッセージを書けばその量子の変化を読み取ってくれる。
プラーナのシッディ便利過ぎるわ……。
そのちょっと後、今戸卒さんを探しているという情報が入ったので、俺は中央ビルへ乗り込むことにした。
戸卒さんの準備が整えばバイブレーションが鳴るようになっている。
そのときこそマヤを救うチャンスだ。