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テセウスの船

「……分かった、俺一人で行こう」


「今の話聞いてなかったのー?空くん!」


「いや……相手はガルバの力が効かない謎のシッダだ

戦力になる可能性がある俺とパンは万が一のために分散した方が良いし、二人はここに残ってくれ」


「師匠がそう言うなら……」


「その代わり、二人には掛け合って欲しい人達がいる」


「作戦があるんじゃな?」


「作戦って言うほどじゃない

ただ安全策を取りたいから」


 そう、最悪のケースを避けるための準備。


「まずはプラーナだ

プラーナは量子を操作するシッディがある

それで通信したい」


「確かにプラーナには通信役をさせていたが……

そこまで知ってるとは流石だ師匠!」


 この世界では、プラーナとの関わりは母親に会わせるときくらいだっけ。

 まあ恩は売ってあるし協力してくれるだろ。


「で、もう一人は名前が分からないんだが……

図書館の哲学書の辺りにたまに現れる男を知ってるか?」


「もしや、戸卒(とそつ)のことか?」


 ジャンヌ様が口を挟む。

 シッディを与えていた立場だけあって、シッダのことは良く知っている。


「その人だ

あの時は意味深なことを言ってたけど、多分戸卒さんは怪我をしないシッディを持っている」


 俺がお世話になった人で知らないのは、多分そのシッダしかいないはず。


「その通りじゃ

正確には質的か数的に同じものを選びとるシッディじゃな」


 質的?数的??と思った俺にジャンヌ様が解説し始める。


「テセウスの船というのを知っておるか?

船は当然使えば壊れていき、修理してまた使うじゃろ

そうやって修理していった船は、作った当初の船と同じものだと言えるのか、という問題じゃな」


「知らないですー」「私もだ」


 パンとガルバは知らないようだが、俺は聞いたことがある。

 恐らくヨーニがこの世界の本にテセウスの船について書いたのだろう。

 この世界は俺のいた地球を元に作っただけだが、ジャンヌ様の持つ本にはヨーニが書いたものがあるし、地球の専門用語をジャンヌ様が知っててもおかしくない。


「例えば同じ成分の泥団子二つは質的に同じだが、数的には、二つあるので同じではない

他方泥団子を色で塗った後と前で、数的には同じだが、色を塗ったので質的には同じではない

同じとは何か、を解決しようとしたのが質的と数的という概念なんじゃよ

要するに、人間は怪我をしても再生するじゃろ

再生する前と後、更にその間まで同じものと見なし、都合良く怪我をしなかったり怪我なしに気絶したことにする

これが戸卒の本当のシッディじゃ」

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