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魔王の装備一式を洗いたい  作者: 篝火ノキア
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祭りだわっしょい

「てぇへんだ!てぇへんだ!魔王の呪いにかかってたみたいだぞ!」


城下町に城から御触れが出た。その内容は驚愕の新事実が含まれていた。勇者召喚に成功したのはめでたいことだ。魔王に対抗する最後の切り札。勇者召喚は世界中の長年の悲願なのだ。驚愕の事実とはもうひとつの件、勇者召喚に成功したことで判明したことがある。そう、それは



人や物は汚れるということだ。わからないだろうか?わかりやすく例えば、皿に食べ物を入れて食べるとしよう。食べ終わった皿はどうする?そう、次の日そのまま食べ物を入れて食べるよな?その繰り返し使ってきた。するとどうだろう。最初の食べ物の残りカスが腐りそれを食べるとなんとお腹が痛くなる原因になるというのだ!なんと恐ろしい魔王の呪い。そして服だ。3、4日同じ服を着て湿ってきたら干し、また3、4日着るということを繰り返し、汚れてきたら川でじゃぶじゃぶと濡らして干す。ということは常識だよな?しかしだ!それでは汚れや臭いは取れないらしいみたいだ!石鹸というもので水かぬるま湯で叩き洗い、しっかりと石鹸を落とすためにすすぎ絞り、日の当たる場所で乾かさなければ汚れや臭いは蓄積し、それがういるすという魔王の呪いとなって体調不良や病等を引き起こすというのだ!


なんて巧妙な魔王の罠なんだ。



「こうしゃいられねぇ!みんな!仕事も酒も後回しだ!掃除洗濯して魔王の呪いを解くぞ!!」



男も女も関係ない。飲んだくれも冒険者も関係ない、全員一丸となって大掃除だ!!なぜなら御触れはこう続いていた。


魔王の呪いを解くために王は率先して雑巾を手に取り城の中を拭いて回ったと言う。女王と姫もドレスを脱ぎ腕をまくり服やシーツを洗濯したという。王子だけは魔王の呪いが強かったのか、勇者に念入りにお祓いをしたらしい。それはもう念入りに。


城下町の男性は掃除しながら呟く。


「しかしまぁ、こんな呪いがあるとは気付きもしなかったしこのまま続けばみんな死んでたかも。」


「まったくだ。認めたくはないけどこんな呪いを思い付く魔王はかしこやな。」


「あぁ、かしこやで。」


「しかしだ!召喚されて一目で見抜き呪いを解いた勇者様のほうがかしこではないだろうか!」


「そうだ!勇者様はかしこだ!魔王なんかよりももっともっとかしこやで!」


「勇者様はかしこだ!」


「かしこっ!かしこっ!かしこっ!かしこっ!」


勇者かしこの誕生である。魔王の呪いを解いた勇者かしこの伝説は始まったばかりだ。



────────────────────


「あかりだよっ!」



あかりはツッコミを入れた。誰も聞いてはくれないが。いつの間にかあかりの名前は勇者かしこになっていた。なんでなの?なんで名前かしこになってるの?


あかりは城っぽい建物同様城下町も汚れていると聞いて町まで降りてきた。噂通り町のあちこちにゴミが埋もれ川はヘドロで黒く汚れている。どこから手を付けようかと悩んでいたら町民みずから掃除を始めた。それに同行し陰ながらアドバイスを出し、人知れず洗剤を渡しながら指示を出す。みんな掃除やる気充分!そうよね、掃除楽しいよね!


けれどやっぱり気になることが。掃除せずに汚れていることを魔王さん?のせいにするのは魔王さんが可哀想だと思うの。それと私の名前はかしこじゃないよ?あかりだよ?



「納得いかないなー。」


あかりは気付かないうちに独り言を呟く。するとそれを聞いて振り返った町人の一人が震え出す。


その町人は震えながらあかりに指を指しながらこう叫んだ。


「ゆ、勇者様だー!勇者かしこ様だー!」



なに?勇者様?かしこ様?かしこ様だー!と町人達は騒ぎ出す。


かしこっかしこっかしこ様!かしこっかしこっかしこ様!


わっしょいわっしょいわっしょいしょいっ!


町人達はかしこコールを続け、あかりを胴上げする。掃除がいつの間にか祭りと化していた。そうだ!今日から毎年この日はかしこ祭りだ!


わっしょいわっしょいわっしょいしょいっ!


「やっぱり納得いかないなー。」



自己紹介のタイミングって大事

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