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魔王の装備一式を洗いたい  作者: 篝火ノキア
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就活と引っ越しとお隣さん

「うんしょっうんしょっうんしょっ。」


あかりは頑丈だけが売りの古ぼけた遺跡みたいな石造りの家に引っ越して来た。辺鄙なところだが三軒屋のうち右側の一番大きな屋敷にはちょっと見た目は気持ち悪いけど優しそうな青年が住んでたのでちょっと安心したあかり。


建物自体は古くカビや苔など生い茂っているが朽ちてはおらず、手入れをすれば綺麗になると確信を持ったあかりは俄然やる気を出していた。本当は一番大きな屋敷をクリーニングの工場にしたかったのだが先客がいたのだから仕方ない。ならばまずは町のクリーニング屋さんを目指して染み抜き専門店をこの石造りの家で始めようと考えている。そう、これは引っ越し兼就活なのだ!


力仕事とお手製デッキブラシで床をこするのはお隣さんのマオさんが担当だ。


一時間前…



「ところでお隣さん、あなたのお名前は何て言うの?」


引っ越しパスタを配りに来たあかりはお隣さんに名前を聞く。しかし、お隣さんは今一番見たくて一番会いたくなかった意中の人が目の前に現れて混乱状態にステータス異常。お名前?名前?なんだっけ?なんだ?忘れた。とりあえず今答えなきゃ。えっとえっと最近呼ばれてるのは


「えっと、ま、魔王といいます。」



はいいいいっ?言っちゃた言っちゃった答えちゃった自己申告しちゃいましたぞー!!ずっと隠れてたのに聞かれてすぐ白状させるとは想像以上の勇者ぶり!これほど優秀な勇者がこの世にいたのか?召喚されて数日で魔王の棲みかを見つけ出し王手をかけるとは。勇者であり賢者とも言われる勇賢者のことだからもはや逃げる手立ても失ってるのだろう。もはやこれまでか。


魔王は勇賢者早坂かしこあかりを目の前にして自分の命が風前の灯火だと理解した。抗うのも手だがあかりの笑顔の前には抵抗する気も起きない。愛する者の手で終止符を打つのも一興か。

魔王は深い溜め息を吐いた。後悔はある。未練もある。しかし自分は魔王、相手は勇者。この運命は逃れられない。


「よく来た勇賢者あかりよ、そなたの言いたいことはわかっておる。協力しよう全力で。だから聞いて欲しい我の話を。」


そう、勇賢者の言い分はわかる。呪いの解き方だろう。しかし俺にもこの世界中の人間が堕落する呪いは解けない。そもそもなんというかこの呪いはその場のノリというか勢いというか雰囲気?で闇魔法に力を込めたらうっかり発動してしまっただけなのだから。不可抗力なのだ。呪文すら唱えてないから同じ呪いを発動させるのも無理だしそんなたまたま発動した呪いを解く方法なんて簡単には見付からない。後は魔王のこの俺が死ねば解決する。しかし俺にだって言い分はあるぞ!突然こんなファンタジーな世界に連れてこられてモンスターと戦え勇者と言われ剣と魔法を勇者教育と言う名のデッド・オア・アライブートキャンプを受けさせられ当時の魔王を討伐すれば可愛い日本人みたいな女の子を紹介してくれると約束したのに千年放置プレイ。俺だけが悪いんじゃない!情状酌量の余地があるはずだ!


「うわぁ!ゲンさん話を回すの早いなー、わがまま言っちゃってごめんなさい。でも助かります!ありがとうマオさん!」


満面の笑顔であかりは魔王の両手を握りしめほぼ密着した状態で魔王の目を見つめお礼を告げた。


魔王は勇賢者に魅了と混乱のステータス異常攻撃を受けた。


うわめっちゃ天使めっちゃ手温かい柔らかい!!ってバレてない??誰だよゲンさんって?なに?何の話を回したの?ゲンさーん!


魔王、いやマオはあかりと話を合わせるために混乱状態で思考フル回転。とりあえずえっとえっと、ゲンさんと言えばー


「お、おう。ゲンさんな。俺も贔屓にしてるぜ。」


あかりは続ける。


「あ!マオさんも好きなんですか??私も大好きなんです!」


マオは言いたい、俺はあかりが大好きだと。


「あ、ああ良い腕してるよな。今度この建物を見て貰おうかと思ってるんだよ。」


そう、ゲンさんと言えば大工。


するとあかりは不思議そうに首をかしげ、


「え?ゲンさんそういうことも出来るんですか?」



ちがったー!ゲンさん大工じゃなかったー!待てよ?あかりは大好き?なんだ?食べ物屋か?なんだか嫌な予感がしてきた。


「あかりはゲンさんとこの何が好き?」


「なんだかんだでやっぱりカルビかなー!」


ほちょちょ!ゲンさんお肉屋ー!わて生粋のベジタリアンー!お肉とか超無理っすー。


「マオさんはどこの部位が好きですか?」


来るよねーその質問。しかも部位とかなにそれー?肉自体食べないのに。


「と、鶏のササミかな?」



どうだー!ササミならなんとか喉通るぞー!この展開無事に回避だろこれー。


「そうなんだ!私も大会前とかササミと豆で身体を仕上げて望みますよ。そっかーマオさんもかー、何だか気が合いそうですね!」


「そうだね、合いそうだね!」


合いそうだねじゃ、なーい!俺のバカーなんだよ身体作りとか俺はガリガリなだけだよー細マッチョじゃないよー。益々泥沼だよーけどあかりと気が合いそうですねとか言われたよーっていうかいつの間にか呼び捨てで呼んでるよ俺の天才!



「じゃ、早速引っ越しの手伝いお願いしますね!じゃあ力仕事よろしくお願いしまーす。」


あかりは細マッチョマオに力仕事を主にお願いして素敵な笑顔で引っ越し先の建物を掃除しに行った。一人残されたマオは心の中で叫ぶ。


「俺のバカー!!!」

この魔王は状態異常攻撃良く効きます。

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