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魔王の装備一式を洗いたい  作者: 篝火ノキア
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プロローグと遭遇

異世界召喚ものです。極力明るいタッチで書いていきます。暴力や残酷なシーンが苦手な人も読めるように努めます。それが好きな人には物足りないかもしれません。気軽にお読みください。久しぶりに小説を書くので拙いとは思いますがよろしくお願いします。

「冗談じゃないわ。」


5月、GW中の悲劇であった。連休中のあいにくの雨、小降りではあったが自転車に乗る少女には関係のない事であった。なぜなら彼女の向かう先は。


高校を卒業後いくつかの大学推薦の話を受けたが全て断り就職した。その就職した会社の業態は株式会社クリーニングの藤井。中小企業で給与も低い。勤務時間も定時はあってないようなもの。休日出勤も強制ではないものの自主的に出勤し休み明けにスムーズにパートさん達に仕上げに入ってもらうためにわざわざお客様から預かった服を洗いに会社に向かう少女。


はたから見たら不遇の立場。だがしかし彼女の表情はまるで遊園地に向かう子供のようでもあった。


なぜなら


彼女は極度の潔癖症に加え汚れた服を洗濯しシミを落とすのが趣味という変態…もとい特殊な性癖をもつ18歳の高校卒業したての新入社員早坂あかり。



連休中も営業している店舗が集めたお客様の服を洗うため楽しげに自転車に乗るあかり。もうすぐ会社に着く、この交差点を越えたらすぐ。


そこで悲劇は起きた。連休で普段運転しない家族サービス中の父親。慣れない道をナビを見ながら運転をしていた運転手が悪いのか。横断歩道青信号になった瞬間に周りを確認せずに自転車を駆け出したあかりが悪いのか。

不幸にも無慈悲にも車はあかりを引きとばした。



自転車はもう二度と走らないことを一目で思わせるほどにひしゃげていた。あかりははねられた衝撃で道路の外までとばされており草むらに赤い血を染み込ませていた。


冗談じゃないわ…こんな、こんな感じで死にたくない


クリーニングの染み抜き大会で優勝したい、他にもまだまだやりたいことがたくさんある


薄れ行く意識の中でやり残したことばかりが走馬灯のように駆け巡る。


恋だってしてみたい。


完全に意識が遠退きあかりは動かなくなった。


ただ雨だけが降り続いていた。


しかしなぜかあかりを引いた運転手や駆けつけた警察官はあかりを見つけることが出来なかった。


会社に就職して3ヶ月目の出来事であった。



─────────



「よくきた勇者よ、魔王を倒しこの世界を救ってくれたまえ!」



あかりの弟がしていたゲームの音声かな?と思いながらあかりは目を覚ました。だがしかしまだ夢を見ていたようだ。きらびやかな大広間に鉄の鎧を来た西洋風の騎士達。麻だろうか絹だろうか

純白のスーツ?にサーベルを腰に差した貴族風の男性。さらに奥には王様。そう、THE王様。王冠に金をふんだんにこれでもかと振りかけた衣装の恰幅のよい初老の男性。彼が私を見て勇者と言う。ドッキリにしてもまだやりようがある。あかりは苦笑いしか出来なかった。


ふと記憶を辿る。疑問が生まれた。最後の記憶は会社に向かう途中に車に轢かれそのまま気を失った。そして目を覚ますとこの状況。自分の身体をチェックしてみる。リクルート姿に仕事道具が入ったリュック。痛みもなければアザすらない。どこからが夢でどこからが現実で今は夢か現実か判断出来なくて混乱し頭の中が真っ白に。どうする?どうしよう。何が出来る?何をしよう。とりあえず笑って愛想をふる?

あかりは戸惑いながらも立ち上がり作り笑顔を振り撒く。すると異臭に気付く。兵士はともかく王様ですら臭い!よく見ると豪華な宝石類の下には黄ばみ黒い汚れのベッタリとした衣装。王妃や姫ですら臭い。というよりは香水臭い。兵士など服や鎧というより人間そのものが匂う。

あかりの第一声は怒気を含んだもので未来永劫語り継がれるものとなった。

「全員今すぐ服を脱ぎなさい!!!」

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