とある召術士の冒険2
設定が一部本編よりも詳しいですが、エデンはあまり攻略ウィキなどを見ない……という設定です(;´・ω・)。
「ああ、わかった。真ん中の噴水にできるだけ早く集合だな。」
『お、遅れないようにしてくださいね』
「分かってるって。それよりも本当に風邪とか引いてないのか?体調には気をつけろよ」
『ははははははい。わわわわ分かりました』
「じゃあな」
『また今度!!』
風邪でも引いているのか、やたらと噛んだ美鈴からの説明を(電話越しで)受けてから数日後、俺は自分の部屋に置いてあるベットに横たわって、自分のアバターを作っていた。
「名前は……リュウっと。種族は……ヒューマンがいいかな」
名前と種族をあらかじめ決めていたものに設定する。リュウなんてありきたりな名前はほかのプレイヤーがすでに選んでいるかと思ったが、運がよかったのかそのまま通過できた。
目の前に、ステータスとスキルを設定するためのウィンドウが出現する。
先にスキルについて決めてしまおうと思い、スキルのウィンドウをタッチする。
目の前に広がった膨大な量のスキルに若干の眩暈を覚えながら、あらかじめ決めておいたスキルを探す。
「えーっと、召術士、召術士……。これだ!」
召術士:モンスターを使役するためのスキル。モンスターを召喚している間は常時MPを消費する。
専用スキル:召術士用MP自動回復
召術士は、サモナーとは違って召喚している間はずっとMPを消費するうえに、いくつかの召喚能力上昇系スキルをとる必要があるので不遇職にされてきた過去を持つ。
(ちなみにサモナーは召喚した瞬間のみMPを消費する)
しかし、俺はやり方しだいでこのスキルはかなり強くなると考えていた。
「ん?召術士用MP自動回復ってなんだ……?」
召術士用MP自動回復:召術士のみがセットできるスキル。召術士がモンスターの召喚によって消費しているMP分を回復させ、さらにその内のいくらかのMPを追加で回復する。
「かなり強くないか?」
これがあれば召術士のMPの消費を抑えるどころか回復させ続けることができる。かなり便利なスキルだ。
しかし、こんなスキルはどのサイトにも乗っていなかった。
もしかしてこれは正式キャンペーンで追加されたスキルなのか?などと考えながら、スキルを取っていく。
召喚可能モンスターの上限アップ:一度の召喚するモンスターの数の上限を上げる。
召喚モンスター専用エンチャント:自分の召喚しているモンスターに対して、エンチャントスキルの使用ができる。
さらに、自分の召喚しているモンスターにダメージを与えない遠距離集中攻撃魔法の多い風系統魔法と、そのために必要な風系魔力を入れる。
本当は、ここに杖術などを入れていざというときの接近戦用も作っておこうかと考えていたが、召術士用MP自動回復によって弾かれた。
風系魔力:風系統の魔法の使用が可能になる。
風系統魔法:風に関する魔法を使用できるようになる。
プレイヤーが持っているスキルスロットは六個なので、これでスキルの選択は完了した。
ちなみに、ステータスはこんな感じで反映される。
STR=筋力=攻撃力、武器等を使った防御力等に反映される。
VIT=生命力=HP・耐久等に反映される。
DEX=器用さ=MP消費量・クリティカル・生産成功率等に反映される。
AGI=俊敏性=武器を振り下ろす早さ、移動速度等に反映される。
INT=知力=MP・魔法能力等に反映される
EXP=経験値
後はスキルポイントを振るだけだが、接近戦をやる気はまったく無いので召喚と魔法のために有効なDEXとINTの初期ポイントのうち五ずつを振って、残りはゲームの中で決めようと残しておいた。
リュウ ヒューマン Lv1
HP:70
MP:30
STR:10
VIT:10
DEX:15
AGI:10
INT:15
残りポイント:5
スキル1:召術士 熟練度0/500
スキル2:召術士用MP自動回復 熟練度0/500
スキル3:召喚可能モンスターの上限アップ 熟練度0/500
スキル4:召喚モンスター専用エンチャント 熟練度0/500
スキル5:風系魔力 熟練度0/500
スキル6:風系統魔法 熟練度0/500
この後はアバターの設定のみだったが、髪や肌といったものの色しか設定できなかったので、普通に髪と瞳を真っ黒にして終わらせた。
夏休みに突入した初日、美鈴の電話で叩き起こされた俺は――
「あと三分!トイレにも行ったし宿題も済ませた、腹もいっぱい、水も飲んだ。準備OK!!」
――【名も無き世界】開始までのカウントダウンをしていた。
「後二分!!始まったら美鈴と合流するために町の中心の噴水へと走る!」
事前の準備をすべて済ませた俺は、いつに無くハイテンションだった。
なぜか今まで過ごした現実世界の思い出が頭の中を駆け巡ったが、それでも俺は一秒たりとも遅れずにログインした。
「ゲームスタート。【名も無き世界】へとログイン」
こうして、俺は【名も無き世界】へと飛び込んだ。
一瞬の浮遊感の後、俺は中世のヨーロッパのような場所にいた。ここが【始まりの町】なんだろう。
すぐにマップを開いて中央の噴水の場所を確認する。
「現在地がここだから……よし、すぐに着くな」
現在地と待ち合わせ場所とがほとんどはなれていないことを確認した俺は、マップを閉じようとしたときにメールが送られてきていることに気がついた。
「差出人は……運営になってるな。内容は何なんだ?」
噴水に向かって歩きながら、運営から送られてきたメールを読む。
差出人:運営
あなたは【名も無き世界】にログインした最初の召術士です。
なので、プレゼントとしてモンスターを一体ランダムでプレゼントします。
この後も引き続き【名も無き世界】をお楽しみください。
なるほど。俺が一番最初に召術士としてログインしたから、モンスターをプレゼントされたのか。
やっぱりもともとの召術士の割合がかなり低かったのか。などと思いながら、召術士の枠を確認する。
召術士:モンスターを使役するためのスキル。モンスターを召喚している間は常時MPを消費する。
召喚待機状態のモンスター:
NEW エレメントゴーレム:Lv1 使用枠:三 『超級モンスター』
初期モンスター:Lv1 ゴーレム 使用枠:一 『通常級モンスター』
Lv1 ウルフ 使用枠:一 『通常級モンスター』
Lv1 ウィプス 使用枠:一 『通常級モンスター』
一番最初のエレメントゴーレムが運営からのプレゼントなんだろう。
しかし、俺がこれを見たとき、目が点になった。
この世界のモンスターは下から
『通常級モンスター』<『上位級モンスター』<『危険級モンスター』<『超級モンスター』<『災禍級モンスター』<『伝説級モンスター』<『世界終焉級モンスター』
のように振り分けられている。最初期のフィールドでは、ボスクラスモンスターのワイルドベアーが『上位級』に辛うじて引っかかっているだけだったはずだ。
「運営、いくらランダムとはいえ、ある程度の規制くらいはしろよ……」
ちなみに俺のモンスターを同時召喚できるのは『召喚可能モンスターの上限アップ』のスキルのおかげで四枠になっている。
モンスターのランクなどで召喚枠は増える。
エレメントゴーレムがいい例だろう。
スキルの熟練度があがっていけばもっと増えるのだろうが、今はこのくらいが適正だろう。
「エレメントゴーレムがあるから、ゴーレムはいらないか。なら、攻撃要員としてウルフかな」
モンスターを選択してくださいという欄から、ウルフを選択して、召喚待機枠にセットする。
ゆっくりと歩いている間に、中央の広場の真ん中の噴水にたどり着いていた。
辺りを見回すと、さまざまな種族の色とりどりの髪が見えたりしていて結構面白い。
しかし、肝心の美鈴が見つからない。辺りをきょろきょろと見回している俺に、見知らぬ女性が声をかけてきた。
「おーい。君が……アバターネーム何?」
「あんたこそ誰だ?普通は自分から名乗るだろう」
俺の台詞に気を悪くすることも無く、はっきりと答えてきた。
「あっ、ごめんね。私はネコミミ獣人族のサヤ!」
「俺の名前はリュウ。ヒューマンだ」
サヤの身長は、大体160cmだろう。茶色の髪の毛とネコミミ、尻尾といういかにもな獣人族だ。結構出るところは出ている、活発なスポーツ少女という印象だ。
「もう、隠れなくてもいいのに」
「ん?誰だ?」
サヤが、どうやら彼女の後ろに隠れていたらしい巫女装束の少女を前に出す。
「こここ今回はありがとうございます!美鈴です!」
どうやら体はほとんどリアルとはほとんど変えていないようで、赤と白の巫女装束とあいまって凄まじい魅力を作り出していた。
「……………………………………………………………………………………」
「おーい、どうした?」
はっ!!
「いや、あまりにも美鈴がきれいだったから」
「ふぇ!?ききききれいだなんてそそそそそんな」
「はい、落ちついて落ちついて」
顔を真っ赤にして思いっきり動揺する美鈴。というか、サヤって美鈴の友達か何かか?
「サヤさん、美鈴とはどういう関係なんですか?」
「さんはつけなくてもいーよ!リアルでは、美鈴の親友をやっております!!」
「あ、そういえば、美鈴ってそのままの名前でいいのか?」
「え?だめなんですか?」
「いや、だめってわけじゃないよ。だけど、個人を特定されるようなことはさけたほうがいいよー?」
「そうですか……」
「ん?普通に考えると、自分の名前をアバターにつけるやつはいないと思うはずだから、そこを逆に利用すればいいのか」
「なるほど。本名をわざわざ使うようなやつはいないという先入観を抱かせて、あえて気をそらすということだね!」
役に立つどころか、あっけなくばれる気もするが、美鈴を安心させるためにここはサヤと芝居(?)を打っておく。
「そういうことだ。だから安心してもいいと思うぞ」
「ありがとうございます!あ、話は変わりますけど、二人はどんなスキルを取ったんですか?」
そういえば、俺と美鈴は不遇職のスキル持ちだったな。
「俺は召術士に風魔法だな」
「私は祈祷師に回復魔法です」
「私はアサシンかな。それと気配探知スキル」
「おい、お嬢さんたち。もしかして不遇職プレイヤーなのか?」
俺たちがお互いに自分のスキルを確認しあっていると(やっぱり本命のスキルは全員不遇だった)、中年くらいの男が声をかけてきた。
「すいません、どなたですか?」
「おっと、悪かったな。俺の名前は忠村。武士スキル持ちだ」
身長は大体170cmくらいか。黒い髪に赤いよろいが映えている。
確かに腰に吊っているのは刀だ。しかし、全身の装備が明らかに俺たちのとは違う。
「その装備……βテスターか?」
「おう。そのとおりだ。よくわかったなあ」
その装備が初期だったら、チートの域を超えかねないだろうに。
そう考える俺の隣で、美鈴が質問を投げかけた。
「あの……間違っていたら申し訳ないのですが、確か武士スキルも不遇スキルでしたよね」
少々失礼な質問だったが、忠村はその程度で気を悪くするようなことをせずに、苦笑して答えた。
「ああ。その通りだ。だがなあ、どのスキルも鍛えれば絶対に強くなるんだぜ」
「やっぱりそうでしたか!ありがとうございます!」
「いや、礼なんか別にいいぜ。それより、オレもお嬢さんたちのパーティーに入っていいか?」
不遇職で、戦闘能力に不安のある俺たちにとっては願っても無い提案だったが、感謝よりも警戒心が先に来た。
「確かにありがたいが、なぜベータの時のパーティーと組まないんだ?」
「はぁ……。オレは不遇職だからな、どこのパーティーにも入れてくれなかったんだ」
「それは……お気の毒に」
「なら、歓迎するよ!ようこそ、私たちのパーティーに!!」
先ほどまで空気と化していたサヤの一言で、忠村のパーティー入りが決まった。
「それじゃ、フィールドに出ようか。俺が案内するから、チュートリアルは任せてくれ」
「どこにいくんだ?」
「いや、特には考えてはないが、【始まりの森】に行こうか?」
「【始まりの森】と【ラン草原】って出てくるモンスターのレベルって同じだったよな」
「ああ。たしかベータの時はそうだったな」
「なら、【ラン草原】にしてくれるか?」
「分かった」
「よろしくお願いします」
こうして、俺たちはフィールドへ出て行った。
また明日投稿します。




