魔法少女体勢維持
「それにしてもじゃんけん終わんないですね」
「終わらないな」
あいこが続いて一分くらいたっている。この人数では当然だ、あいこになる度ため息が聞こえてくる。やっぱモデルは嫌か。
「やー、せんせはマッサージ上手ですね。勉強で疲れた肩には、これ以上ないくらいのご褒美だよぅ」恍惚。肩を念入りにマッサージしてやっていると、そんなことを漏らす。
「ふむ。肩を凝らすほど勉強してるのか。えらいもんだな、確かになかなか、辛そうだが」先のポージングだけでこうなったわけでは確かに無さそうだった。
「やー、原稿作業が滞ってましてね、いやはや……」
「勉強じゃないだろそれ」
――原稿。
この時期に原稿って言ったら、いや、まさか……とは思うが、出水のいつもの冗談という事もあるし。
「ち、違います、今のは後出し、後だしでしたわ」
「後出しで負ける人がありますか」
「あ、あんまりですわ……」どうやら、負けたのは石動らしい、御愁傷様。彼女は何でも進んでやるタイプではあるが、こういう事はなるべく、避けたがる傾向にあるらしい。
立場意識ないしは義務感から、演説や啖呵はいっぱしに張れるが、人前で歌ったりやら一発芸を披露するとなると、恥ずかしいものなのだろう、曰く、キャラじゃないと言うことだろうな。
何を隠そう、そういうのは俺だってごめん被るという話だから気持ちはよく解る。
打ち上げで、女装してアニソン踊れ、とか。悔しいことに振り付けが体に染み付いていやがる。
「見苦しい真似はやめようぜ石動、さあお立ち台へ参られい」
「せんせ流石にそれは無いって」
「うぅ、先生までひどいですわ」
――これは、試練だ。君の成長のためには、乗り越えなければならない。いや、まだ全然試練じゃない、ポーズによりけり、総てはそこに左右される。出水の場合はあの程度――大人しく座ってるだけでも苦痛だったのは気の毒な話だ。
「ポーズはどうする石動」
「もうなにも怖くないのポーズ、でいいんじゃないですか」
って、アレかよ。出水も知っていたのか、なんともはや、今日はそのネタで引っ張るつもりなんだろうか。
「な、なんなんですかそれは」
「えっとね、まずこの椅子に足を――」
「い、嫌ですわっそんなはしたないっ」
「文句言わないの。スカート長いし大丈夫でしょ、ねえせんせ」
「ああ、あと椅子に足のせるならせめて上履きはぬいどけよ、誰の椅子か知らないけど」
「あたしのだからだいじょぶっす」そうか、出水が自分の椅子を使っていたわけか。このクラスは――他のクラスは受け持っていないが、多少は贔屓目に見ても比較的優秀であるから、俺が教室に入る前に、準備が終わっていた。
教室の模様替えなどは、預かり知らぬことだ。
彼女らに任せておくのが最善である。
「うう、それで次はどうするんですの」大人しく上履きを脱ぎ、椅子に立て膝をする。座布団がわりに、ぬいぐるみを敷いて。だから、大事なモノじゃねえのかそれ。踏みつけられ、怨めしそうにしている。
顔、歪んでるし。これは似合わない、やれやれだ、十五分このままなのか。少し可哀想だな。ぬいぐるみがではなく石動が。
「腰に手を、こんなかんじで、そうそう、良いねバッチリだよ、超エレガンス」こうして出水と石動が共同作業をしているのは、微笑ましい光景だが、段々と残念な雰囲気になってきた。
「それじゃ始めるか。頑張ってな」
「はい、何とか耐えて見せますわ」その決心は揺らがない。
その後、石動は全く微動だにせず十五分やりきってみせた。似合わないと思ったが、後半かなり勇ましく見えてきた。さすがもうなにも怖くないのポーズだけある。




