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臆病か慎重か

 二週間もたってみると、また天気が荒れるようになった。先週も、その前も二日ほど雨が降ったりもしたが、今週はほとんど、この地域は傘マークという徹底ぶり。梅雨さん、仕事をしすぎじゃあないのかね。まさに、梅雨の最後の足掻きというところか。

 この休日は、部屋での仕事に専念する事にしたが、もうほとんど絵の仕事は完了というところだ。後は我が社の優秀なスタッフたちを信じる以外に俺のすべきことはない。原画だけを仕上げて終わりという訳じゃあなかったので、それらも合わせて俺はお仕事をこなした。時間に余裕があるって素晴らしい。

『お出かけですか秋聞さん。気象情報です。この地域の降水確率は八十%というところです』

「もう、降ってるぜ」

『そうですか』

「そうだな、ちょっと一服しようと思って出てきたんだよ。別に外に行くつもりはないし」

『何をご所望ですか』

「いつもの、コーラとかじゃなくて、そうだな、もっと炭酸のきついのはどれだろう。きつけに良さそうだ、このジンジャーエールとかか」

『はい、そちらは強炭酸となっております、開栓の際はご注意くださいませ』それを聞いた俺は、確かに少し念入りに気をつけたほうが良いと思った。小銭を投入した後、取り出し口に手を突っ込みながら、商品購入のための画面タッチをした。美味い具合にいつも小銭が財布に入っているものだ。

『それはいい考えですね。しっかりキャッチしてください。右側から参ります』提供されたジンジャーエールは、内部で二か所ほど激突した音を響かせながら、俺の手に収まった。ラベルの上部から見える部分が少し、泡立って見えるが、大丈夫だろうか。強炭酸。

「どう思う」

『何とも申せません』

 そこまでは求めちゃ酷だよな、これはもはや自己責任の領域だ。となれば、この場でこいつを今すぐに開けるという選択肢は、無い。

 泡立ってる時点で、間違いなく破裂するだろう。そもそも俺はジンジャーエールが、思いっきり振った麦茶のように泡立っているというのを見た事は、それまでに無かった事から、今目の前の状況の異常さを判断するに至っている。破裂。ペットボトルが、という意味ではない、勿論。だが間違いなくそれに近い状況に見舞われる事は、必死だった。

 大人というのは、そうやって経験上危険を避けることを知っているから、炭酸で中身をひっかぶるようなヘマはまずやらない。――というような話は、幻想にすぎない。発泡酒だって破裂することはある。不可抗力、事故、予想外の出来事。しかし、それは事前に避けることが難しいと判断される突発的な状況である。

 せんせってどっか子供っぽいんですよね、というのは出水の談であるが、自分でもそう言うところはあると思っている。

 いかんせん気になって仕方がない。

 今、このジンジャーエールを飲みたくて買ったというのに、なぜ開栓を待たなければならないのか。

 表向きの理由は明白だ、強炭酸のご多分に漏れず、このまま開栓すれば問題有りという事。しかし。

 ――果てして、そうだろうか。

 これは開けたら破裂する、それが果して。

 やめよう、あまり楽しい結果にはなりそうにない。

 事前に分かっている危険なら、避けるべきだ、子供じゃないんだから好奇心で首を突っ込んではいけない。

 俺はラウンジから庭園へ出た。相変わらず、雨は降り続いている。飲み口を雨どいの河口に向け、キャップを開栓一歩手前まで回し、寸止め。ここで少し深呼吸。のち、一気にひねる。炭酸が抜ける音を確認したのち、一瞬で再びキャップを閉める。この間は一秒にも満たなかったろう。とりあえず、開栓だけ済ませて、暴発寸前のガスだけ先に抜いてしまうという、コーラでよく使う手段だった。

「しなかったな……破裂」

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