灯火scene3
この頃の自分には自信がついていた。若気の至りと言うのも可哀想だ、まだ十二歳の自分を捕まえて。
それ以前の、昔の僕にしたら、とても有り得ないほどの自信だった。スポーツも勉強もできたし、みんなが一目置いてくれるようになったのだから。
最高学年、この遊び盛りの時期に、僕はというと学校では殆ど勉強ばかりしていたけれど、それもやっと報われる、そう思って疑わなかった。中学受験、ここが正念場だ。
結果は言わずもがな。
惨敗だった。
僕自身は、それこそ全ての問題に手応えは有ったし、もちろん解らない問題も気力でカバーしたかに見えた。しかしそれでは駄目だったのだ。現実は非常だ、色々思い当たる節は有ったのだ、ただ、その時の僕には到底理解出来ない、明らかな差が、あったのだろう。
しょせん、少し頭が良いだけのガキが、身の丈に合わない背伸びをしただけに、過ぎなかったということだ。補欠合格にも届かない、それはそれは、惨めな答案だった。惨め。
思えば根拠の無い自信だった。
『彼女と同じ目標を選べる』――それはすなわち、彼女と同じ道を歩む事とイコールでは有り得ない。それだけは、絶対にだ。
道は違えるだろう。今後間違いなく。
僕は――ただ、目的を見つけて、ぬか喜びしていただけなのだ。僕にも出来る、信じるのは勝手だ、結果が着いてこなければ同じ事、身の程を知れということ。
身の程知らずめ。
でくの坊。
何を勘違いしていたのか。僕にとって彼女はどんどん遠い存在になって行くような気がした。しかし、僕はこの時点で、全てを失った。それも確かだ。ここで受験が失敗した以上、次のチャンスは無い。まず、ありえない。この短いスパンで、取りこぼしにすがれるだけの技量を競う術が、もはやこの時点の僕には、残されては居ない。
それでも、ここで諦めては、何も得る物は無い。
僕はひとしきり泣いた。
幼い頃、彼女とよく遊んだ公園で、一人。
苦い土と、切れた唇から噴き出す血の、その錆びた味は、敗北の味ではない。断じて。
中学に上がってからも、不断の努力を持って追い縋らなければ、彼女の足下にも及ばないのだ。
小学生の時の話で、ここまで強情に決心を固めていたかと言えば、少しは脚色もあるけれど、この先に待ち受けている未来がどんなものになるか、まだ僕は想像すらしていなかった。目の前しか見えていなかったから。
取りこぼしにすがる。その根性が有るかどうかが試されている。そのためにしなければならない事は、現実を受け入れる事。どの道、中学には入らなければいけないのだから。




