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ホームサイドガール  作者: 狐塚仰麗(引退)
先生と自販機さんと
20/92

ジャージカプリッチョ

 ジャージの男子がいたら、みんなスポ根みたいなものに見えるんだろうか。そういえば、正統派スポ根みたいなものって近頃はあまりみなくなってしまったような、いや、俺が特に漫画やアニメを見なくなっただけであるから、面白いスポーツものもあるかもしれない。

 まあ、スポーツものの展開としてはバトルものの体裁を取る事が多いために結果なんとも言えない作品になる事も多いようではあるが。

 久しぶりに深夜アニメでも観てみるのも楽しかろう。――こうしてまとまった時間の使い道を考えるのは楽しいものだ。夏に予定がないとはいえ、しかし目の前にはまだ問題が残っている。

 選択科目の美術などは、先の中間テストで問題を作成するようなことはなかったが、来月夏休み直前の期末試験では一応、美術もテストを出さなければいけない、という事になっている。

 さて、どうしたものか。

 俺としては全く適当でもいい、問題としてはそれで問題ない。でもそれじゃいかにも適当に作りましたってのが見え見えになってしまうし、何より面白みがないという事になる。

 当然期末はほかの教科も大変だろうし、ならいっそ、彼女らの負担を減らしてやる意味でも、最低限ポイントを抑えた簡単な問題にする事にしようじゃないか。

 こうしてお情けでテストのグレードを下げたりする事が教師の質の低下というものになるんだったら、おそらくこの國の学校は半数近く消滅することになるだろう。自分の事を棚に上げるようではあるが、美術のテストだから簡単でも文句を言われる筋合いはないはずである。他の教科だったらそれはそれだ。

 シャワールームの脱衣所で、髪を乾かしながら――ドライヤーも最新型が陳列されていた――美術の問題を考えていると、中学校時代の美術の問題を思い出した。

 そうだ、アレで行こう。

 他の先生方が見たら、けしからんとか言うかもしれないが、まるで問題はない。何より提出されてからが楽しみなシロモノなのだ。中学校の美術教師はなかなか適当な人だったが、問題も適当だった。しかしこのテストはなんの気まぐれか特別だった、返却後の教室の喧噪がまた。

 しかし、重いドライヤーだな、女の子が使うには辛いんじゃないかこれ。髪も長かったりするだろうに。何でも新しければ良いと言うものではない。

 部屋に戻るとまず、窓際にかけて置いた饗庭の雨合羽の乾き具合を確認した。朝からたっぷり日を浴びたらしく、いい感じになっている。

 それを畳んで元の包装に包み、窓際にかわりに、着てきたジャージを掛けておいた。自室で過ごしている分にはジャージでも遜色ないだろうとは思うが、さっきの生徒の反応から考えると、堅城に見られてはなんだが馬鹿にされそうな気がしてならない。あの娘は似合うとは言ってくれていたが、お世辞だったんだろうな、きっと。

 ベッドに乗り、壁を叩く。さすがにこの学園内、建物がしっかりしてるだけあって、結構厚い壁だ。思い切って立ち上がり、ドアを蹴破る要領で一発、どんとお見舞いしてみた。

 まあ、反応が返ってくるわけはない。そしてベッドから降りたところで――こんこん、と玄関扉をノックする音が聞こえた。マジか。

「はい、何でしょうか」扉を開けると、そこには堅城が立っていた。

「なんでしょうかじゃありません、君こそ部屋で何をしているのかしら、びっくりしたわよ」

「あ、あー、そうですよね。何となく堅城さんに聞こえるのかなと思って、壁ドンしてみたんです」

「はぁ。君は本当にアホだね。なかなか突飛な事をするようだ」深いため息を漏らしながら、堅城は呆れ返ったように首を振った。

「いや、悪かった。しかし、お前さんはこの時間は授業じゃないんだな」

「うん、君こそ今日は非番じゃない、会議とかの予定もまだでしょう。ひょっとして私に会いにきてくれたのかしら」おっと、妙な冗談を言いなさる。

「いい天気だからぶらりと、散歩に出てきた。思い切って、ジャージを着てな」

「秋聞君にはあんまりジャージ似合わないと思うけど」

「じゃあ俺には何が似合うんですか」

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