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ホームサイドガール  作者: 狐塚仰麗(引退)
梅雨入りディゾルブ
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灯火scene2

 ああ、なんといったらいいか、六年生ほどタイクツな日々も珍しかったと思う。今までは、同じ校舎で彼女と語らう事が出来たと言うのに。彼女が小学校に上がったときも、ここまでタイクツではなかったと思う。

 最高学年の自覚を持て、と先生は言う。これで発破を掛ける事になるのだからおめでたい事だな。周りのクラスメイトたちは幼稚だった。成績が良くても、自分より頭の出来が良くない子どもたちに、いじめられて、抵抗出来ない日々が、僕は何だったのだろうと思う。小学校三年になるまで、そのクダラナイ怨嗟の中に身を置いていた。それは払拭した過去として、水に流した事だ。

 僕はクラブ活動は漫画倶楽部だった。これもなつかしい日々。そもそも、参加のきっかけは彼女からの自立を意図しての事だった。小学生が、愉快な話だと思う。結局無駄に終わって、六年目を煩悶と過ごしているわけで。

 クラブ自体には、五年生のときから参加していた。でも、ただ、ただ、落書きを生産し続けるだけだった。黒歴史。残念かどうか微妙だが、それは僕が使える言い分じゃない。あれは間違いなく落書きの量産、現在の僕にしたって、情けない筆致は変わらないのだ。黒歴史などと言う大義名分でかざれはしない。

 彼女が、通っている私立應仙学園は、男女共学の中高一貫校だ。そしてこの街からだと遠いと言う事も前に述べたけれど、そのために彼女は学生寮に移ってしまった。あらかじめわかっていたことだが、どうにも心苦しかった。いや、こうなることも、解っていた事だ。このまま彼女に会わないまま、他の学校に通って、高校受験、なんて。

 出来るわけが無い。

 また、新たな決心が僕を変化させようとしていたのだろうか。

 まずその旨、先生に伝えた。

 担任の先生からしたら、中学受験なんて考えてる生徒に今まで関わっていない物だったから、僕が彼女と同じ進路を取るために勉強の相談をした時はどうしていいか解らなそうだった。

 僕は大丈夫です、とだけ申し上げて、その場は切り上げた。その後に向かったのは、彼女のクラスを受け持っていた先生の所だった。

 その先生は、彼女が僕の事をいつも気にかけていた事を知っていたし、相談は簡単、かつ円滑に進んだ。

 僕も彼女と同じ進路を選べる――それは思いもかけない回答だった。

 彼女が進路を決定して、そのために勉強している姿を、五年生の時の僕は眺めていた。

 その時には諦めてしまった事だ。

 今の僕で、理解出来る事柄なのだろうか。

 受験して、同じ進路に進む。

 そうしたら、僕は彼女を守る事が出来る存在になれるのではないだろうか。

 目標さえ決まれば、後は必死になるだけだった。周りが幼いだけで、僕が特別頭が良いわけじゃないのだ。その事が解ってからも、勉強は彼女が教えてくれていた。

 それじゃ駄目だ。

 自分でやらなければ。そう思っても結局甘えていた日々だったけれど。

 六年生なんだから、頑張れる。

 どっちにしたって彼女の手を借りる事は出来ない。

 そうして、周りの子たちが最高学年の自覚を持って、子どもらしく校庭を駆け回る休み時間も、放課後も、図書室でお勉強。

 たまに身体を動かす事も有ったけれど、おおむね、勉強漬けの小学六年生だった。

 そして、ついに受験日が来た。

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