表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホームサイドガール  作者: 狐塚仰麗(引退)
梅雨入りディゾルブ
13/92

梅雨入りディゾルブscene6

 時刻は、お茶会に参加してから向こう三時間ほど経過してしまっていた。呆れてものも言えないとはこの事だろう。どうしてあの状況でここまで時間を潰せたというのか。

 最初はまだ仕方ないという気持ちでその場に留まることにしただけで、――いやぁ、ははは、これでは何を言っても言い訳だ。自分に言い訳をするのはよしなさい。その一事に尽きるな。

 最初から言っていた通り、降りしきる雨の止むまで、と考えればむしろ有意義であったじゃないか。何を弁明する理由がある。

 そうだ、雨はあがった。

 あとは家に帰って、処々の仕事を片付ければいい。

 開き直れば良いことだが、そういっても仕事をしないでお茶会に興じたという後ろめたさに、自分なりに理由をつけたかった。それで言い訳に思い悩んだわけだが、そこで急に懐かしい感慨をもたらした。何かと言い訳を用意したがるのもまったく悪い癖であるが。

 懐かしいというのは学生時代の試験期間のそれである。今は昔、テスト期間は早く帰れたし、遊びに終始する格好のタイミングと見ていた。

 後悔はない。それは勉強しなかったことを悔いる状況に無いからだが、――それが恵まれているかどうかではない、人間いつでも勉強はできる。

 日々これ勉強というヤツだ、分かりやすく言えば。逆にもう少し厳格に言うなら、生涯学習というものになる。

「先生ってミステリアス」――大は小を兼ねる、か。何か違う気がするがともかく一部の人々は、俺に対しては友達感覚で話せると言うし、逆にそうでない人々は、愛想笑いもできない寡黙なボクネンジンと見てとる。

 どちらがありがたいか、なかなか厳しい問いになるだろう。

 話しかけてくれるものが多いに越したことはないがそれでも、自分のペースというものはあって、誰かれと合わせなければならない状況では、しっかり相手に合わせることも肝要だ。

 だけれども、そればかりでは疲れてしまう。なぜあの状況――つまりお茶会に招かれた状態――で、自分は有意義に時間を潰せたというのか。その答えはその辺りにあったようだ。

 彼女らは、こちらをあくまでも来賓、ゲストとしてもてなしてくれていたからだ。そんなことをされては息苦しくてかなわない、と普通ならそう感じるはずだった。しかし彼女らの対応は、あくまでもゲスト扱い、それは儀礼的な態度ではなく、常に俺のペースを優先してくれていたという、一流の気配りを擁していたのだ。無遠慮な質問をぶつけることを厭わしがらないストレートさは逆に好感触だった。俺の方が合わせる必要がなかったから、ストレスもなく、あることないこと揚々としゃべってしまっていたのだ。あれは簡単にはできない。

 あの人数、言うなればマスコミが要人を取り巻く質問責めのような状況で、相手を立てる。これでは誰でも、気持ちよく話してしまうだろう。それくらい、居心地の良い空間だったことは紛れない、おそらく心理学とかの分野で検証可能なレベルの事実だった。

 逆に考えれば、それらは驚異足り得るスキルだ。

 ああやってお茶会してれば、彼女たちにそれが身に付いてしまうのだろうか。上流階級の心髄を垣間見たような気がした。――別に指導者がいるのか。

 あの堅城が――いや、そうだったとすればまさかだよな。

 仮にそうだとしたらば、お茶会、侮りがたし。見事な指導だ。直接誉めたりはしないが。 マンションにつく頃には、雲の切れ間から陽射しが降り注ぎ、鬱蒼とした空気も少しは晴れていた――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ