離婚届の翌朝、元夫が私の侍女に応募しました
離婚届の最後の朱印が乾いたのは、夕方の六時だった。
その翌朝、元夫は私の侍女に応募した。
「応募用紙をいただけますか、ロシュ先生」
診療所の玄関に立つアベルを、私は扉の内側から見つめた。
昨日まで彼はアベル・ド・ヴァレール。侯爵家の嫡男で、私の夫だった。
今朝の彼は飾り紐のない濃紺の上着を着て、革鞄を一つ持っていた。馬車も従者も、侯爵家の銀百合の徽章もない。
ただ、私が夜明けに貼ったばかりの紙を指さしている。
『ロシュ診療所。診療所付き侍女一名募集。洗濯、煮沸、食事、夜番、患者介助。三か月の試用期間あり』
「これは贖罪を演出する舞台ではありません」
「承知しています」
「侯爵家の嫡男が洗濯桶を抱える姿を見せれば、私が機嫌を直すと思っているなら」
「そんな見世物にすれば、ここで働く人を侮辱します。仕事は洗濯、煮沸、食事、夜番、患者介助。どれも、私が値段も手順も知らないまま、あるものとして使ってきた仕事です」
用意していた怒りが、行き先を失った。
「離婚を取り消す気はありません」
「それも承知しています」
「昨日、あれほどはっきり申し上げました」
「だから、元夫の資格では来ていません。応募者です」
背後から、診療所を切り盛りするマドレーヌが顔を出した。六十二歳。私が研修医だったころから救貧院の侍女頭を務め、薬草の匂いだけで煎じ過ぎを見抜く人だ。
「先生。人手が足りないのは事実です。面接だけはなさったら」
その目は、面白がっていなかった。
だから私は扉を開けた。
◇
診察室の机には、離婚届の控えがまだ置いてあった。
アベルはその隣で応募用紙を書いた。
氏名、年齢、住所、前職、希望給金、できる仕事。
「住所が『葡萄通り四番、屋根裏二号室』になっています」
「昨夜から借りています」
「侯爵邸は」
「出ました。家政局長代理も辞任しました」
前職の俸給は年に金貨千二百枚。診療所の侍女は、勤務日の食事を含めて年に百二十枚だ。
「希望給金の欄が空白です」
「不要です」
「では不採用です」
アベルが初めて顔を上げた。
「無給で働くことを美談にすれば、この仕事は金を払うほどではないと言うのと同じです。働くなら規定の給金を受け取り、そこから家賃を払い、自分の生活をしてください」
「……はい。規定額を希望します」
彼は空欄へ、金貨百二十枚と書き入れた。
「できる仕事は、会計、契約、物資調達、人員配置」
「できない仕事は?」
「洗濯、煮沸、調理、看病です」
「募集している仕事の大半ですね」
「学びます」
言うだけなら、結婚していた四年間にもできた。
私は引き出しから試用期間表を出した。一日ごとに、清潔管理、患者対応、連携、時間厳守、判断の五項目を記録する表だ。
「条件は三つです。一つ、試用は九十日。以前の関係による加点も減点もしません。二つ、勤務中、私は医師、あなたは診療所付き侍女です。夫だった権利は一つも持ち込まないこと。三つ、指導はマドレーヌに従い、勝手に仕事を変えないこと」
「受け入れます」
「志望理由は?」
彼はすぐには答えなかった。
「私が閉じた場所を、開け直す側で働きたいからです」
「それで許されると?」
「いいえ」
短い答えだった。
「許されるために来たのではありません。あなたから奪った仕事が、どれほどの人の手で成り立っていたかを知り、その一部を返すために来ました。あなたが九十日後も私を嫌っていても、必要な返却は別にします」
私は試用期間表の一日目に、彼の名を書いた。
「採用です。まず洗濯場へ」
「ありがとうございます、先生」
「礼は九十日目に。マドレーヌ、お願いします」
「では応募者さん。上着を脱いで、爪を短く。患者の肌へ触れる人の手です」
侯爵家の嫡男だった男は、黙って爪切りを受け取った。
◇
最初の失敗は、十分後だった。
アベルは血のついた敷布へ熱湯を掛け、汚れを固着させた。
「血は先に冷水です」
マドレーヌは声を荒らげなかった。それが余計に厳しかった。
「感染が疑われるものは印のある桶へ分け、灰汁で洗ったあとに煮沸。産室の布と厨房の布は一緒にしない。数を控える。小さな布一枚でも、患者の身体の一部を預かるつもりで扱いなさい」
「はい」
「今の敷布は落ちるまであなたが洗う。ただし他の仕事を遅らせない」
「はい」
昼までに彼の指の節は赤くなり、夕方には掌に水ぶくれができた。
けれど、痛みに耐えたことを私は評価しなかった。
手袋を使うよう言われたのに、素手のほうが早いと判断したからだ。清潔管理二点、連携一点、判断一点。
「努力は採点しないのですか」
夕刻、試用期間表を見た彼が尋ねた。
「患者を守った結果を採点します。あなたの根性を見る試験ではありません」
「わかりました」
翌日、彼は手袋を使った。
三日目には、洗濯桶を持ち上げる前に通路の人へ声を掛けた。五日目には、子どもの嘔吐物を片づけながら、その母親へ「汚して申し訳ない」と言わせなかった。
七日目の夜、赤熱病を疑う母娘が運ばれてきた。
母親のリュセットは仕立屋で、娘のニナは八歳。二人とも高熱で、ニナは水を飲むたび吐いた。
「隔離室を開けます。マドレーヌ、冷却布を。アベル、湯と清潔な寝衣。それから記録を」
「はい、先生」
彼は走らなかった。煮えた湯を運ぶ廊下では、急ぐほど危ないと教わったからだ。
日付が変わるころ、リュセットが寝台を汚した。
「ごめんなさい。ごめんなさい、侯爵様にこんな……」
朦朧とした彼女は、どこかでアベルの顔を見たことがあったらしい。
「今は侍女です。謝らなくていい。あなたは病人で、これは私の仕事です」
アベルは寝衣を替え、濡れた髪を乾かし、吐いたニナの口をすすいだ。苦しむ人へ何を言えばよいかわからず、初めは黙っていた。やがてニナが母を呼ぶたび、「隣にいる。息をしている」と、確認できることだけを答えた。
薬の時刻を一度も違えなかった。
明け方、赤熱病ではなく、腐った乳による食中毒だとわかった。峠を越えた母娘が眠ると、アベルは隔離室の床へ座り込んだ。
「椅子を使ってください。床を拭いたばかりでしょう」
私は彼へ薄い茶を渡した。
「すみません」
「患者に謝らせなかった点は、よくできました」
「あの人は、閉鎖中にも来たそうです」
記録簿を読んだのだろう。
診療所は、彼が閉鎖命令へ署名してから二十三日間、扉を閉めた。リュセットはその間に一度、熱を出したニナを背負って来ている。王立病院までは徒歩で一時間半。門前で診察料が足りず、薬草店で解熱剤だけを買った。
「命に別状はありませんでした」
「それは、私の判断を軽くしません」
「ええ」
「私は帳簿上、二十三日を短いと思った。ヴァレール家の倉庫を売らずに済むなら、春の社交期が終わるまで休めばいいと。あなたが患者は予定どおり病気にならないと言ったのに」
「あなたは、私の診療所を閉じたのではありません」
私は冷めた茶を飲んだ。
「私が何をして生きる人間かを、閉じたのです」
アベルは顔を上げなかった。
「はい」
言い訳も、愛していたという逃げ道も置かなかった。
私は試用期間表の患者対応へ、初めて五点をつけた。
◇
十五日目、ヴァレール侯爵が診療所へ来た。
磨き上げた長靴で洗濯場まで踏み込み、息子が敷布を干す姿を見るなり、眉間へ深い皺を刻んだ。
「アベル。家へ戻れ」
「勤務中です」
「侯爵家の後継者が下着を洗って、何になる」
マドレーヌが侯爵と物干し綱の間へ立った。
「清潔な下着が一枚できます。閣下、その靴で清潔区域へ入らないでください」
侯爵は怒鳴らなかった。家門を四十年守ってきた人らしく、冷静に私へ向き直った。
「ロシュ先生。息子の軽率な閉鎖は詫びる。だが当家にも、百二十人の雇用と負債がある。診療所の土地を担保に入れたから、倉庫と使用人の住居を手放さずに済んだ。離婚は認めた。これ以上、後継者を巻き込まないでもらいたい」
「私が巻き込んだのではありません。履歴書を持ってきたのは彼です」
「では解雇を」
「勤務評価に、父親の希望という項目はありません」
侯爵の視線が、私からアベルへ移った。
「家政局長代理の辞表は預かっている。明日までなら破棄できる。戻らなければ、継承権も年金も失うぞ」
「承知しています」
「洗濯が償いになると思うのか」
「なりません」
アベルは濡れた手を前掛けで拭いた。
「これは必要な仕事です。償いに見せるための舞台ではない。診療所の権利については、別に返します」
「返せば担保が足りなくなる」
「私の母方から継いだ年金債を差し替えます。書類は今朝、銀行へ提出しました」
侯爵の顔色が変わった。
年金債を渡せば、アベルは侯爵家を出たあとに頼れる財産の大半を失う。だからといって、私が感謝する筋ではない。私の財産を返すための費用を、奪った側が負担するだけだ。
「エリーズの入れ知恵か」
「いいえ。彼女には今、初めて伝えました」
「勝手なことを」
思わず私も言った。
アベルは真正面から私を見た。
「先に相談すれば、あなたに私の財産を心配させます。診療所を返すのは交渉ではありません。受け取り方は、あなたが決めてください」
「自己犠牲で私を黙らせるつもりなら」
「年金債を失っても、私は働けます。今月の家賃も、自分の給金から払いました」
侯爵は息子をしばらく見ていた。
「家名なしで生きるのは、洗濯より難しいぞ」
「では、それも学びます」
侯爵は返事をせず帰った。
アベルは物干しへ戻った。見送ってほしいとも、選択を褒めてほしいとも言わなかった。
その日の時間厳守は一点だった。侯爵との会話で、干し上がりが四分遅れたからだ。
連携には五点をつけた。
◇
三十日目の評価で、アベルの平均点は三・六になった。
洗濯は一人で任せられる。煮沸釜の火加減も安定した。刻み食はまだ粗く、髪の長い患者の身支度には時間が掛かる。夜番の記録は正確。何より、仕事を変える前に、その仕事をしている人へ尋ねるようになった。
「洗濯場に滑車を付けたいのですが」
彼は図面をまず私でなく、マドレーヌと洗濯係のジュリへ見せた。
「桶を持ち上げる回数を半分にできます。ただ、この高さだと敷布が床へ触れますか」
「冬物は触れるね。柱を半尺上げればいい」
「ジュリ、肩を痛めず引ける重さは?」
侯爵家で命じる側だった男が、二人の返答を余白へ書き込んだ。
完成した滑車は、誰か一人の英雄的な働きではなく、毎日の負担を少し減らした。
その夜、アベルは一通の封書を私へ差し出した。
「勤務と関係のない書類です。読むのは、退勤後にしてください」
中には、診療所の登記を審査する市民法廷宛ての宣誓供述書が入っていた。
四年前、結婚に伴って、診療所は私個人の所有からヴァレール侯爵家の慈善事業へ登記し直された。診療を続ける限り名前だけの変更だと、当時の私は思っていた。
ところが昨冬、アベルは配偶者代理権を使い、私が同意したと記録して土地を担保へ入れた。
私は同意していない。
それを証明する文書だけがなかった。
『私は妻の明確な反対を聞きながら、家門の利益を優先し、同意済みと記載した。署名者は私である。エリーズ・ロシュに責任はない』
宣誓供述書は、継承権放棄書と年金債の差し替え証明を添え、彼自身の虚偽を一行も薄めずに記していた。
「これを出せば、あなたは公文書への虚偽記載で罰金を受けます」
「はい」
「侯爵家へ戻る道もなくなる」
「戻る道を残したまま独立したとは言えません」
「なぜ、結婚している間にこれができなかったの」
声が震えた。
ずっと、それだけが聞きたかった。
「臆病だったからです」
アベルは答えた。
「父に失望されることも、家名なしで自分に何が残るか知ることも怖かった。あなたなら最後には理解してくれると、愛情を都合よく使った。診療所を閉じた日のあなたの言葉を、私は全部覚えています。覚えていて署名しました」
下手だった、知らなかった、仕方がなかった。
そんな言葉を一つも選ばなかった。
「申し訳ありませんでした。診療所を奪ったことも、医師であるあなたを私の妻という役目の下へ置いたことも。許してほしいとは言いません」
「謝罪なのに?」
「謝罪は、許しを請求する書類ではありません」
私は供述書を机へ置いた。
「提出するかは、私が決めます」
「はい」
「明日の朝まで考えます」
「はい、先生」
翌朝、私は自分の手で法廷の受付箱へ入れた。
◇
権利審査は、試用四十七日目に開かれた。
私は母が遺した購入証書、十二年分の診療帳簿、修繕費の領収書を持って証言台へ立った。
「この診療所は、私が医師として働くための財産です。侯爵夫人の慈善の飾りではありません。私は閉鎖にも担保提供にも同意していません」
アベルは、私の隣ではなく、虚偽を認める者の席に座った。
侯爵家の弁護士が、彼の供述は離婚の感情に左右されたものだと主張した。
「では、なぜ年金債まで差し替えたのです」
裁判官が尋ねた。
「私が負うべき損失だからです」
「元妻との復縁を望んで?」
「復縁を条件にしたことはありません。彼女が私を二度と私生活へ入れなくても、権利は彼女へ戻るべきです」
その答えで、私の代わりに何かを決めたわけではない。
ただ、彼が決めてしまった過去を、彼自身の証言で否定した。
裁判官は登記の無効を認めた。
診療所の建物、土地、名称使用権。三つすべてが、エリーズ・ロシュ個人へ返還された。
法廷を出たところで、アベルは私に礼をし、洗濯場へ戻った。審査の日も勤務日で、午後には十二枚の敷布が待っていたからだ。
「今日は休んでもよかったのに」
「試用期間表に、法廷勝利休暇の欄はありません」
「少しは口が回るようになりましたね」
「患者対応で鍛えられました」
私は、離婚後初めて彼の前で笑った。
彼は驚いた顔をしたが、笑った理由を自分に都合よく解釈しなかった。
◇
六十八日目、川沿いの染色工房で蒸気釜が破裂した。
火傷と裂傷を負った職人が、十七人運び込まれた。
「歩ける人は待合室へ。呼吸の苦しい人を処置室へ。火傷へ油を塗らないで、水で冷やしてください!」
私は診察し、マドレーヌが介助を割り振った。
アベルは勝手に指揮を執らなかった。
「マドレーヌ、湯と布の次は」
「家族の名前を記録。汚れた服は切る前に本人へ断る。意識のある人には必ずだよ」
「はい」
彼は床へ膝をつき、腕を火傷した若い職人へ説明した。
「袖を切れば、傷へ触れず脱がせられます。切ってもいいですか」
「母ちゃんが縫ってくれたんだ」
「では縫い目だけほどきます。時間は少し掛かりますが、布は残せる」
処置が終わると、切らずに外した袖を洗って乾かし、患者の枕元へ置いた。
夜半までに十七人全員の処置を終えた。重傷者三人は王立病院へ送り、残りを交代で見守った。
私は最後の縫合を終えたところで、針を取り落とした。
「先生、交代してください」
「まだ一人、熱が」
「診察は済んでいます。指示もあります。二時間、横になってください」
「私は院長です」
「はい。ですから、院長が決めた勤務表に従ってください。医師の欄にも休憩があります」
以前のアベルなら、私を心配する自分の感情を理由に、診療そのものを止めただろう。
今の彼は、診療を続けるために私を休ませようとしていた。
「二時間だけです」
「一時間五十分で茶を用意します」
「残り十分は?」
「先生は起きてから靴を履くまでが遅いので」
「失礼な侍女ですね」
「試用期間表へどうぞ」
私は診察室の寝台へ横になった。
目を閉じる前、廊下から小さな声が聞こえた。
「汚してすまない」
「謝らなくていい。替えの敷布はあります」
アベルの声だった。
清潔な敷布は、勝手に湧いてこない。
水を汲む人がいる。薪を割る人がいる。汚れを見分け、洗い、煮沸し、乾かし、必要な場所へ間に合うよう置く人がいる。
医師の判断が命を救うことはある。
けれど、患者が次の朝まで人間らしく眠れるのは、名の残らない仕事が途切れないからだ。
それをアベルは、もう知っていた。
◇
九十日目。
試用期間表の最後の欄を埋めるため、私はアベルを診察室へ呼んだ。
清潔管理五、患者対応五、連携五、時間厳守四、判断五。
「四点の理由は?」
「染色工房の事故の日、私を起こすのが三分遅れました」
「よく眠っていたので」
「勤務表は守ってください」
「はい、先生」
彼の掌は、もう硬くなっていた。
爪は短く、袖口に汚れはない。貴族の指輪を外した跡だけが、薄く残っている。
「診療所付き侍女として、試用合格です。マドレーヌも継続雇用を推薦しています」
「ありがとうございます」
「ただし、元夫としての復職は認めません」
アベルは、静かにうなずいた。
「申請していません」
「ええ。だからこれは、私から確認しておきたかっただけです。離婚は間違いではなかった。あのときの私には、あなたと離れる必要がありました」
「わかっています」
「私たちは、元の夫婦へは戻りません」
「はい」
彼は何も求めなかった。
権利を返した。家門から独立した。九十日、誰かに見せるためではない仕事を続けた。
それでも足りないかもしれないと知ったまま、私の答えを待っていた。
だから私は、机の引き出しから新しい紙を出した。
白紙の再婚届ではない。
「次の面接は、日曜日の午後三時です」
「……何の面接でしょう」
「私と交際したい人の面接です。場所は鐘楼前の喫茶店。勤務時間外なので、医師と侍女ではありません」
アベルは、洗濯桶を初めて渡された日より途方に暮れた顔をした。
「応募資格はありますか」
「独身。定職あり。自分の家賃を払っていること」
「三つとも満たしています」
「前歴に離婚一回」
「隠しません」
「その点だけは加点します」
私が差し出した予約票を、彼は両手で受け取った。
「花を持っていっても?」
「一輪なら」
「指輪は?」
「持ってきたら、その場で不採用です」
「では、質問を一つだけ。何度、面接を受ければいいでしょうか」
「決めるのは、これからです」
私は彼の手から試用期間表を取り、代わりに日曜の予約票を残した。
「元夫だから、近道はさせません」
「望むところです」
「強がりましたね」
「はい。今、とても嬉しくて、少し格好をつけました」
正直さに、私は笑った。
診察室の外では、煮沸釜の蓋が鳴り、マドレーヌが次の洗濯物を呼んでいる。
アベルは予約票を胸の内ポケットへしまうと、前掛けの紐を締め直した。
「それでは日曜日に、エリーズ」
「勤務中です、アベル」
「失礼しました。日曜日に、ロシュ先生」
彼は洗濯場へ戻っていった。
離婚届の翌朝に始まった試用は、それで終わった。
恋の採用面接は、まだ一度目も始まっていない。
お読みいただきありがとうございます。
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