表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/64

1-2 いいえ、メイドです!

「シズク、お前も本当に来るのか?」


「はい、専属メイドですので」


 淡い青髪に姫カット、黒いカチューシャを頭に載せた華奢な少女──それがシズク。

 俺より一回り背が低くて、いわゆる“美人”というよりは、守ってやりたくなるような可愛い系。


 彼女は、以前俺が壊滅させた犯罪組織に囚われていた子だ。

 今は俺の専属メイドとして働いている。


 昔は専属メイドが4、5人いたんだが、今では彼女1人。

 シズクが優秀すぎて特に困ってはいないけど……あいつら、どこ行ったんだ?

 そろそろシフト制にしないと、休みが取れなくてかわいそうだよな。


 ちなみに俺、この子を初めて見たときにビビビッと来た。

 多分、絵のタッチが違う。

 俺を描くときと、シズクを描くときじゃ、絵師の入れ込み具合が5倍は違う気がする。

 つまり、これは重要キャラフラグ。間違いない。


 本来なら、勇者が助けに来るシナリオだったんだろうけど……まあ、俺が先に助けちゃった。

 当時は「やっちまったか……?」と冷や汗をかいたが、後に気づいた。


 結果的に助かるなら、誰でも良くない?


 要は死ななければOK!むしろ俺、ファインプレーでしょ?


 今すぐ勇者の元へ“出荷”したいところだけど、肝心の勇者候補はまだ見つかっていない。

 なので、うちで一時的に保護してる感じだ。


 なお、メイドとして働くのはシズク自身の希望。

 「働かなくてもいいよ」と言ったのに、「それは恩知らずすぎます」と丁寧に断られた。

 まったく、真面目なやつだ。


「もう、学園行きの準備は整っています」


「おお、相変わらず早いな」


「専属、ですので」


 やけに“専属”を強調してくるシズク。

 ……いや、わかるぞ。独占とか専属とか、そういう単語には妙な魔力がある。

 「独占配信」って言われるとついクリックしちゃうアレだ。

 “専属メイド”っていう響きも絶妙にそそる。本人が気に入ってるっぽいのが若干謎だが。


 とはいえ、元庶民である俺は同年代に敬語で話されるのはどうも合わない。


「二人でいる時くらい、もっと気楽に話せば?」


「いえ、私はメイドですので。それにモヴ様は年上のご主人様。敬語は当然かと」


「そんな肩肘張らなくてもいいのに」


 なんせうちは、田舎のしがない貴族。

 この前なんか、領民のガキに泥を投げつけられたばかりだ。不敬にもほどがあるぞ、チビッ子!


「……私はモヴ様に、返しきれないほどの恩があります。ぞんざいに接するなど、とてもできません」


「……まったく真面目すぎるっての。もう五年も無賃で働いてるんだから、恩はとっくに返してるっつーの」


 いや、待ってください労基さん。彼女が受け取り拒否をしてくるんです。こっちに渡す意志はあるんです(涙目)


「……そんなことより、そろそろ向かいましょうか」


「ああ、行くか」


 


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 


 世間話もそこそこに、王都行きの馬車へ乗り込む。

 うちは貴族とはいえ、割と貧乏な方だ。

 当然、乗るのはボロくて狭い格安馬車。


 座席は狭くて、シズクが俺のすぐ横に座る。ぴったり横に。いや、近っ。


「なあ」


「なんでしょう?」


「近い」


「問題ありません。私は困っていませんので」


「……いや、お前の心配はしてないんだが」


 ふわっと花のような香りがする。

 いいシャンプーでも使ってるのか?気になるけど、「お前いい匂いするな」とか言ったら変態扱いされるだろうし、下手すりゃセクハラだ。

 労基さん、うちは健全です。安心してください。

 とはいえこの距離感、慣れてない男子には毒だぞ?


「あと、メイドが主人と手、つながないよな?」


「つなぎますよ?」


 そう言って、恋人つなぎで俺の左手をがっちりホールドするシズク。

 小首を傾げて、心底不思議そうな顔をしている。


 手を引こうとしても、びくともしない。……何この握力。


 そんなこんなで、俺は王都へと向かうのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ