第7話-最後の仕事
皆さんこんにちは!第7話が来ました!
前回のおさらいです──涼上とポリス様の戦いがついに学校で勃発!
さらに、血清を投与されたテロリストたちが街中で暴れ始め、都市は完全に混乱状態に。
もはや打つ手なしのDSA、そして橘たちは……この絶望的な状況を覆すことができるのか!?
「早く市民を避難させろ!それからヒーローたちに連絡しろ!呼べる奴は全員呼び出せ!全員だ、今すぐ動け!ボサッとしてんじゃねぇ!」
つい先ほどまでDSAにいたレジャイナも、すでに外での支援へと向かっていた。
「高瀬さん、あいつは今……?」
次々と押し寄せる緊急対応に追われ、高瀬たちはいつも以上に慌ただしく動き回っていた。
だが、その中でただ一人だけ、動かない者がいた。
会議室の中で俯いたまま黙り込む橘。彼は何もせず、ただ沈黙していた。
「今は構ってる暇なんてないわ。それは本人の問題よ。」
そう言い捨てると、高瀬たちは再び慌ただしく持ち場へ戻っていった。
「現在、市内の各地で複数の超人類による破壊行為が確認されています。一部のスーパーヒーローがすでに戦闘に参加しており、皆さんも速やかに避難してください──」
ニュースキャスターの声だけが、静まり返った会議室に響いていた。
厚い扉と窓が外の喧騒を遮断しているかのように、橘は無表情のまま椅子に座り、虚ろな目で一点を見つめていた。
彼は何度も深くため息をつき、やがて自分を責めるように呟き始めた。
「なんでだ……なんで……なんで俺は、毎回間違った奴を信じちまうんだ……!
全部台無しにして……あいつのこと、あんなに信じてたのに……話したのに……結局、俺のせいだ……!
俺が、あの言葉で、もう後戻りできないって伝えちまったから……!
全部俺のせいだ……俺のせいだ……俺のせいなんだッ!」
橘は次第に声を荒げ、拳で机を叩きつけた。
怒りと絶望が混じり合い、理性が吹き飛ぶ。椅子を蹴り倒し、机をひっくり返し、棚の中身を滅茶苦茶にぶちまける。
額を壁に叩きつけながら、叫ぶように、自分自身を罵倒した。
「またお前か!またお前だよ、このクズが!
何一つまともにできねぇ!生きてる価値なんてねぇんだよ!
凛を巻き込んだだけじゃ気が済まねぇのか!今度はもっと多くの人を巻き添えにするつもりか!
情けねぇ……ヒーローだ?罪を償うだ?笑わせんな……死んじまえよ、橘!」
やがて、会議室は見る影もなく荒れ果てていた。
机も椅子も倒れ、書類や資料は床一面に散らばり、コーヒーとお茶がそこら中にぶちまけられている。
橘自身の服にも染みと匂いが残り、手も額も真っ赤に腫れていた。
息を切らせながら床に倒れ込み、天井をぼんやりと見上げる。
深呼吸をするたびに、胸の奥に後悔と虚しさだけが沈んでいった。
顔のそばに数枚の紙がひらりと落ちてきた。
橘は無造作にそれを手に取り、ぼんやりと目を通す。
それは──涼上に関する資料だった。
コーヒーの染みと破れ跡にまみれた紙を、彼は無表情のまま見つめる。
だが、ある行に目を留めた瞬間、その表情がわずかに揺らぐ。
沈黙の中、テレビのニュースだけが淡々と流れ続けた。
「──速報です。本日、青羽高校の文化祭会場にて、ポリス様と正体不明の敵との激しい戦闘が発生しました。現在、現場は混乱状態にあり……」
その報道を耳にした橘は、よろよろと身体を起こした。
テレビ画面の中では、西山──いや、涼上とポリス様が激突していた。
だが戦いというより、一方的な虐殺に近い。
逃げ惑う学生たち、崩れる校舎。橘は黙ってその映像を見つめながら、何かを考え込むように視線を落とした。
「……なんで反撃しねぇんだ? あいつだって、俺たちみたいなただの人間じゃねぇのに……」
橘はテレビと手元の資料を交互に見つめながら、眉をひそめる。
やがて、何かに気づいたように表情を曇らせ、無意識に顎へ手を当てた。
数秒の沈黙のあと、鼻から長い息を吐き出した。
彼は手にしていた資料をくしゃりと丸めて脇へ投げ、ゆっくりと立ち上がって体についた埃を払った。
身の回りを軽く整え、スマホや財布などの私物を取り出して机の上に雑に置く。
ただし、特製のエネルギーピストルだけは腰に残したまま。
血清の入った注射器を取り出し、しばらく無言で見つめたあと、再びポケットに戻す。
そして財布から凛の写真を取り出し、しばし見つめながら橘は小さく呟いた。
「今回は……違う結末にできるのか……?」
橘は写真を胸元のポケットにそっとしまい、上着を羽織ると自分の胸を何度か強く叩いた。
そして足を踏み出し、会議室を後にする。
出口でちょうどDSAの職員とぶつかってしまい、相手は苛立った様子で怒鳴りつけた。
「橘!手伝わないだけでも十分問題なのに、会議室まで壊すってどういうつもりだよ!?……おい!どこ行く気だ!」
「……最後の仕事を、果たしに行く。」
「は?ちょ、ちょっと待て!まさか学校に行くつもりじゃないだろうな!?頭でも打ったのか?行ってどうするつもりだよ!」
「西山を……止めに行く。」
「は?どうやって止める気だよ?」
「まずは引き戻してみる。……でも、それで駄目なら――」
橘は深く息を吸い込み、静かに続けた。
「殴ってでも止める。」
「はあ!?何言ってんだお前!頭でも打っておかしくなったのか!?……おい!おいってば!待て!」
職員が慌てて呼び止めるも、橘は振り返ることなくそのまま歩き去った。
ビルを出て地上に降りた橘は、街の惨状に言葉を失った。
道路には無数の亀裂、建物の壁には大きな穴、壊れた店の看板や倒れた街灯。
混乱した交通は完全に麻痺し、人々は悲鳴を上げながら四方八方へ逃げ惑っていた。
「さて……どうやって行くか。まさかまた走って行くわけにもいかねぇしな。」
橘が学校までの行き方を考えていると、近くに停められていた数台の警用バイクが目に入った。
周囲の警官たちは、避難誘導に追われて右往左往している。
橘がそのバイクに向かおうとした瞬間、近くの路地から血清を打たれたテロリストが現れた。
男の目は血走り、完全に理性を失っている。
橘たちを見つけるなり、獣のような咆哮を上げて突進してきた。
警官たちは慌てて銃を撃ったが、弾が当たっても男は止まらない。
そのまま橘に飛びかかろうとした瞬間――
「バチィィンッ!!」
轟音と共に巨大な雷光が男の身体を直撃し、次の瞬間には地面に倒れ伏していた。
全身には焼け焦げたような痕が残り、ピクリとも動かない。
橘たちが顔を上げると、空に一つの人影が浮かんでいた。
全身を覆うレインコートのような特製スーツを着ており、フードの陰で顔は見えない。
しかし、その片手からはバチバチと雷のようなエネルギーが迸っていた。
橘は目を細めてその人物を見据える。
「ルーキー……か?お前なのか?」
「そーだよ〜おはよ〜橘くん。てか、なにこれ?寝てたのに急に呼び出されてさ〜」
眠そうな声でそう言うと、ルーキーと呼ばれたヒーローは軽く手を振り、別の方向へ飛び去っていった。
「話せば長くなるけど……助かった、ありがと!」
敵が倒れたのを確認すると、橘は路肩に停まっていた警用バイクにまたがり、アクセルを全開にして学校へ向かった。
「おい!ちょっと待て!ヘルメットぐらい被れっての!」
背後から警官たちの怒鳴り声が聞こえるが、橘は聞こえないふりをしてアクセルをさらに回した。
さすがは警用バイク、性能は市販のものより一段上だ。
橘は体を倒して車体を操り、混乱した交通の中を縫うように走り抜けていく。
「さっきの奴……もし俺もあんなふうになったら……」
一瞬、頭をよぎった不安に気を取られ、前方の信号が赤に変わっていることに気づくのが遅れた。
交差点には左右から車がびっしりと流れ込んでくる。
それでも橘は、卓越したハンドリングと警用車両ならではの加速力を駆使し、車の隙間をジグザグにすり抜けていった。
そのとき、前方に巨大なトレーラーが通りかかった。
あの巨体では急停止など不可能だ。
だが橘は一瞬も迷わず、体を大きく傾けて車体を地面すれすれまで倒し込む。
右手でスロットルを握り続け、左手と膝でバランスを取りながら地面を擦って滑り抜ける。
「ギギギッ」と火花が散り、トレーラーの下を数センチの隙間で通過した。
巨大なタイヤが目の前をかすめ、わずかにタイミングを誤れば即死だった。
どうにか通過したものの、腰に鋭い痛みが走る。
「くっそ……腰が……って、危なっ!マジで死ぬかと思った……まあ、これで一息――」
そう言いかけた瞬間、周囲のビルの外壁が崩れ、巨大な看板やコンクリ片が次々と落下してきた。
橘が避けることはできても、周囲の人間や車までは守れない――そう思ったその刹那、
「ドドドドッ!」
上空からミサイルやエネルギービームのような攻撃が放たれ、落下物を粉々に砕き散らした。
破片は細かくなって降り注ぐだけで、誰も傷つかずに済んだ。
「た、助かった……」
橘たちは思わず空を見上げた。
そこには、全身が白い装甲に覆われた二メートルほどのロボットが浮かんでいた。
脚部のスラスターで空中に静止し、両腕を前に構えている――おそらく、先ほどの攻撃は彼によるものだ。
だがそのロボットは何も言葉を発することもなく、任務を終えたかのように無言で飛び去っていった。
「……なんだあれ?新しいヒーローか?見たことねぇ機体だけど……ま、助かったから良しとするか。」
疑問を抱きつつも、橘はそれ以上考えるのをやめ、再びアクセルをひねって目的地へと走り出した。
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学校では、まだ激しい戦闘が続いていた。
壊れた校舎、倒れた屋台、悲鳴を上げて逃げ惑う生徒たち。
ポリス様はボロボロの体でなんとか立ち上がり、苦しげに涼上へ声を掛けた。
「涼上……頼む……せめてここではやめろ……ここには罪のない生徒たちがいるんだ……!」
「知るかよ……この学校で俺が気にしてた人間は、もうとっくにいねぇんだよ。――それも全部、お前のせいだ!」
涼上は周囲の混乱など意に介さず、地面を踏み割るような足取りでポリス様へと迫っていく。
握りしめた拳には、怒りがはっきりと宿っていた。
もはや言葉は通じないと悟ったポリス様は、震える手で腰のホルスターから特製の警棒を抜き取った。
「……そうか……それが、お前の望みなんだな……」
警棒を握るポリス様の手は、まだわずかに震えていた。
「そうこなくちゃな……嶋田ァ!」
涼上の右腕が異形の棍棒へと変形し、地を蹴って一気に加速。
高く跳び上がり、空から勢いよくポリス様へ叩きつけた。
ポリス様はタイミングを見計らって横へと転がり、涼上の棍棒をかろうじて回避。
そのまま側面から大腿部を狙って警棒を叩き込む。
涼上は苦痛に顔を歪め、一瞬膝をつくが、すぐに腕で攻撃を受け止め、反撃の一撃を放つ。
その力は圧倒的で、ポリス様は防御しきれず後方へ吹き飛ばされた。
涼上は追撃を止めず、棍棒を構えて正面から突っ込んでくる。
ポリス様も正面から警棒を構えて受け止めるが、その腕には重圧がのしかかる。
押し負けそうになり、両手で必死に支える。
次の瞬間、涼上の蹴りが腹部に突き刺さり、体勢を崩したポリス様の顔面に拳が叩き込まれた。
彼の体は宙を舞い、地面に叩きつけられる。
ポリス様が必死に体を起こそうとする中、涼上はゆっくりと、だが確実にその距離を詰めていった。
「嶋田……お前のツラ見てるだけで吐き気がするんだよ。
やっぱり昔からそうだな、恥ってもんがねぇ。どうしてお前みたいな奴が――!」
涼上の怒号とともに攻撃はさらに苛烈さを増し、やっと立ち上がったポリス様を再び押し込んでいく。
まず放たれた蹴りをポリス様は両腕で受け止める。
だがその瞬間、死角から振り抜かれた棍棒が胴をえぐるように叩きつけられた。
「ぐはっ――!」
鮮血を吐き出しながら、ポリス様の体が横に吹き飛ぶ。
今度の涼上は一切容赦しなかった。
倒れかけたポリス様を片手で持ち上げ、そのまま勢いよく頭突きを叩き込む。
「ガンッ!」という鈍い音と共に、ポリス様の顔面から血が飛び散った。
顔面は血に染まり、視界も定まらない。
それでもポリス様は必死にもがき、最後の力を振り絞って腰の警棒を引き抜いた。
スイッチを入れると青白い電流が走り、涼上の体に突き立てる。
「バチバチッ!」
一瞬、涼上の体が痙攣した。
だがすぐにその電撃を力ずくでねじ伏せ、怒りの形相でポリス様を掴み上げる。
「うおおおおっ!」
そのまま勢いよく投げ飛ばし、近くの文化祭の屋台をまとめて粉砕した。
満身創痍のポリス様は、もはや立ち上がるのもやっとだった。
だが涼上は歩みを止めず、冷たい殺意をたたえて再び近づいてくる。
「もう終わりだ……遊びはここまでだ!」
涼上はそう吐き捨てると、右腕を巨大な刃へと変形させた。
その光景は、まさに“処刑”の準備のようだった。
そのとき――「ブオンッ!」というエンジン音が響き、視界の端から一台の警用バイクが突っ込んできた。
誰も乗っていないそのバイクは、一直線に涼上めがけて突進し、ドンッと正面から激突。
涼上の体が勢いよく吹き飛んだ。
「おい!無事か!」
「……兄貴? な、なんで……?」
ポリス様は驚愕の表情で、目の前の男――橘を見つめた。
「そんなことより、立てるか?」
「な、なんとか……」
橘は瓦礫の中に倒れていたポリス様に手を差し伸べ、引き上げる。
その瞬間、ポリス様は震える手で橘の体を掴んだ。
「兄貴……全部、俺のせいだ……!
こんなの、俺にポリス様を名乗る資格なんてない……やっぱり兄貴か、他の誰かが――」
「おいおい、もういい!今はそんなこと考えるな!ケガしてるんだ、すぐにここを離れろ。」
「で、でも兄貴は……!」
「俺のことは気にするな!あいつは俺が何とかする!
それに……もし資格の話をするなら、俺だってお前と同じだ。
だから行け、今すぐに!」
「……わかった……兄貴、気をつけて……」
ポリス様は腹を押さえながら、ふらつく足取りで現場を離れていった。
出血もひどく、傷は深いが――まだ、命に別状はない。
「……さて。ここからが本番だな。」
橘は視線を上げ、少し離れた場所でゆっくりと立ち上がる男を見据えた。
その男も、橘の姿を認めて驚いたように目を見開く。
「……お前は、西山だよな? それとも――“涼上”って呼んだ方がいいのか?」
橘は探るように声を掛けた。
「な、なんでお前がそれを……?」
「お前を止めに来たんだ、西山。
見ろよ、この状況……もう個人の恨みだなんてレベルじゃないだろ。」
「橘ッ! これはお前の問題じゃねぇ! どけッ!」
怒号と共に歩み寄る西山。
だが橘は一歩も退かず、真正面からその視線を受け止めた。
「……聞いてくれ。お前が嶋田を憎む理由なんて、数えきれないほどあるのはわかってる。
俺には説教する資格なんてない。でも……それでも謝りたかったんだ。」
橘の言葉に、西山の足がわずかに止まる。
「……謝る? 一体、何の話だ。」
「俺たち、別に仲が良かったわけじゃない。お互いのことだってよく知らなかった。
……でももし、俺の言葉や態度が誤解を生んで、お前を追い詰めたのなら謝る。
助けを求めてたのに気づけなかったのなら謝る。
お前がこんなふうになったのが少しでも俺のせいなら……本当に、悪かった。」
「……橘。今さらそんなこと言っても遅ぇよ。
それに、これはお前とは関係ねぇんだ。」
「でもな……このままでいいのか?
昔、お前が俺を救ってくれた。今度は俺の番だ。
西山――もうやめよう。こんなやり方、誰も幸せにならない。」
橘の声は震えていたが、その瞳はまっすぐだった。
だが西山は冷たく吐き捨てる。
「“西山”なんてもういねぇ!どけ!
これが最後の警告だ――次は、本気でぶっ飛ばすぞ!」
西山は怒りに満ちた声を張り上げ、両の拳を握りしめる。
「……そうか。悪いな。」
橘はゆっくりと腰のホルスターからエネルギーピストルを抜き、カチリと安全装置を外した。
「俺にも……もう、引けねぇ理由があるんだ。」
橘は銃を両手で構え、西山をまっすぐに見据えた。
「上等だ……!」
西山は獣のように突進してきた。
橘は後退しながら照準を合わせ、エネルギーピストルを連射する。
オレンジ色の弾丸が次々と命中し、確かな痛覚とともに西山の動きが一瞬鈍る。
この銃には、彼の能力を一時的に抑制する効果があるらしい。
だが西山は超人的な速度で弾丸の一部をかわし、片腕を盾のように変形させて防御態勢を取った。
距離が一気に詰まる。
西山が大きく手を伸ばし、橘を捕まえようとした瞬間――
橘は身を沈め、左腕でその腕を弾きながら下から撃ち上げるように引き金を引いた。
連続する光弾が西山の胴を撃ち抜き、彼の動きが一瞬止まる。
西山は呻き声を上げて数歩後退した。
エネルギー弾の効果で能力の制御が乱れ、肉体への打撃が通りやすくなる。
橘はその隙を逃さず、左拳を思い切り叩き込む――が、西山は即座に盾化した腕で受け止めた。
拳と装甲がぶつかり合い、甲高い金属音が響く。
西山はもう片方の腕を巨大なハンマー状に変形させ、横薙ぎに振り抜く。
橘は左腕で盾を押さえたまま、体を左へずらして回転。
回避の動きの中で右手の銃を左手に持ち替え、反撃の構えを取った。
橘は素早く西山の右側の死角を狙い、至近距離から数発を撃ち込む。
そのまま回転の勢いを利用し、肘を叩きつけるように頭部を打った。
「ぐっ……!」
西山が一瞬たじろぐが、すぐに怒りのまま反撃。
巨大なハンマーを反動で振り戻し、橘を直撃させる。
橘は両腕で防御したが、衝撃に耐えきれず屋台の残骸へと吹き飛ばされた。
痛みをこらえながらも、橘はすぐに体勢を立て直す。
距離が開いた隙に銃を構え、再び連射。
西山は盾で防ぎながら、再度地面を踏み砕く勢いで突進してくる。
橘は低く身をかがめ、壊れた屋台の残骸を盾代わりにする。
西山がそれを吹き飛ばそうと突進してきた瞬間――
橘は反対にその台に飛び乗り、反動を使って跳び上がる。
空中で連射を浴びせながら西山に組みつき、全身の力で締め上げる。
まるで蜘蛛のように身体を絡め、勢いのまま地面へ叩きつけた。
見事な一撃ではあったが、橘の腰に鋭い痛みが走る。
「……っ! マジかよ……!」
体が一瞬止まった隙を逃さず、西山が橘を片腕で掴み上げ、そのまま地面へ叩きつけた。
頭はなんとか守ったものの、衝撃で肺の中の空気が一気に吐き出され、血が口から溢れる。
続けざまに西山は橘の銃を持つ手を掴み、力任せにねじ上げる。
「バキッ!」という嫌な音と共に、橘の手首が悲鳴を上げた。
銃は地面に落ち、転がる。
「うああああっ!!」
橘の叫び声が響く。
西山はそのまま彼の体を掴み、力任せに横へと投げ飛ばした。
橘の体は壊れた屋台の残骸へ突っ込み、瓦礫と共に転がった。
西山は落ちた銃を拾い上げ、片手で無造作に握り潰した。
金属が悲鳴を上げるような音を立てて砕け散る。
地面に倒れ込み、もう動けそうにない橘を一瞥するが――
彼は何も言わず、踵を返した。
「ま、待て……」
背後からかすれた声が聞こえ、西山は振り返る。
そこには、血まみれで地面に這いつくばりながらも、必死に立ち上がろうとする橘の姿があった。
その様子に、西山の眉がわずかに歪む。
「なんでそこまで足掻く?
まさか、俺に勝てると思ってんのか?
それとも――まだ、俺が言うことを聞くとでも思ってるのか?」
「お、俺は……ただ……もうやめてほしいだけで……」
途切れ途切れの言葉。
それを聞いた西山は、再び怒りに駆られて拳を振り上げた。
「黙れッ!!」
鈍い音と共に、橘の体が再び地面に叩きつけられる。
視界が滲み、意識が遠のいていく。
「偉そうに説教すんな! お前に俺の何がわかる!
俺はもう――人を殺したんだぞ!
お前の仲間も、何の罪もねぇ奴らも!
そんな俺が……どうやって戻れるってんだ!!」
怒鳴りながら吐き捨てるように言い、背を向ける西山。
その背後から、微かに震える声が聞こえた。
「……俺も……人を殺したことがあるんだよ……西山……」
その言葉を聞いた瞬間、西山の足が止まった。
彼はゆっくりと振り返る。
地面に倒れたままの橘が、血にまみれた顔を上げようとしていた。
「俺は……子どもを殺した……ヒーローを……殺したんだ……」
橘の目に涙が滲み、声が掠れながらも、必死にその言葉を吐き出した。
「凛を……ミャウリンを……俺が……殺した……」
ご閲覧ありがとうございました!いかがでしたでしょうか?
ついに西山を止めるために動き出した橘でしたが、やはり圧倒的な力の前に敗北……。
しかしその最期に、まさかの衝撃的な秘密を口にする――!?
次回、第8話ではついに橘の過去が明かされます。
彼に何が起きたのか。悲劇はどのようにして始まったのか。
そして、まだ勝機は残されているのか──?
ぜひ次回もお楽しみに!
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