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第6話-久しぶりだな

みなさん、お待たせしました!

第6話、公開です!(思ったより早く仕上がりました笑)


前回、橘たちはついに「西山=涼上」だと気づき、

そして涼上も学校へ現れ、ポリス様と正面から対峙することに――。


今回描くのは、二人の“過去”と“再会”の物語です。

およそ十年前――

「ドンッ!」という音とともに、教室の中で一人の男子が壁際まで吹き飛ばされた。

そのまま尻もちをついて、そばにあった雑物を巻き込むように倒れ込む。

体中のあざと汚れた制服が、彼の惨めさを一層際立たせていた。

「おい、どうしたんだよ涼上? もう立ち上がらねぇのか?

 お前の大好きなヒーロー、ポリス様だったら今頃もう立ってんだろ? ははっ、マジ笑える!」

「ウケるわ。ほんとにヒーローのファンとかいるんだな。キモすぎ。」

「はは、こいつの情けねぇツラ、動画に撮っとけ。」

数人の男女が、涼上という名の男子を囲んでいた。

先頭に立つのは、背の高い男。手には木製のバットを持ち、

他の数人もその後ろで笑いながら煽り立てている。

殴る、蹴る、嘲る──そしてスマホを向ける。

教師のいない教室の中で、誰も止めようとしない。

他の生徒たちはただ黙って机に向かい、スマホをいじり続けていた。

まるで何も見なかったかのように。

状況は最悪だった。

それでも、涼上は怯える様子を見せなかった。

教室の他の生徒たちを一瞥し、次に自分を囲む連中へと視線を向ける。

無表情のまま、ゆっくりと立ち上がり──初めてその名を呼ぶ。

「嶋田。ポリス様はな、お前みたいに群れて弱い者をいじめるようなやつとは違う。

 その時点で、お前はもう負けてるんだよ。」

「はぁ? 何様のつもりだよ。ヒーロー気取りか?

 ヒーローになりてぇなら、まずチームプレーでも覚えてこいよ、この役立たずが!」

嶋田がバットを振り上げた。

涼上は咄嗟に両腕で防ごうとするが、力の差は歴然だった。

嶋田の一撃は重く、さらにそのまま蹴りを叩き込まれる。

「ぐっ……!」

腹を押さえ、涼上は再び床に倒れ込む。

鈍い痛みが全身を這い回った。

「そういやよ、涼上。俺が“弱い奴しか殴らねぇ”とか思ってんのか?

 三年のあの先輩、覚えてっか? 一年のとき毎日怒鳴ってきたあのクソ野郎。

 あいつ、この前裏路地で見かけたから、ムカついてボコってやったんだよ。

 そしたら二度と絡んでこなくなった。……感謝しろよ? な?

 “ありがとう”って言ってみろよ。」

嶋田はしゃがみ込み、バットの先で涼上の頬を突く。

「それ、あんたが先にあの先輩の彼女に手出したからだろ……このクソが……!」

「おっと、そういうこと言うなよ? ここ未成年多いんだぜ?

 それに、あれは向こうから誘ってきたんだよ。

 まぁ、今思えば大して可愛くもなかったけどな……ベッドの上じゃ結構エロかったけど?

 どうだ涼上、俺のスマホに動画あるかもな。見てみるか? お前まだ童貞だろ?

 “本物のセックス”ってのを教えてやろうか?」

嶋田はバットの先を涼上の口元に突きつけるようにして、嘲るように笑う。

だが、涼上は顔色一つ変えず、そのバットを手で払いのけた。

「いらねぇよ。お前のちっせぇチンコなんか、興味ねぇ。」

「……テメェ、今なんつった!?」

嶋田の顔が一瞬で真っ赤になる。

怒りに任せて、再びバットを振り上げた──。

「やめなさいッ!」

教室の扉が勢いよく開かれ、赤茶色のショートヘアの女子が声を張り上げた。

どうやら隣のクラスの生徒らしい。

「チッ……田中かよ。いちいち邪魔すんなって。

 今、部のゴミを教育してんだよ。」

「それ、監督に報告してもいいの?

 あんたらの記録、全部マネージャーの私が握ってるの忘れた?」

「チッ……わーったよ。つまんねぇ女。」

嶋田は肩をすくめ、涼上の前から離れた。

チャイムが鳴り、教室のざわめきが少しずつ遠ざかっていく。

嶋田たちも帰り支度を始めた。

「そうだ。今夜さ、俺らで心霊スポット行くんだわ。

 マジで事件があった場所らしいぜ。田中も来るか?」

嶋田がポケットに手を突っ込みながら軽く言う。

田中は即座に顔をしかめた。

「は? なんで私が? そんなとこ行ってどうすんのよ。」

「決まってんだろ。ネタが撮れりゃバズる。バズれば金になる。

 そういうの分かんねぇ? 運が良きゃ買い手がついて一発当てられるんだぜ。」

金の話になると、嶋田たちは一気にテンションが上がった。

「……はぁ? あんたら、本当に行く気なの? 何かあったらどうすんの。」

「俺? ははっ、田中、お前まだそんなの信じてんのかよ。

 因果応報とか、そういうのマジでねぇから。

 ま、後で場所送っとくわ。気が向いたら来いよ。

 あ、そうだ、涼上。お前も来るか? “ヒーロー志望”ならちょうどいいじゃん。

 俺らに何かあったら助けてくれよ? はははっ。」

そう言って、嶋田たちは笑いながら教室を後にした。

他の生徒がみんな出ていき、教室には二人きりが残った。

田中は涼上のそばに寄り、心配そうに覗き込む。

「……涼上、大丈夫?」

「……あぁ、大丈夫。ありがとう、田中さん。」

涼上はゆっくりと立ち上がり、服についた埃を軽く払った。

「まったく……嶋田のやつ、本当にどうしようもないね。

 あとでこっちから言っとく。」

「ありがとう。でも……あいつの言うこと、全部が間違いってわけでもないんだ。

 試合の大事な場面で、俺がミスして負けた。

 みんなの努力を無駄にしたのは、俺なんだ。」

涼上は小さく俯いた。

「もう……そういうの、関係ないでしょ。

 試合といじめは別問題。終わったことなんだから、いつまでも気にしないの。」

田中はカバンから救急箱を取り出し、中からガーゼを探し出した。

「……いっそ、部活やめたほうがいいのかもな。

 俺、運動神経ないし。」

「そんなこと言わないで。野球、好きなんでしょ?」

「うーん……まぁ、別に“好き”ってほどでもないけど。」

「え? じゃあなんで入ったの?

 ……ほら、じっとして。貼るね。」

他らはそんな話をしながら、田中が背伸びして涼上の頬にガーゼを貼った。

涼上は、顔をまともに見られず視線を逸らす。

「……あ、ありがとう。えっと……その、俺……」

涼上がちらりと田中を見た瞬間、視線がぶつかる。

心配そうに微笑むその顔を見た途端、顔が熱くなり、慌ててそっぽを向いた。

「……ただ、なんとなく。運動部ってどんな感じなのか、ちょっと興味あっただけ。」

そう言って、涼上は少し距離をとりながら自分の荷物をまとめ始める。

そのとき、田中は彼のカバンについたキーホルダーに気づいた。

「え? それ、ポリス様のキーホルダー? 好きなの?」

「お、おう。田中さんも知ってるのか?」

「まぁね。今ってヒーロー多いもん。

 ポリス様に、ハズマット、プレイデッド、ジャングル、

 最近デビューしたお嬢もいるし。

 もしあの人たちがいなかったら、地球なんてとっくに宇宙人に乗っ取られてたでしょ。」

「ポリス様は……たぶん最強じゃない。

 でも、あの人は“普通の人でもヒーローになれる”って証明したんだ。

 俺も、そんなふうになりたいって思ってる。

 ……でもまぁ、嶋田の言う通り、まずは練習して足引っ張らないようにしないとな、はは……。」

涼上は苦笑しながら、自分をからかうように言った。

「そうそう! やめないで続けなって。練習すればきっと上手くなるよ。

 次に殴られたとき、反撃できるかもね、はは。」

田中は冗談めかして、けれど優しく笑った。

「……わかったよ。頑張る。」

涼上は照れくさそうに笑う。

そのとき、田中のスマホが小さく鳴った。

「はぁ……嶋田、ほんとに場所送ってきたし。バカじゃないの。」

「ま、まさか行くつもりじゃ……?」

「正直、行きたくないけど……。

 でも、何かあったら困るし、様子くらいは見ておこうかなって。」

「えっ? 本気で行くの? 危なくない?」

涼上は心配そうに声を上げた。

「そんな危ないとこ行くほどバカじゃないでしょ。

 大丈夫、大ごとにはならないって。」

田中は軽く言うが、涼上の顔からは不安が消えなかった。

「……じゃ、じゃあ……俺も行く!」

少しの沈黙のあと、涼上は急に声を張った。

「えっ? なんで? 急にどうしたの?」

「そ、その……人が多いほうが、安心かなって……たぶん……。」

自分でも何を言っているのか分からなくなり、声がだんだん小さくなっていく。

涼上はうつむき、耳まで赤くなった。

「い、いいけど……本当に来るの?」

田中がもう一度確認すると、涼上は顔を上げて、今度はしっかりと言った。

「あぁ、俺も行く。……いいだろ?」

彼は田中の目を見つめながら、震える声を押し殺すように言った。

「はは、いいよ。……じゃ、私このあと用あるから。バイバイ。夜にね~。」

「……じゃあな。」

田中は手を振って教室を出ていった。

一人残された涼上は荷物をまとめながら、どこか楽しそうに呟く。

「クソくらえだ、嶋田。田中と一緒に行きたいだけだっての。

 ……♪ I wanna know know know know what is love~」

口ずさみながらカバンを背負い、涼上は教室を後にした。

──あの夜が、自分たちの運命を変えることになるとも知らずに。

廃棄されたUFO施設の中に、突然けたたましい警報音が鳴り響いた。

警告ランプが赤く点滅し、金属の壁が低く唸る。

その場にいた数人は、恐怖に顔を引きつらせた。

「な、なにこれ!? どうなってんの!?」

「やばくね!? 早く出たほうがいいんじゃ……!」

だが、機械の唸りは一層激しくなり、

計器が次々と壊れ、火花が散り始める。

次の瞬間、轟音とともに爆発が起こった。

「うわあああッ! た、助けてぇぇっ!」

「し、嶋田! 涼上! 誰でもいい、助けて──!」

必死に助けを求める仲間たち。

だが嶋田は、恐怖に突き動かされるように背を向け、出口へ走り出した。

「ま、待て! 嶋田! みんなを置いて逃げる気か!? やめろよ!」

「ご、ごめん……ごめんッ……助けてくれぇ!」

嶋田の叫びが遠ざかっていく。

それでも涼上は、恐怖に震える体を必死に押さえつけ、

爆炎の中へと足を踏み出した。

「俺は……逃げない。ポリス様だったら、絶対に逃げない……!」

涼上はもう一度、炎の中に飛び込んだ。

しかし──誰一人、救い出すことはできなかった。

「……田中……」

焼け焦げた空気の中で、倒れた仲間たちを見つめる。

目の前がかすみ、意識が遠のいていった。

──だが、涼上は再び目を開けた。

視界に映る世界は、もう見覚えのあるものではなかった。

友たちは死に、

目を覚ますまでのあいだに、何年もの時が過ぎていた。

そして、自分の体にも──説明できない“変化”が起きていた。

まるで、運命が悪質な冗談を仕掛けてきたかのように。

「──先日、連合政府およびDSAなど各機関の合同による

 “第二代ポリス様選抜プロジェクト”の結果が発表されました。

 皆さまにご紹介いたします、新たなポリス様──嶋田悠馬氏です!」

「……俺、昔からポリス様に憧れてたんです。

 目の前の人を救えなかったとき、自分がどれほど無力かを思い知りました……。」

「……は? 何だよこれ……俺、頭おかしくなったのか……?」

涼上は目を疑った。

画面の中に映っているのは、かつて自分を殴り、踏みにじった男──

今や“新たなポリス様”と呼ばれる存在だった。

自分がなりたかった“あの象徴”そのものに。

「……ありえねぇ。何かの間違いだ……!

 嶋田が、ポリス様だって? ふざけんな……!

 あいつが、どの口でそんなこと言えるんだよ!」

怒りと疑念が渦を巻き、涼上は公的機関やメディアに通報を試みた。

「……はあ? いじめの件? そんな昔の話、今さら調べろって?

 証拠でもあるんですか?」

「は? 正気ですか? 今ポリス様の人気どれだけあると思ってるんです?

 会社が炎上してまでそんな記事出すわけないでしょ。

 それに、あなた誰? ただのアンチならお引き取りください。」

案の定、すべて門前払いだった。

「……もう“ヒーロー様”だもんな、あいつ。連絡先もねぇ。

 はぁ……もう、いいか……。」

絶望と虚しさに沈みかけたそのとき──

一人の男が、静かに声をかけてきた。

「初めまして。久世と申します。

 あなたも“ヒーロー”に復讐したいとか。……興味ありませんか? 一緒にやるの。」

「……結構です。放っておいてください。」

「それでいいんですか? 何もなかったふりして、生きていくつもりですか?」

その一言に、涼上の足が止まった。

「……どうすればいい。」

「俺の狙いは、DSAが持つある“機密”の奪取です。

 ただ、俺一人では手が届かない。

 そこで──あなたに“別の身分”を用意します。

 偽の経歴を作り、DSAの内部へ。

 そうすれば、あなたの“目的”にも近づけるはずです。

 ……どうします?」

こうして、涼上は“西山”になった。

──そして任務の最中、西山は“人を殺した”。

「……関係ない人まで殺して、これに意味があるのか……。」

「……でも、今やめたら、全部が無駄になる。」

「嶋田の本性を知ってるのは、俺だけだ。」

「俺は悪くない……悪くなんか、ない……。」

文化祭の朝。

西山は一人で、とある場所に立っていた。

何度もため息をつき、手の中のスマホを見つめる。

──迷い続けた末に、彼はある人物へ電話をかけた。

「……橘さんは、“もう起きてしまったこと”って、

 変えられると思いますか……?」

静かな声。

その裏には、何かにすがるような震えがあった。

電話の向こうで、一瞬の沈黙。

そして橘が、淡々と答える。

『……そうだな。やっぱり、変えられないと思う。

 人がやってしまったことは消えないし、

 いなくなった人は……もう戻ってこない。』

その言葉を聞いた西山は、しばらく何も言えなかった。

風が吹き抜け、木の葉が墓碑の上をかすめていく。

やがて彼は小さく息を吐き、

目の前の墓石──そこに刻まれた“田中”の名前を見つめた。

「……いえ。橘さんの言う通りだと思います。

 なんとなく、分かりました。

 ……俺、どうすればいいのか。」

通話が切れ、無音の中で画面が暗転する。

西山はその場を背に歩き出した。

あの日と同じ場所へ、そして──終わりの始まりへ。

========================================


「ドンッ!」という轟音とともに、ポリス様は教室の壁に叩きつけられた。

その衝撃で、机や椅子が次々と宙を舞い、教室は一瞬でめちゃくちゃになる。

「す、涼上……ご、ごめん……俺は……」

ポリス様の表情は苦痛に歪んでいた。

何か言おうとしているようだったが、この状況でどんな言葉を選べばいいのか、本人にも分からないようだった。

「黙れよ! 今さら何言っても遅ぇんだよ!」

完全な姿へと変貌し、ポリス様よりもひと回り大きくなった涼上は、

近くにあった机や椅子を無造作に掴み、そのままポリス様めがけて投げつけた。

ポリス様は咄嗟に横へ転がり、飛んでくる机を避ける。

だがその瞬間、涼上の両腕が棘付きのハンマーの形へと変化し、

彼は地を蹴って一直線に飛びかかってきた。

ポリス様は慌ててシールドを展開し、正面から受け止めようとする。

しかし、涼上の一撃は想像を超える重さで、いくら頑丈な盾でも押し負けそうになる。

涼上はハンマーへと変わった両手で、何度も何度もシールドを叩きつけ、

ポリス様は防御に徹するしかなく、反撃の隙をまったく見いだせなかった。

「どうしたよ、嶋田! 昔、俺を殴ってたときは、もっと楽しそうだったじゃねぇか!」

怒りに任せて殴りつけながら、涼上は嘲るように叫んだ。

その言葉に、ポリス様の動きが一瞬鈍る。

その隙を逃さず、涼上は横から渾身の一撃を叩き込み、

ポリス様の手にしていた盾を弾き飛ばした。

さらにもう一撃――。

涼上の腕が唸りを上げ、ポリス様の体を地面に叩きつける。

ポリス様は苦痛に顔を歪めながら、必死に身体を起こそうとするが、

涼上はすぐにその身体を大きな手で掴み上げ、

片腕だけで軽々と持ち上げてしまった。

「どうした、嶋田! 昔みたいに、俺と本気でやり合ってみろよ!

この瞬間を、どれだけ待ってたと思ってんだ!」

涼上は片腕でポリス様の身体を掴むと、そのまま木製の机へと叩きつけた。

机は鈍い音を立てて真っ二つに割れ、ポリス様の口から苦痛の叫びが漏れる。

だがその隙に、彼は涼上の手を振りほどき、ふらつきながらも立ち上がった。

息を荒げ、傷だらけの身体を支えながらも――

それでもポリス様の目には、戦う覚悟よりも迷いの色が浮かんでいた。

「涼上……俺は……わからないんだ……」

「うるせぇ! いつまでウジウジしてんだよ!」

涼上は怒鳴り返すと同時に突進し、勢いよく蹴りを叩き込む。

そのまま怒涛の連撃を浴びせると、ポリス様は咄嗟に近くの机や椅子を持ち上げて防ごうとした。

だが――そんなもの、涼上にとっては紙同然だった。

彼の拳が振り下ろされるたび、木製の机も金属の椅子も粉々に砕け散っていく。

破壊の音が響く中、涼上は怒声を上げながら叫んだ。

「お前なんか、ポリス様を崇拝したこともねぇだろ! 崇拝してたのは、この俺だ!」

「お前は俺たちを救おうとすらしなかった! あのとき動いたのは、俺だった!」

涼上の右腕が再び形を変え、今度は金属バットのような姿になる。

そのまま勢いよく振り抜かれ、ポリス様は両腕で必死に防御するが、

すぐさま放たれた蹴りが彼の腹部にめり込み、体ごと壁へ叩きつけられた。

「てめぇは俺たちを見殺しにしたんだ!

それなのに、よくも平然とヒーローなんか気取ってられるな!」

涼上は怒号とともに突進し、ポリス様の身体を掴んで抱え上げると、

そのまま壁へと叩きつけ――二人まとめて壁をぶち破った。

瓦礫を巻き上げながら、二人は教室の外へ転がり出る。

ポリス様の身体はすでに満身創痍。

立ち上がろうとした瞬間、涼上の手が彼の首を掴み上げ、再び宙へと持ち上げた。

ポリス様は苦しげにもがくが、涼上の目を見た瞬間――

その手足から力が抜け落ち、まるで心を縛られたように動けなくなってしまう。

「お前なんかが――ポリス様を名乗る資格なんてねぇ!!」

涼上の怒号が教室に響き渡ると同時に、

彼は掴んでいたポリス様の身体を三階の高さから地面へと投げ捨てた。

轟音とともにポリス様は地面に叩きつけられ、

その衝撃は校舎中に響き渡り、周囲の生徒たちの視線を一気に集めた。

「……っ、あぁああッ!」

ポリス様が呻き声を上げる。

だが涼上は一切のためらいもなく、同じ三階からそのまま飛び降りる。

ドンッ――。

彼の着地と同時に、悲鳴があがった。

見物していた生徒や来場者たちは、パニックになり、我先にと逃げ惑う。

押し合い、転び、泣き叫びながら、

中にはスマホを構えてこの惨状を撮る者さえいた。

ほんの数分前まで賑わっていた文化祭の会場は、

今や恐怖と混乱の渦に変わり果てていた。

涼上は地面に倒れ、血を吐きながらも立ち上がろうとするポリス様を見下ろす。

「いいザマだな。――さぁ、後輩たちに見せてやれよ。」

その声には怒りと侮蔑、そして長年積もり続けた怨嗟が滲んでいた。

「これがお前の、本当の姿だってな。」

=============================================


その頃、DSA本部もまた、騒然としていた。

橘たちは外から響く喧騒に気づき、慌てて窓の外を覗き込む。

そこでは――数人の男女が、街中で暴れ回っていた。

車を横転させ、屋台を壊し、人々が悲鳴を上げながら逃げ惑う。

ここ最近、DSAの周囲には見物人が集まっていたが、

その群衆が恐怖で雪崩のように押し寄せ、混乱は瞬く間に広がっていった。

「な、なんだあれ……!? あの人、素手で車を持ち上げてないか?」

「おい、あいつ……バスより速く走ってるぞ!?」

橘と高瀬は、ただならぬ光景に息を呑む。

そのとき、高瀬が何かに気づいたように顔を強張らせ、

次の瞬間、勢いよく窓枠を拳で叩きつけた。

「……くそっ!」

突然の行動に周囲の職員たちが驚き、慌てて彼女に問いかける。

「どうしたんだ、高瀬さん!?」

「……あの反応、間違いない。奴ら――もう血清を打ってる……」

「なっ……!?」

橘たちは息を呑み、目を見開く。

「じゃあ……つまり……」

「そうだ……私たちは、遅れたんだ。敵が……先に動いた……」

橘の膝が、力なく床につく。

窓の外に広がる惨状を、彼はただ呆然と見つめるしかなかった。

「……まただ……また、俺は何も救えなかった……」

彼の唇が震え、声にならない後悔が漏れる。

「全部……俺のせいだ……また、誰かが俺のせいで死ぬんだ……」


ご閲覧ありがとうございます!

皆さんはどう感じましたか?


今回は、自分なりのやり方で“始まりの物語”を描いてみました。

あのときの感情、少しでも伝わっていたら嬉しいです。


物語に戻りますが――

涼上はすでに暴走を始め、ポリス様との戦いは激しさを増していきます。

一方その頃、橘たちは血清の奪取に失敗。

敵はついに街で破壊行為を始めてしまいました。


「すべては自分のせいだ」と思い込む橘は、再び立ち上がることができるのか?


物語はいよいよ最終局面へ――。

続きもぜひお楽しみに!


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