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第0話 凶悪宇宙人襲来!

春の陽光が降り注ぐ

のどかな日曜日。


平和な風景の中に、

春千恵(はる・ちえ)はいた。


栃木県郊外にある

ゆったり遊園地タンポポパークは、

まだ工事の槌音が響く開発途上。

閉鎖された遊具の周りには

黄色い花が咲き乱れ、

微かに甘い香りを漂わせている。


「はい、現在大人お一人、

子供二人で二千円になりまーす」


にこやかな笑顔でチケットを渡す

彼女は、どこにでもいる

普通のアルバイト店員に見える。


だが、腰に巻いたエプロンの下には、

とてつもない秘密が隠されているのだ。


その時、彼女の耳に

微かな粒子音が届いた。

それは、秘密組織テラスの

エージェントからのSOS、

レイドコールだ。


表情を微かに引き締めながらも、

千恵は客に丁寧にお釣りを渡し、

奥のプレハブ小屋へと

小走りで向かった。


小屋の奥にある秘密のエレベーターで

地下に到着。

そこにはメカメカしい空間が

広がっている。

無数のモニターが点滅し、

複雑な配線が壁を這う。

ここは、タンポポパークの

地下深くに隠された、

コスモ秘密基地の一角だった。


中央のメインモニターには、

赤い警告ランプが点滅し、

緊迫した音声が流れている。

「こちらテラスエージェント7。

杉並区内にて、未確認の

エネルギー反応を確認。

凶悪宇宙人が住民に紛れて

活動している可能性が高いです。

至急、支援を要請します!」


モニターを見つめる

春古寿文(はる・こすも)

通称コスモ博士は、

白衣の裾を翻し、鋭い眼光で

娘に頷いた。

「千恵、出動だ」

「はい、父上!」

千恵の声には、普段の穏やかさとは

違う、凛とした強さが宿る。

彼女は迷うことなく、

基地の中央に設置された

円形のプラットフォームへと進んだ。


「ワン!」

千恵が小さく叫ぶと同時に、

頭上に不思議な紋様を描く雲が出現。

それは、異空間とこの世界を繋ぐ、

次元雲。

淡い光を放ちながら、渦巻いている。


「ツー!」

次の瞬間、次元雲から眩い雷光が

奔った。稲妻が千恵の体を包み込み、

彼女の姿は光の中でメカ忍者へと

変身していく。


「スリー!」

雷光が収まると同時に、

千恵は両膝を折り、地面に手を付いた。

体中に力が漲っていくのがわかる。

それは、父であるコスモ博士と、

彼と半共存する宇宙人トルックから

与えられた、ニンボーグの力。


「ゴー!」

最後の号令と共に、メカ忍者と化した

千恵は次元雲に向かって跳躍した。

彼女の体は光の粒子となり、

渦の中へと吸い込まれていく。


残されたのは、微かに立ち込める

オゾンの匂いだけだった。


その頃、杉並区の住宅街の一角では、

一人の男が苛立ちを隠せずにいた。

丸みを帯びた体躯に、

どこか間の抜けた顔。

その男こそ、凶悪宇宙人ゴロス。


彼は人間社会に紛れ込み、

小さな悪事を繰り返していた。

ゴミの不法投棄、行列への割り込み、

そして今朝は、近所のパン屋から

ホカホカのパンを無理矢理

奪い取ったばかりだ。

「クククッ、人間どもは愚かで

油断しきっている。

この星の支配も楽勝だな」

裏路地をつたい歩きながら

そう呟いた瞬間、

背後から鋭い気配を感じた。


振り返ると、そこに立っていたのは、

全身が灰色の装甲に包まれた人影。

特殊繊維の頭髪とシノビティアラ、

手には機械刀が握られている。

「貴様……まさか、テラスの!」

ゴロスの顔から、

のんびりとした表情は消え失せ、

代わりに焦りの色が浮かび上がった。


「悪事を働く宇宙人、見つけた!」

メカ忍者さんの声は、

機械音のような響きを持ちながらも、

確かに千恵のものだった。

装甲の隙間からは、

彼女の強い意志が感じられる。


ゴロスは観念したように両手を上げた。

「ま、待て! 私は何も悪いことは……」

しかし、彼の手には先程強奪した

パンが握られている。


「パン屋のおじいさん、

怪我させたよね!」

右腕の籠手が勢いよく射出され、

ゴロスの腹に炸裂した。

「問答無用、ロケットチョップ!」

衝撃で大きくのけ反るゴロス。

「ぐえっ!」

「大人しく投降しなさい!」

メカ忍者さんがメカ忍者刀を構えると、

ゴロスの目は恐怖に染まった。

「うわあああああ!」

メリメリっと身体が3倍に膨れ上がる。

普段はわりと大人しい宇宙人だが、

正体がバレた時のパニックは

尋常ではないのだ。

突如、目に狂気の光が走る。

「ンゴロシタルビームじゃ!!」

ゴロスの両手から

眩い光が放たれた。


破壊的なエネルギーの奔流が、

正面の家の屋根を吹き飛ばす。

「うわっ、なんて威力!」

メカ忍者さんは驚愕する。

このままでは、街が破壊されてしまう。

「しかたない!

あなたを脅威と認定します!」

「エナジービット!」

彼女の頭部にある

髪の毛のような特殊繊維から、

無数の光弾が射出。

エナジービットは雨のように

ゴロスに降り注ぎ、動きを牽制する。


その隙に、メカ忍者さんは

一気に距離を詰めた。

「これで終わりね!」

メカ忍者刀が、

胸元に突き刺さる寸前――。


「んがああっっ!!」

ゴロスは最後の力を振り絞り、

再びンゴロシタルビームを放った。

至近距離からの攻撃に、

メカ忍者さんは

回避することができない!


その時、彼女の脳裏に父の声が響いた。

「千恵! ニンボーグの力、

信じるんだ!」


刹那、メカ忍者さんの

額のシノビティアラが淡い光を放った。

装甲が変形し、背中に

翼のようなブースターが出現する。

それは、彼女がまだ完全に

使いこなせていない、

ニンボーグの隠された力だった。


加速したメカ忍者さんは、

間一髪でビームを回避し、

そのままの勢いでゴロスを斬り裂いた。


「ば、馬鹿な……」

断末魔の叫びと共に、

ゴロスの巨体が崩れ落ちる。


街には、静寂が戻った。


夕焼け空の下、メカ忍者さんは

静かにその場に佇んでいた。

(倒さねば、街は破壊されていた)


手には、まだ微かに震える

メカ忍者刀が握られている。

「…任務達成ね」

安堵の息をつく彼女の耳に、

再びレイドコールの音が響く。


「メカ忍者さん、お疲れ様です。

新たなエネルギー反応を確認しました。

場所は…」


新たな敵の出現を告げる通信に、

メカ忍者さんは静かに頷いた。


「了解。ただちに現場へ向かいます!」


彼女の瞳には、夕焼けの色と、

未来への決意が宿っていた。


たたかえ!メカ忍者さん。

人々の平和を守るために、

彼女の戦いはまだ始まったばかりだ。



たたかえ!メカ忍者さん

【第0話・凶悪宇宙人襲来!】終。

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