第五話・〖帰り道で君と話す〗
(見理君は何で勉強も運動も何でそんなにできるの?私だってこんなに頑張って努力しているのに全然追い付けないよっ!)
ふと小学生低学年の時の出来事を思い出したんだ。幼馴染みの利絵ちゃんとの何気無い会話‥‥‥勉強も運動もそこそこ(・・・・)できるだけの僕。
他の家族はもっと優秀だしね。兄や妹達はもっと優れているんだ。
こんな平凡な僕が凄いわけ無いんだよ。利絵ちゃん‥‥‥‥‥。
「天誅です‥‥‥‥」
ポフッ!
利絵ちゃんの右手チョップが僕の頭に優しく当たる。
「あっ!痛てて‥‥‥‥なにするんだい?利絵ちゃん」
「フーン!二人っきりの時は言い方元に戻すんだね。見理君‥‥‥‥ボーッとしてっ!また、女の子の事でも考えていたの?‥‥‥‥その真理ちゃんの事とか?」
「へ?何で有栖川さん?違うよ。さっきまで利絵ちゃんとの昔のやり取りを思い出してたんだ。小学生の時の思い出をね」
「‥‥‥‥‥‥ふぇ?わ、私との小学生の時の思い出ぇ?‥‥‥そ、そそ、それってもしかして?誓いのキ‥‥‥‥」
利絵ちゃんは誓いのキまで言った後、何故かフリーズしてしまった。
「誓いの木?何それ?新種の木か何かかな?」
「‥‥‥‥この朴念仁!!天誅します!!天誅!!」
「痛い!痛いよ!何で頭をポコポコ叩くのさ。君は?」
「教えません!全く!昔から本当に鈍い人だよね?見理君はっ!私、以外の子の時は直ぐに察するくせに‥‥‥‥もうっ!」
利絵ちゃんはそう言うと全然痛くないポコポコ叩きを止めた。
「学校に入る時は猫を被って文学少女を装ってるのに何で僕と二人っきりの時は暴力少女に早変わりするのかな?君は‥‥‥‥」
「見理君が鈍感だからでしょう!!こっちの気も知らないで、目を離すと直ぐに可愛い子とお友達になってっ!何処が良いのよ?!こんな女の子みたいな顔があぁぁ!!!」
利絵ちゃんはそう叫ぶと僕の両頬を掴んで伸ばし始めた。
「ふぃふい?!(痛い!)ふぃふぁいよフィエファン(痛いよ!利絵ちゃん!)」
「そう!それが私の心の痛みだよ!見理君。私の心は繊細なんだから。私の気持ちに早く気づきなさい!!『芸術科の王子様』!!!」
そう言ってやっと手を離してくれた。まぁ、利絵ちゃんは昔から力が弱い(自覚していない)ので、実際は全然痛く無かった。
「『芸術科の王子様』?何それ?」
「見理君の事だよ。見理君が去年の夏にあった全国絵画コンテストで佳作を取った〖貴女と夏を〗を知ってる女子生徒が沙原高校のSNSに投稿して凄いバズってるんだよ。それでその絵を描いた見理君の事を『芸術科の王子様』って呼ぶ女の子達がいるんだって。良かったね。王子様で」
「‥‥‥‥あの趣味で描いた絵が?あれは物置に閉まった筈だし‥‥‥‥本気で描いた方は利絵ちゃんにあげた筈だし。夢か愛のどっちかが勝手に持ち出してコンテストに出したたな!‥‥‥たくっ!あのイタズラ姉妹は」
「あの絵。見理君が出したんじゃ無いの?‥‥‥‥夢ちゃんと愛ちゃんが勝手にコンテストにだしちゃったんだ。しかもそれが佳作って‥‥‥‥本当にこのハイスペック男は‥‥‥‥最高だわ (ボソッ)」
「何が最高なの?利絵ちゃん。そして、何、ニヤついてんの?」
「なっ?!何で最後の言葉をちゃんと聞き取ってるの。そこは普通、聴こえないのがお約束でしょう!もうっ!」
「あぁ、また、怒り始めた。本当に喜怒哀楽が激しいね。自称文学少女さんは‥‥‥‥ハハハ。だから一緒に居て楽しんだね(ボソッ)」
「ムカーッ!てっ‥‥‥‥最後の方、何て言ったの?見理君」
「‥‥‥‥‥教えないよ。僕の大切な幼馴染みさん」
そして、僕と彼女は同じ帰路へと歩く。
他愛の些細な会話。
僕と二人っきりの時だけ見せてくれる君の喜怒哀楽は何て心地良いんだろう。
君の話をマイペースに聞いて会話をする。
それだけで僕は心が満たされていくんだよ。
こんな僕とずっと仲良くしてくれてありがとう。
感謝しています。僕の大切な幼馴染み。
南本 利絵さん‥‥‥‥‥。




