第四十四話 〖私の幼馴染み〗
〖沙原高校中庭〗
私は九条 皐月。現在、幼馴染みである京を探して中庭を散歩中なんだけどさぁ‥‥何でコイツは服をはだけさせて倒れているんだろう?
「‥‥何してんの? 京」
「皐月か‥‥朝から死闘だったぜ。服を着たゴリ‥‥瓜田が俺の事をだな‥‥」
「良く分かんないわ。うん、とりあえず‥‥朝パン食べる? 京の分、買っといてあげたんだけど」
「あぁ‥‥食べる。朝から走り回って腹減ってんだ」
「何で朝から必死に走り回る出来事があるのよ‥‥」
「全ては見理と瓜田のせいなんだ。奴等に仕組まれた罠だったんだ。昨日の映画は‥‥」
「あー、男だらけのラブロマンス映画見てきたんだっけ? 楽しかった?」
「地獄だった。俺は昨日、地獄を味わったんだ。皐月」
「ほうほう。そうかぁ~、地獄を味わったか。ならば、我が癒してしんぜよう~!幼馴染みだけに」
私はそう言うと、京の頭を撫でてやった。
「‥‥何で俺の頭を撫でるんだ?」
「んー? 何かアンタが荒れてるからね。癒してやってんの‥‥良くなった? 心の方は?」
「‥‥あぁ、良くなったわ。かなりな‥‥悪い。色々取り乱しては」
「ほーん。それは良かった良かった。ならば服の乱れを整えて、立ち上がりたまえよ。そろそろ、他の生徒達も登校してくる時間なんだからねえ」
私は京の右腕掴んで持ち上げる。数年前よりも太くなった京の右腕を、コイツと初めて会ってからどのくらいの時間が経ったんだろうか?
小さい頃から幼馴染みとして過ごして来たけど、コイツは昔から何も変わっていないわね。
「‥‥何でニヤニヤしてるんだ? 皐月。俺の顔に何か付いてるのか? 」
「ニヤニヤ何かして無いわよ。それより早く教室行くよ。幼馴染みの京君」
「何で昔の呼び方で呼ぶんだよ?」
「んー?今はそういう気分‥‥見たいな」
「‥‥何だ?そりゃあ」
「だからそんな気分なのよ‥‥今はね」
他愛もない会話。他愛もないやり取り。これが私と京のいつもの日常。
見理や利絵見たいに花がある幼馴染みコンビでもない、ただの一般生徒が私と京。
これはただの二人の日常の一コマの物語。




