第三十九話 〖水夏さんはお年頃〗
ボクはさっき見理からの電話で有頂天になっていたんだ。
「もしもし、水夏? 明日は利絵ちゃんもいなし、予定も無いから映画でも行かない?無理なら良いんだけどさぁ」
「行くっ! 行くよっ! 明日だよね? 暇、暇だから一緒に行く!楽しみにしてるよ!」
「本当に? それは良かった。後‥‥」
「うん! じゃあ、ボクは明日の準備をしないといけないから、バイバイ! 見理!」
ピッ!
「‥‥‥‥ウヒィ‥‥見理からのデートのお誘いだぁ!! な、何を着てこうかな‥‥正直、ボクの秘密がもう、見理にバレてるなら、いっそ遠出様のこっちの服を‥‥いやいや。何があるか分からないし‥‥下着だけ、ティーにしとこうかな?‥‥二人っきりの映画デートなんだら。何が起こるか分からないんだしね!! うん!分からないよおぉ!」
この時のボクは浮かれていて、見理からの電話の最後の言葉までは聴いていなかったんだ。
〖次の日・となり街の映画館〗
「ウホッ♡! 良い男♡!」
ウホッ?
「ギャアアア!! 何で瓜田がここに居るんだよ! 騙したな! 見理! ギャアアア!」
ギャアアア!?
「ハァ、ハァ、ハァ、水夏殿は今日も可愛いな!」
ハァ、ハァ?
「おはよう。水夏、今日は男五人で遊べて楽しみだね‥‥‥」
この状況を引き起こした犯人が爽やか笑顔でボクに挨拶してきた。
ガシッ!
「ん?ガシッ!?」
「‥‥‥ちょっと来いやぁぁ!! 嘘つき!!」
〖少し離れた場所〗
ボクは怒りの波動をこの男に何の配慮もせずぶつけることにした。
「何かなあれは?!見理」
「何が?」
「な、何がじゃないよ! 何で、瓜田さんに京君に‥‥ボクの苦手な棗君まで映画館に来てるのかな?」
「何って‥‥面白そうだから」
コ、コイツ! 何、澄ました顔で、さも当然みたいな風に言ってるの?まさか、ボクが前にやっちゃった事へのちょっとした抱腹?いや、あれは本当にボクが悪いんだけど。悪いんだけど!‥‥今日はそうじゃないでしょう!!
「ボ、ボクと二人っきりのデー‥‥映画鑑賞じゃあなかったの?あんなゴリゴリ二人と京君を連れてきてさぁ!」
「いや、電話で話した時、説明してたら、いきなり水夏が電話を切ったんじゃないか」
「へ? 電話の時?‥‥嘘、説明してたの?」
「‥‥うん」
‥‥そういえば、あの時は見理と二人っきりのデートだと思って、浮かれていたんだ。
「そ、そうなんだ。へー、あの時に言ってたんだ。それは、見理の話を最後まで聞いていなかったボクが悪いね。ごめん」
「‥‥‥」
謝るボクを見理は何故か、ジーッと見ている。
「‥‥何?何かボクの顔に付いてる?」
「‥‥何か今日の水夏‥‥胸部‥‥大きくない?何で?」
「いや、何でって‥‥見理は気づいてたんじゃないの?」
「‥‥何に?」
‥‥コイツは?! 私の秘密を知ってるくせに、知らない振りをしているの?
そういえば、昔から見理はボクに対しては少し、Sっけがあった。
ボクの秘密を知って‥‥それを良い事にボクの事をこれからは弄ぶ気なんだね?見理!
(水夏、正体をばらされたくなかったら、僕の命令には絶対したがいな)
(け、見理!だ、駄目だよ!こ、こんな事はぁ!駄目!許して!)
(黙りな!そうだな先ずは‥‥脱いでもらおうか?色々とね)
(うぅ‥‥こんな事、絶対に許さないよ。ボクの身体を好きにできると思わないで!)
(良いから脱ぎな。可愛い子ちゃん)
(‥‥あい)
それで色々仕込まれて最後には‥‥
(け、見理!!ボク!ボクは!!君のおぉ!!)
(何?言ってみてよ!大声で利絵ちゃんが居るこの目の前でさぁ!)
(や、やめてぇ!二人共!)
(は、はい!ボクは見理のモノですうぅ!見理の大切なあれをボクのな‥‥)
ポコリッ!
「何?変顔してるの水夏?」
「へ?ボク、今、変な顔してた」
「うん。凄いキモかったよ」
「キ、キモい?」
「それよりも早く皆の所に戻ろう。このままだと京が瓜田さんに近くの結婚式場に連れてかれちゃうからね」
「‥‥いや、そんな漫画みたいな事、起きるわけ‥‥」
「ウホッ! 何だかあっちは話し込んでるみたいだし、先に今日の私達のメインイベント。結婚式体験を済ませに行きましょうか?あ・な・た♡」
「ギャアアア!! 誰が貴方だ? 俺は今日、ただ、見理に映画に誘われただけだっつうの!離せ、離しやがれ!何でそれが瓜田と結婚式体験しなきゃならないんだ!!覚えてろよ!見理!!」
「‥‥起きるね。確実に」
「でしょう!それに水夏には今日、棗と仲良くなってもらいたくてさぁ。ちゃんと越えをかけといたんだ。感謝してね」
「‥‥‥見理。君?!」
こ、この男は‥‥やっぱりまだ少し、ボクにやり返すつもりなんだ。こないだの仕返しを、ボクが巨漢の男の子が苦手なのを知っているくせに!!
この水夏特効方のドS男はあぁ!!
「今から始まる映画が楽しみだね。水夏」
見理はそう言って、ボクに向かってはにかんだ。そして、ボクは少しイラっとしたんだ。




