第三十二話 〖あの娘の本性は多分、腹黒〗
〖天瀬 水夏が住んでいる賃貸マンション〗
「ママ~!朝練に行ってきます!」
「ちょっと!待ちなさい?体操着忘れてるわよ!水夏!!」
「へ?あっ!ごめん。ごめん」
「‥‥アンタ。停学になってから何か変よ。停学の理由を聞いた時は色々と言っちゃたけどね。もう過ぎた事なんだから、忘れなさい。正道 見理君だって、許してくれたんでしょう?」
「ヒェ?け、見理がどうかしたの?ママ」
「‥‥何で顔が一瞬で赤くなってるのよ。この子は‥‥まぁ、良いわ。学校に着くまで事故らないように気を付けなさいよ。行ってらっしゃい!」
「‥‥あい」
‥‥‥昨日の見理とのやり取りが脳内でフラッシュバックする。
触れられて、自覚させられたある感情。
‥‥この感情は良くない。今後の沙原高校での学校生活で必ず良くない方向に舵を切るよ。
「ハァ~、何でこんな感覚に‥‥ボクは‥‥ボクはあぁぁ!!」
パシッ!
「何を一人で百面相してるのよ。水夏」
「雪‥‥何でボクの頭を叩くのさぁ」
「アナタがボーッとしてるからよ。アホの子」
「誰がアホの子だよ!誰が」
「そういえば昨日は正道君の家に直接謝りにいたのね。何でも土下座までしたんですって?凄いわね」
‥‥は?土下座?何?それ?
「‥‥いや、謝りに行ったのは、そうなんだけど土下座何てしてないよ」
「え?だって利絵さんが私や真理さんや皐月さんに、そうやって連絡入れたって言ってたんだけど?」
「‥‥はい?利絵ちゃんが?連絡?‥‥‥何それ?ボク、全然知らないんだけど」
‥‥見理は昔から結構、口が固い。個人のやり取りを第三者に勝手に話したりなんかしない筈。
とういう事は‥‥見理の家にボクが行った事を広めた犯人は、見理の隣にいつも入る。ストーカー巨乳幼馴染み娘の利絵ちゃんって事になるの?
「ちょっと。水夏‥‥何?ボーッとしてるの?朝から大丈夫?」
家のママと同じ事を言っているよ。
「だ、大丈夫だよ‥‥そ、それに見理とは、また前みたいに親友の関係に‥‥」
そんな会話を雪としていると、十字路で同じ沙原高校の制服をした同級生達と出くわした。
「あっ!おはよう。橘さんに水夏~。今日も早いね?部活かな?」
「エヘヘ!! 見理くーん! あっお早う! 雪ちゃん。水夏君」
「お早う。利絵さん。正道君」
雪は賑やかに笑って、挨拶し。
「‥‥お早う。利絵ちゃん‥‥見理」
ボクはしどろもどろになりながら、挨拶したんだ。‥‥朝から見理にくっ付け過ぎじゃないかな?利絵ちゃんのヤツ。
「いやー、昨日は見理君と水夏君が仲直りしたって聴いたんだぁ。本当に良かったよー!良かった!良かった!」
「いや、利絵ちゃんには何も教えてないんだけどね。何故か、勝手に知っていたよね?利絵ちゃん。まさか僕の部屋に盗聴機か何か仕掛けてた?」
「う、ううん。私、何も仕掛けてないよ」(棒読み)
「「「うわぁ‥‥嘘っぽい」」」
ボク、見理、雪は揃ってそう言った。しかも、何て感情が乗っていない声なんだろう。さも、当たり前の様に嘘をついているよ。この子は‥‥
「それより、見理君!早く、学校に行かないと遅刻するよ!急ごう!急ごう!」
「ちょっ!何でそんな急いでるの?いつもならもっとゆっくり歩くのに‥‥」
利絵ちゃんはそう言うと見理の手を握って走り出そうとする。
「‥‥朝からグイグイ行くわね。利絵さんは、あれを毎日喰らってて、何も進展がないんなら脈無しなんじゃないかしら?」
雪が二人の方を見て、そんな事を言い始めた。
「脈無し?‥‥あの二人は幼馴染みなんでしょう?何で脈無しなの?」
「いや、だって考えてもみなさい。幼少の頃からお隣同士で、お互いの裏も表も知り尽くしているのよ。それで十数年。過ごして恋人にもなっていないなら‥‥利絵さんの方が好き好きオーラ全開でも、当の正道君は無反応なんだから、そうとしか思えないじゃない」
「‥‥見理と利絵さんが脈‥‥無し?」
「えぇ、それに彼。正道君って、結構モテるのよね。この間なんて他校の女子生徒の友達に正道君を紹介してほしいとか頼まれたしね」
「嘘?‥‥見理がモテる‥‥の?」
「‥‥水夏が何であんな事件を起こしたのかは、もう終わった事だから詳しくは聞かないけど。アナタが本気でやるなら、私は親友として応援してあげるわ。多分、私は正道君にはあの腹黒幼馴染みさんよりも、水夏の方がお似合いだと勝手に思っているしね」
「うぅ‥‥雪が何の事を言っているのか分からないけど。そうか‥‥雪はボクの味方で居てくれるんだ。そうなんだ‥‥嬉しいなぁ」
ボクはそう言うと嬉しくて笑顔になった。
「‥‥監視カメラに盗聴機‥‥とんでもないモンスターね。そして、正道君はそれに対抗して、強化ガラスに鉄格子って、何のバトルをしてるのよ。あの二人は‥‥」
雪は自身のスマホを見ながら、呆れ顔になる。
「‥‥何でそんなに詳しく知ってるの?」
「私には情報屋がいるのよ。利絵さんが暴走しない様に監視する為のね」
「情報屋?‥‥何それ?」
「今度、二人きりの時でも話すわ。それよりもほら、水夏もあの二人の間に交ざってくる!‥‥朝から腹黒幼馴染みさんが勝ち誇った顔でこっちを見てるのよ。対抗してあげなくちゃっ!」
バシッと!ボクは雪に背中を叩かれた。
「う、うん。分かった!行ってくる!盗聴機幼馴染みさんと戦って来るよ。雪!!」
ボクはそう言って、見理と利絵さんの会話に割って入って行った。




