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第三十一話 〖その子の心は敏感に〗


〖暗い部屋の中〗


「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥何なのこれ?こんなの‥‥こんな感覚は‥‥初めてだ」


 心が気づ付いていた。


「それもこれも‥‥アイツのせいじゃないか!」


 誰かのせいにしないと、今の自分が崩壊しそうなくらい苦しかったんだ。



◇◇◇◇◇


 カチッ‥‥カチッ‥‥カチッ‥‥と静かな部屋に時計の針が進む音が聴こえて来る。


「‥‥あ、あの‥‥突然、ボクを呼び出しって‥‥何なのかな?見理‥‥」


 彼は目の前の勉強椅子に座って、ボクの顔をジーッと見つめていた。


「いや‥‥あれから数日経っても、なかなか学校に来ていないって、橘さんから聞いたから。心配して、君が今、どんな状態に入るのか確かめたかったんだ」


 少し、ボクを警戒する様な。でも、本心では凄く心配する様な声音で語りかけて来る。


「そ、そうなんだ。君に悪い事をした、このボクを心配してくれるなんて、相変わらず優しいんだね。見理は‥‥流石、元親友」


 ボクはそう言うと彼の顔から目を背け、の窓際の方を見つめた‥‥‥何あれ?何で?幾つも施錠の鍵がかけられてれていて、強化ガラスに‥‥鉄格子?いったいどんな猛獣からの侵入に備えているの?


「‥‥今も親友だよね?水夏」


「うぅ‥‥そ、そうだね。今も親友だ。君とは親友だよ。見理‥‥うん‥‥ニャハハハ」


ボクは作り笑顔をして取り繕う。その場しのぎの作り笑顔で。


「‥‥そういう他人行儀な反応は止めてほしいんだ。君とはまた仲良くしていきたいんだよ。水夏」


 見理はそう言って、ボクに近づいてくる。彼の幼馴染みを利用して、彼の弱点を探ろうとして、逆にやり返され。逆に停学に追い込まれて生徒会の候補生から外されたボクの‥‥右手を優しく触れてくる。


「な、何?何で?ボクは君に嫌われる事を‥‥人として、絶対にやってはいけない事をしたんだよ?なのに何で、こんなボクと仲良くしたいのさ?」


ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!っと心臓の音が激しくなってくるのが身体の内側から伝わってくる。


 これは見理に対しての恐怖?畏怖?苦手意識?‥‥どれも当てはまらない。不思議な感情。


「‥‥右手の血管、脈打速さが上がってるね?何?緊張してる?水夏」


「つっ?!誰が?何で見理に手を握られたくらいで緊張するんだよっ!もう!‥‥あっ!ごめん‥‥」


「ハハハ。良いね、その反応。何にも取り繕わない。そんな反応をしてほしかったんだ」


 見理はそう言って、ボクに微笑んだ。


 ドクンッ!


 ‥‥まただ。また‥‥心臓が跳ね上がる。


「‥‥ボクをからかっているの?そんな事して遊んで楽しい?‥‥いや、ごめん。ボクにそんな事を言う資格何て無かったね」


「えいっ!」


「わぁ?!な、何?いきなり?!」


 見理はボクの身体を強引に引っ張ると彼の部屋のベッドの上に座り。座った膝の上にボクを座らせた。


「い、いきなり、な‥‥な、な、な‥‥何するんだい?見理?!何でボクを君の膝の上、何かに乗せるの?」


 動揺する。心臓が更にバクバク、バクバクと鼓動が速く鳴っていく。


「‥‥水夏ってさあ。男の子なのに華奢(きゃしゃ)だよね?」


「‥‥何?それがどうかした?ボクは痩型だから、しょうがないでしょう!」


 見理の顔が近い。良い匂いがする。顔が整っていて、勝手に見ちゃう‥‥心臓がバクバク行っちゃうよぉ~!


「顔も小柄だし‥‥これは香水かい?‥‥髪も手入れが行き届いて綺麗だね」


「ニャア‥‥こ、このボクが綺麗?」


「うん。髪の毛がね」


「‥‥このボクが綺麗?見理が褒めてくれた?あの怖かった印象の見理が?ほめ‥‥褒め‥‥褒めてぇ‥‥」


「水夏?」


 吊り橋効果というものがある。窮地にたったされた男女が心臓の急激な高鳴り方を恋心と勘違いする。事が‥‥ボクの場合は多分あの時だった。


 空き教室に呼び出された時、電話越しに聴こえて来た、見理のあの冷たくて容赦がない声音を聴いた時、ボクの中に何かが目覚めたんだと思う。


「‥‥水夏。大丈夫かい?声が‥‥少し変だよ?」


 け、見理が心配してくれてる‥‥わ、悪い事をしたのはこのボクで‥‥でも見理は許してくれて‥‥ボ、ボクをひ、膝の上に乗せぇ!!優しく語り書けてくれてる!!


 プツンッ!‥‥‥


 ボクの心の中の情緒の糸が切れて、遂にその本心が(あらわ)になる。


「水夏?大丈夫?熱でもある?」


 見理がボクの額に手を置こうとしくる。


「‥‥ニャアアア!!ら、らいじょうぶ!大丈夫だから!!だから、少し離れて!見理!」


 ボクはそう言うと、見理の膝の上から急いで離れた。


「‥‥そう」


「そうだよ!それと監視カメラとか、利絵ちゃんに変な事して、ごめん。見理に嫌な思いさせちゃって、本当にごめんなさい!!だから、もう‥‥今日は帰らせてえぇ!!反省するから!!もう、変な態度も取らないから!今はボクの家に帰らせて!ごめんなさい!!」


 情緒の糸が切れたボクは、涙めになりながら見理に懇願する。


「‥‥そう。なら今日はもう帰って良いよ。水夏‥‥また、明日、学校でね」


「わ、分かった!!また、明日。学校でぇ!!お邪魔しました!!」


 ガチャ‥‥バタバタ!!


「‥‥暫くこれでやり返させてもらおうかな。水夏‥‥」



〖暗い水夏の部屋〗


「ハァ..‥ハァ‥‥ハァ‥‥見理‥‥見理‥‥もう、この気持ちは‥‥あれだよね‥‥くぅー‥‥明日からの学校生活。どうやって暮らしていけば良いんだよ!!!」


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