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魔法少女バスターズ&フレンジャーズ  作者: 橋比呂コー
File8.車輪の魔法少女
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ターボババアVS六花&詩亜

「許さない!」

 業を煮やしたのか、ターボババアが車へと体当たりをする。すかさず六花が発砲した。ターボババアに睨まれるが、銃口を外すことはしない。

 ターボババアは再度六花へと攻撃を開始する。テミスからの一撃が後を引いているものの、動けないほどではない。反撃の隙を作ろうと、六花はすばしっこく動き回る。


「ちょこざいなネズミが」

 悪態をつくテミスだったが、のど元に倶利伽羅丸が突き出された。

「あんたの相手は私がしてあげるわ。六花、悪いけどあなたにターボババアは任せるわ」

「任されたッス」

 ターボババアの突進を避けつつも敬礼を施す六花。一方、宣戦布告されたテミスは臆するどころか喜々と口角をあげた。

「ベル様からは刃を向けられるまでは手を出すなと厳命されていた。だが、これは我に歯向かうという意思で相違ないな」

 明確に敵意を向けられているのに恍惚としている。あまりの異様さに刹那は倶利伽羅丸を手放しそうになった。


 ターボババアの攻撃パターンは単調であった。馬鹿の一つ覚えのような突進。なので、目が慣れてくれば回避するのは難しくはない。問題なのは、被弾した場合深刻なダメージが予測されるということだ。攻撃力に限れば、これまでに対峙した魔法少女の中でもトップクラスであろう。なにせ、暴走する乗用車そのものと戦っているようなものだからである。


 威嚇射撃で車輪を狙っても効果が薄いのは実証済みだ。なので、ターゲットとすべきは奴の上半身。

 刹那の助力が期待できなくなった以上、信じられるのは己の力量のみ。実のところ、魔法少女を単独で撃破しようとするのはこれが初めてであった。刹那のせいで感覚がマヒしつつあるが、本来魔法少女は集団で確実に仕留めるのがセオリー。気軽に一騎討を挑めるような相手ではない。


「私を先輩の腰巾着だと思ってるようッスが、甘く見ない方がいいッスよ」

 己を鼓舞するように見えを切る。ターボババアはそんなこと知ったことではないとばかりに体当たりを繰り返す。六花の残り体力に余力はなく、戦闘場所はターボババアに有利な遮蔽物のない一般道。六花が少しでも気を抜いた瞬間に勝負は決まってしまうだろう。


 せっかく先輩から任されたのに、無駄死にだけは避けたい。六花は発砲してけん制するも、あっさりと回避されてしまう。頭に血が上って闇雲に突進しているのではなく、きちんと反撃に対応できているあたり厄介なことこの上ない。


 そして、遂に限界が訪れる。猛進を躱そうとして左に重心をかけすぎたのだ。どうにか踏ん張って転倒は免れたのだが、高速接近してくる相手に無防備な姿を晒すことになる。

「許さない!」

 これでトドメだとでも言いたいのであろうか。心なしか今までよりも高速でターボババアが突っ込んでくる。立ち上がるのにやっとな六花に回避の術はない。よもや、こんなところで隊員生命を絶たれるのか。観念して目をつむる。


「この魔法少女が!」

 威勢のいい掛け声とともに、数発の銃声が響く。それらは正確にターボババアの背を撃ちぬいていた。一体何事か。六花の理解が追いつかないうちに、半壊していた車のドアが蹴り飛ばされた。


 ライフル銃を片手に獰猛な雄たけびをあげていたのは詩亜だった。確かに、念のために車内にライフル銃を備蓄していた。けれども、彼女には「決して使うな」と厳命しておいたのだ。

 もちろん、ただの命令であり拘束力はない。だが、この状況で武器を手にした詩亜が介入した場合、戦況がどう転ぶか。それこそ神のみぞ知るであった。


「許さない!」

 ターボババアが標的を変える。狙撃された故に詩亜を狙うというのはロジックとしては間違ってはいない。だが、彼女の立ち位置がよくなかった。背後には原田が乗っている乗用車がある。単純に回避して車に突っ込まれたら元も子もない。


 それを織り込み済というわけではなかろうが、詩亜は暴挙に出る。突進してくるターボババアへと銃撃を浴びせたのだ。普通、時速五十キロオーバーで突っ込んでくる物体があったら回避しようとするだろう。いくら遠距離攻撃可能な武器を所持しているとはいえ、真正面から立ち向かうなど正気の沙汰ではない。


 常軌を逸した行動に、若干ではあるがターボババアの挙動が緩む。そこに容赦なく弾丸の雨あられが降り注ぐ。一直線に進むしかない以上、攻撃最中が最大の隙となるのは皮肉ではあった。

 迎撃され、どんどんと減速していく。だが、勢いを殺しきるには至らなかった。怪訝な顔をした詩亜。次の瞬間には跳ね飛ばされ、尻餅をついた。


 いくら減速させられたとはいえ、自転車で全力疾走したぐらいの勢いはある。それで真正面からぶつけられたらひとたまりもない。

 そのはずであったが、数秒後に詩亜は尻をさすりながら立ち上がっていた。

「あれ、私、どうして」

 完全に無傷というわけではなく、衝突の際に打撲を負ったらしい。おまけに武器を放して暴走状態が解除されていた。


「詩亜、助けに来てくれたんスか」

「分かりません。でも、そうかもしれない、です。みなさんが戦ってるのを見て、私にもできることは、ないかって」

 事の顛末は大体想像できた。助太刀を思い立った詩亜は車内のライフル銃を手にする。しかし、己を制御できずに暴走したということだろう。暴走が強制解除させられたのはむしろ僥倖だった。


 捨て身の特攻で痛み分けとなったわけだが、未だ油断は許されなかった。なぜなら、詩亜が飛び出したことで致命的なミスを犯してしまっていたからだ。

 ターボババアは六花と詩亜を睨むが、直後に別の地点へと視線を移した。その挙動に感づき、六花たちも相手の狙いを探った。そして、己の迂闊さを呪った。

 ターボババアははっきりと、半壊している車を見据えていたのだ。


 正確には、もはや籠城するには心元なくなった乗用車で縮こまる原田というべきか。奴の本来の相手は彼だ。ボディガードの役割を果たしていた詩亜が離脱してしまった今、完全に無防備になってしまっている。

「許さない!」

 六花と詩亜には一瞥もくれず、ターボババアは車へと突撃した。もちろん、原田に咄嗟に車から退避するなんて機転を期待できるわけはない。それどころか、明確な命の危機に微動だにできずにいる。


 彼を助けるのに一刻の猶予もない。六花は慌ててライフル銃を発砲する。ろくすっぽ狙いを定めずに撃ったのだ。誤爆してもおかしくはない。

 けれども、奇跡というべきか、銃弾はターボババアの肩をかすめた。鬱陶しそうに睨み返される。どうにか寸前で正面衝突は免れたようだ。


 とはいえ、これ以上戦闘を長引かせては六花たちに勝ち目はない。ライフル銃の残り弾数は数発といったところか。威嚇に使う余裕など残されていない。それに、ターボババアの機動力を考えると、原田の護衛に戻ることも困難だ。

 ならば、勝利の道は一つ。残された弾丸でターボババアの心臓を撃ちぬき、確実に仕留める。しかし、六花にはそれを成し遂げるだけの自信がなかった。刹那ならばあるいはと思ったが、彼女はテミスにかかりきりだ。


 ふと、真横で腰をさする相棒が視界に入る。彼女の実力は未知数だ。だが、暴走状態を鑑みると刹那に匹敵する力を内在していることは確かだ。これは危険な賭けになる。もし、六花の思惑が外れていたら、ターボババアか詩亜のどちらかによって殺される可能性が高い。でも、ターボババアを倒すにはこの方法しかない。

「詩亜、お願いがあるッス」

「な、なんですか」

 鬼気迫って懇願する六花に詩亜はうろたえる。六花は詩亜の手を握った。

「私を使ってほしいッス」

「ふぇぇ!?」

 詩亜から変な声が漏れた。

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