A班再編成
刹那たちが指令室で整列し、ややあって西代長官が姿を現した。「話って何かな」とマシュがそわそわしていたので、刹那は肘で小突いてやった。
わざわざ特別な話と断りを入れていたのだ。マシュでなくとも、一部でざわめきが生じている。それでも、西代長官が咳払いをすると一瞬で静まり返った。
「君たち隊員全員に集まってもらったのは、今後の活動に関わる重大な決定が為されたからだ。などともったいぶった話をすると余計な心配をかけるだろうから、端的に言っておこう。以前より、戦績により班編成を変更すると話していただろう。この度のデッドリーパー襲撃事件、および触手の魔法少女マシュのMSB加入を受け、新たに班員を編成し直すこととした」
それを聞いて再びざわめきだした。刹那たちの年頃の少女たちにとって、気心の知れた仲間と一緒に活動できるかどうかは割と重要な問題である。ましてや、マシュというイレギュラー中のイレギュラーが存在しているのだ。お上は如何なる判断を下したのか、固唾をのんで見守る。
「最初に編成方針について言っておくと、デッドリーパー以上の魔法少女の出現可能性を考慮し、A班の増強を重点としている。これは永藤隊員が先の事件で負傷し、長期入院を余儀なくされていることも考慮している」
真っ先に反応したのは佳苗だった。永藤が戦線離脱をしていることは言わずもがな。平素より、永藤と同じA班に所属したいと熱望していたのだ。
「それをふまえ、まずA班について。基本的には班員の移動はしない。残留と思ってくれて結構だ」
静寂が求められる場面だが、どうしても歓喜の声があがってしまう。ただ、刹那だけは特段反応することはなかった。むしろ、「基本的に」と妙なところを強調していたのが気にかかった。加えて、露骨にそわそわしているマシュが粗相をしないかと気が散って仕方ないのである。
「次にB班だが、こちらからは五名をA班に異動することとした。欠員については新たに採用した隊員で賄うこととする」
西代長官が手を叩くと、数名の隊員が緊張した面持ちで入室してきた。まだあか抜けない少女たちだ。自分にもあんな時期があったなと六花はノスタルジーに浸る。
ただ、六花のみならず刹那も新規隊員のうちの一人がやけに目についた。緊張しているにしても、他の隊員と比べて明らかに委縮している。猫背で、せわしなく目や首を動かしているのだ。ひときわ小柄な体格で、前髪で目が隠れがちになっている。隊服に着せられているという表現がこれほどなく似合ってしまっている少女だった。
「新規隊員については後程紹介するとして、A班へと異動となる隊員を発表する。名前を呼ばれた者は返事をするように。伊藤優里」
長官に呼ばれた長身の少女が大声で「はい」と返事をする。その後も滞りなく名前が呼ばれて行き、あっという間に最後の一人となった。
これまでの四人の中に六花や佳苗の名前はない。昇格できるかどうかは次の発表にかかっている。両手を固く組んで必死に祈る佳苗。六花も負けじと祈りを捧げていた。
「では、最後の一人だ」
ついにその時が訪れる。隊員一同が固唾を呑んで見守る中、西代長官はゆっくりと口を開いた。
「仁藤佳苗。以上の五人をA班へ異動とする」
「よし!!」
大声を張り上げる佳苗。あまりにも有頂天になりすぎて「気持ちは分からんでもないが、浮かれすぎるなよ」と長官から注意される始末だ。
そして、どや顔で六花を挑発している。一方で面白くないのは六花だ。佳苗ほどA班昇格に拘泥していなかったとはいえ、せっかくの刹那と一緒になれるチャンスを棒に振ったのは痛い。
「どんまい」
マシュが笑顔で肩を叩いてくる。六花としては複雑な気分だった。違う、そうじゃない。求めていた相手はちらりと一瞥をくれただけであった。彼女らしいと言えばらしいのだが、幾何の物足りなさを感じる。
おそらく、今回の会合における最大の目玉は終了。そう思われたのだが、西代長官は大きく手を叩いて静粛を求めた。
「本来なら新規隊員の自己紹介に移るところだが、実はもう一つ重要な発表がある」
意外な発言に、訪れた静寂は即座に破られた。さしもの刹那も「え」と口を滑らせる始末だ。班員の異動発表のほかに重大事など全く思いつかないのである。
「これについては魔法少女であるマシュ隊員の加入を受けてのことであるが、茶を濁すようなことを言っても詮方なしだからはっきり言おう。この度、新たにS班の発足が決定した」
本日一番のどよめきが巻き起こる。こればかりは致し方がない。まさか、新たに部隊が発足されるとは誰が予想できようか。




