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魔法少女バスターズ&フレンジャーズ  作者: 橋比呂コー
File6.手腕の魔法少女
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魔法少女ふたりでマジガル

今回、若干(?)私の趣味が入っています。

 昼下がりのビル街。逃げ惑う人々を異様な怪物が追い回していた。全身真っ黒で子供の落書きのような陳腐な怒り顔をしている。

「ワルイナー!」

 鳴き声とも掛け声ともつかぬ叫びとともに、口からビームを発射する。その直撃を受けた建造物がえぐれ、人々の悲鳴は加速するのだった。


「いいぞ、ワルイナー。もっと街を破壊しろ。そうすれば俺様のワルイコトエナジーがたまり、ダイアクトー様を復活させることができるのだ」

 大仰に宣言したのは、昭和時代でも目にできるか怪しい泥棒の格好をした男だった。巾着袋を背負い、風呂敷で顔を隠し、無精ひげを生やしている。その男の命令に合わせ、ワルイナーなる怪物は破壊工作を加速していく。


「そこまでッス、ドロドロボー」

 逃走を続ける人々の間を潜り抜け、二人の少女が勇み出た。一人は赤髪でアホ毛を揺らして威勢よく怪物を指差している。青髪のストレートロングの少女は落ち着き払ってもう一人の隣に並んだ。


「来やがったな、マジガル」

「あんたの思い通りにはさせないッスよ」

「これ以上街を破壊するのはやめなさい」

「うるさい! ワルイナー、あいつらをやっつけろ」

 ドロドロボーの命令を受け、ワルイナーは「ワルイナー」と鳴きつつ諸手を広げる。体格差は二倍以上。戦略的撤退を図っても文句は言えない相手だ。


 だが、少女たちは逃げなかった。二人の前にウサギだかハムスターだか形容しがたい妖精が出現する。

「エリカ、カレン、変身するんだ」

 両者は顔を見合わせるとペンダントを掲げる。

「マジカル、ミラクル、キラメキ、チェーンジ!」

 その掛け声に合わせ、眩い光が二人を包んだ。


 現実世界の時間にするなら数秒ほど。ではあるが、その間に目まぐるしい変化が生じていた。一言でいえば、人知を超えた速度で為される「お着がえ」である。

 学校の制服姿だったはずが、あっという間に赤と青のドレス姿へとチェンジする。赤のドレスを身にまとったエリカが一歩進み出た。


「燃えるレッドは情熱の証! レッドマジガル!」

 続いてカレンも髪をかきわける。

「爽やかブルーは知性の証! ブルーマジガル!」

 そして、二人そろって決めポーズを披露する。

「魔法少女! ふたりでマジガル!!」

 キラーンという効果音とともに、ハートやら星やらが飛び交う。負けじと怪物も「ワルイナー」と急襲する。


「ブルー、行くッスよ」

「任せて、レッド」

 体格差が縮まらない相手に二人は果敢に立ち向かっていく。今日もまた、異形の怪物から町の平和を守る一大決戦が始まるのだった。


「六花、ごはんよ。いつまでもテレビ見てないで食べちゃいなさい」

「ええー、今いいところッスよ。あとにするー」

「パパも待ってるんだから、早くしなさい。あと、マジガルのエリカちゃんの真似はやめなさいって言ってるでしょ」

「はーい」

 母親に叱られ、しぶしぶテレビから離れる。すると、六花の体が大きく傾いた。おかしい。遮蔽物もないのに転倒するわけがない。いや、これは立ち眩みか。訳の分からないまま意識が薄れていく。


「夢、ッスか」

 覚醒した時にはベッドから転げ落ち、床で大の字になっていた。パジャマは乱れ、青と白のストライプの下着が見え隠れしている。

 朝の七時を告げる目覚ましの音がけたたましく響いていた。鬱陶しそうにアラームを切る。寝相が悪いと一応自覚はしているものの、ベッドから落ちるのは久々だった。腰をさすりつつカーテンを開ける。眩い陽光とともに、鳥のさえずりが聞こえてきた。


 随分と懐かしい出来事を夢に見ていた気がする。幼稚園の頃だっただろうか。夢中になってみていた魔法少女アニメがあった。それは六花のバイブルといっても差し支えない作品だった。あの作品があるから、今の六花があるといっても過言ではない。


 寝ぼけ眼をこすりつつ、隊服へと着替える。髪型を整えようと櫛を探していたところ、とある物に手が当たった。

「今日も行ってくるッスよ」

 そう呼び掛けながら、位置がずれたそれを元に戻す。それは、子供のころにクレーンゲームで入手したアニメキャラのフィギュアだった。量産型の陳腐な代物ではあるが、六花にとっては今日一日を頑張ることができるご神体のようなものである。

 年季が入ってボロボロになったそれは、夢の中でワルイナーに果敢と立ち向かっていた赤髪の少女そのものだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  本筋じゃないんでしょうけど橋比呂さんらしいかっちりとした文章でド典型な女児アニメのワンシーンを精密に描写してるのにギャップを感じ、妙にツボりました。  そのようにしっかりとした描写だから…
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