第四章 青年期解決編 ⑭
_カウンセリングルーム
本来であれば、医師が診断結果や治療方針を患者やその家族に伝えるための部屋。警察が取調べをするという使われ方は想定されていない。
今日の取り調べは碓井刑事ではない。横にいた刑事たちに連れられて、そのまま行われた。
「あなたが沖田ネルを監禁していたのは五年と八カ月で間違いないですか。」
「はい。」
素直に答えた。
その瞬間刑事たちが安堵したような表情をした気がした。
「もう一度確認させてください。五年と八カ月監禁していたんですね。」
「はい。でも、気付いた時はそんな監禁しているというような状態ではありませんでしたけど。」
「と言いますと。」
「沖田さんは毎日、本を読んだり、テレビを見たり日永、自由に過ごしていました。情けない話、僕は僕で毎日仕事の愚痴とかいろいろ聞いてもらって、相談に乗ってもらったり、アドバイスをもらったりしていました。妹のような感じというと些か変ですけど、自分でも誘拐犯という認識がなくなってしまうような、どういう立ち位置なのかわからない生活でした。」
「気づいた時っていうのはいつですか。」
鬼気迫るというほどではないけど、身を乗り出して聞いてきた。
「一年とか二年とか、いつからということはないですけど。」
「正確には分からないのですか。一年か二年なのか。」
その表情から、これが重大な質問であるということは容易に想像がつく。でも、申し訳ないけどこんな不明確なことを明確に答えることはできない。
「いやー、一年も経ってないころだったかもしれません。」
首をかしげながら答えた。
刑事はみるみる悄然と項垂れた。
ノックが二回
刑事が応答した。
ドアが引かれ、さっき撮ってもらった(正確には撮ったのは別の技師だが)医師が入ってきた。
「よろしいですか。」
「もちろん。」
僕と刑事は対面に座っている。その横三角の位置になるように椅子を持ってきて、腰かけた。
「さっそくさっきの診断結果ですが、特に異常は見当たりませんでした。」
安心はしたが、正直当たり前だという気持ちの方が強い。
「ところで何の検査だったんですか。」
僕は昨日からのもやもやをやっと口にすることができた。
「えぇ、それがもう一つの我々が質問したかったことです。沖田さんはあなたを鉄パイプで殴ったと証言しているのですが、それは本当ですか。」
あの時のことか。それで、脳に異常がないかを検査してくれたのか。
「はい。確か、六月に入ったころか、そのくらいだったと思います。」
あのことを心配して、警察に検査を頼んでくれたのだとしたら、素直に沖田さんが殴ったと言うのは少し悪い気もする。でも、事実なのだからしょうがない。
刑事は顔を見合わせ、小声で何か話している。片方の刑事がスマートフォンを手に、部屋を出て行った。僕の健康を上に報告しに行ったのだろう。そんなことをのんきに考えていた。




