第四章 青年期解決編 ⑫
「屁理屈だ。なぜ、容疑者をかばう。」
「容疑者?それは私のことかしら。」
敢えて微笑んでみせた。もちろん逆上させるために。最初は私を被害者として扱おうとしていた。だから、矛先を私に向けさせることができれば、先生が容疑者で私が被疑者という十零の構図を傾けることができる。
「ふざけるな。佐藤俊夫に決まっているだろ。」
「かばうも何も、事実ですもの。」
刑事は分かりやすく歯を軋ませている。
もう一度、刑事の顔を見てはにかんだ。
「でも、それはお前の供述に過ぎない。」
「そうよ」
二人称が「お前」に変わっている。
「お前が監禁されていないという証拠はない。」
「その通りよ。先生が一年以上監禁したという証拠がなければ、私が同棲していないという証拠もないわ。」
現状まだ、合理的な疑いを超えていない。そういえば、家に来たときは令状を見せてもらっていない。本当に、話を聞きに来ただけだったのかもしれない。
「今、佐藤俊夫も隣で取調べを受けている。犯人の自供を得られればそれで終わりだ。」
なんて御しやすい刑事なのだろう。そして、心の中で密かにガッツポーズ。この発言を待っていた。
「でも、その証言大丈夫かしら。」
「何が大丈夫なんだ。」
「先生の衰弱した容姿、もう見ているでしょ。それに、監禁するだけじゃなくて、何回か頭を鉄パイプで殴ったもの。一応病院で検査してもらった方がいいと思うわ。」
殴ったのはあの時の一回。でも一回は何回かである。
「それは傷害の自供と受けとって構わないのか。」
物わかりのいい方の刑事が確かめた。
「そうよ。」
相変わらず物わかりが良くて助かる。
刑事が顔を見合わせている。センセーショナルな事件とはいえ、ただの監禁が監禁致傷罪に変わる。事件の扱いは当然こっちの方が大きい。
「いったん取調べは休憩だ。」
そう言い残して、二人とも部屋を出て行った。
捜査の目が私に向けばいい。それよりも、頭を殴ってしまったことがずっと気がかりだった。あざはなかったけど、頭に実際異常がないかはわからない。先生がちゃんと病院で診てもらえる。今日の成果としては上々だろう。




