第四章 青年期解決編 ⑪
「それで?」
どうつなげよう。
先生のところにかくまってもらっていた。
これは無理がある。家出にしろ、数日ならともかく六年というのは長すぎる。それに先生という立場でかくまって、放置し続けるというのはありえない。何より、先生は誘拐して監禁していたと証言するはず。この点の、証言の食い違いは苦しい。もし、精神的な影響により記憶などの信憑性が不確かというジャッジを取られたら、このあと何を言っても信用してもらえなくなる。だから、
先生に誘拐された。
ここは正直に答えなくてはならない。先生の動機を少しでも正義感・善意という方向に持っていく。心神喪失などを取られない限り、先生の実刑はほぼ確定事項だ。だから、刑をいかに軽くできるように持っていくか、とふつうは考える。
それで、先生に誘拐してもらいました。
くらいは言いたかった。でも、
「先生に誘拐されました。」
現実的妥当性を考えれば、やはり、こう言うしかない。
「やっぱり、佐藤俊夫が誘拐監禁していたんじゃないか。」
刑事はドヤ顔でそういった。
「そうよ。ただし、監禁していたのは最初の一年だけ。」
「それがどうした。結局一緒じゃ_」
食い気味で続けた。
「正確に伝えるわね。確かに先生は私を誘拐し、そして監禁したわ。最初の一年間はその状態が継続していた。でも、その後の四年と八カ月は同棲をしていたの。そして、今に至るまでの四カ月、今度は私が先生を監禁したの。」
「だから、誘拐した事実に変わりはないだろ。」
堂々巡りのような応酬に、刑事は痺れを切らし、声を荒らげた。
「時効、だな。」
横からもう一人の刑事が口をはさんだ。
「そうよ。」
「何を言っている。俺も最初にその線くらいは考えた。だが、誘拐の時効は十五年だっただろ。」
「いえ、十五年というのは身代金目的の誘拐の時であり、これが最も重く長いというだけです。単なる未成年者誘拐の場合の時効は五年です。確かに、宇都宮壮は身代金を要求しました。しかし、佐藤俊夫は身代金を要求していません。そういうことを言いたいんだな。」
最後に私の方を見た。
こっちの刑事は私の考えをわかってくれている。
「そうよ。一年で監禁は終了したの。ここが消滅時効の起算点。そこから五年経過しているのだから、時効成立よ。物わかりが良くて助かるわ。」
ただ、問題はやはり先生の証言。先生はきっと、五年八か月監禁していたと正直に答えるだろう。それでは、時効は成立しない。その齟齬をどうやって埋めていくか。大丈夫、出来ると自分に言い聞かせる。




