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誘拐から  作者: 高束奏多
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第四章 青年期解決編 ⑨

_取調室

あのあと警察によって三日ぶりに手錠を外されて、強引に連れ出された。この状況だから、丁重に扱ってもらえるというのは虫のいい期待だった。初めて乗った救急車には不安と同時に興味や高揚もあったけど、初めて乗るパトカーには一抹の興味すら持つ余裕はなかった。

僕の前には碓井刑事。この構図は六年前にもあった。その時は小学校の、確か相談室。碓井刑事はこの六年で出世し階級も上がったらしい。最初はそんな与太話もあったが、それは関係のないことだ。

当然今日のきっかけは三日前。

「はっきり言います。我々警察は佐藤先生が被害者などとは思っていません。あれも自作自演、あるいは沖田ネルにやらせたのだと考えています。」

まぁ常人の判断能力を備えていればそうなるだろう。

「二つ。一つ目に沖田ネルは六年前にすでに、誘拐されているかはともかく、失踪はしていました。にもかかわらず、佐藤先生はちゃんと出勤していました。沖田ネルが佐藤先生を監禁していたという道理は成り立ちません。二つ目に三日前のことです。あんな白昼堂々二人で出歩いておいて、「監禁されていました」などという話が通用すると思いますか。」

「思いません。でも、それなら後者の場合、僕が監禁している立場だったとしてもおかしくはありませんか。」

 自分で言っておいて、これが反論にすらなっていないことにもどかしくなる。立場がどうとかは関係ない。それでも、碓井刑事からのそれに対しての反駁はなかった。

 「つまり、容疑を否認する、そういうことか。」

 単刀直入だった。そして、本題。

 「いえっ_」

 言葉に詰まる。即座に否定したくせに後の言葉が見当たらない。言葉に対し思考が追い付いてこない。

 沖田さんにはすべてを正直に話すよう言われている。別にだからと言って、それに従う必要はない。でも、この状況で嘘を言っても言い逃れできるとは到底思えない。そんな、社会的コミュ力が僕にあるはずもない。そんなことはよく実感している。

 「すべてをお話しします。」

 それから洗いざらいすべてを話した。

僕が誘拐して、監禁したところからすべて。宇都宮先生とは無関係だということ。そして、監禁し返されたこと。

 最初に碓井刑事が言っていたことだが、やはり信じてもらえるとはどうやったって思えない。それでも、事実なのだから仕方がない。思った通り、碓井刑事はいぶかしげな顔をしている。

 すべてを話し終わり、一息ついた。沖田さんは何か考えていると言っていた。本当に考えていたかわからないし、それで判断に影響するかもわからない。考えただけでなく、こうして僕が洗いざらい話して楽になった今もそれを実行に移し、他の刑事と対話しているのだ。

 これに対し、罪悪感を抱くことのできない僕はクズなのだろうか。知ったことじゃないと切り捨ててもよいのか。もとは僕が蒔いた種とはいえ、今、沖田さんは僕への好意からやってくれている。だから、いいはずだ。助かろうと思って。いや、助かりはしない。普通に、刑は免れない。沖田さんの努力次第で変わるかもしれないというだけ。恩に着る必要もない。そう割り切る。

 ところで、沖田さんはどうしているだろうか。


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