第四章 青年期解決編 ③
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七月三日
「デートに行きましょう。」
それは突然の誘いだった。
「デートって。どういう意味だ。」
「そのままの意味よ。前にも言ったと思うけれど、私、先生のこと、好きなの。それに_」
「それに?」
「いえ、何でもないわ」
明らかに口を濁していたが、気にすることのほどでもないだろう。
「どこか行きたいところでもあるの。」
「そういうわけではないけど、たまには外食なんてどうかしら。ほら、最近先生あんまり食べないじゃない。」
「そうかなー。」
まぁ仕事も運動もしていないし、そうなのかもしれない。
「それじゃあ、行きましょう。準備してくるわね。」
「僕はどうすれば。」
「後で。」を
十五分ほどして、着替えをして戻ってきた。化粧をしているという様子はない。化粧した顔を見たことないから、道具自体持っていないのかもしれない。沖田さんなら必要ないのだろう。着替えだけで十五分というと長い気もする。好きという感情を差し引いても、何事も即決の沖田さんらしくはない。
「これ。」
服を投げられた。主語も動詞もないが、着替えろということらしい。
僕の横に座ると、たんたんと手錠を外してくれた。食事時やお風呂に入る時は右手だけ自由にしてくれる。両方とも手が空くのはいつ以来だろう。この両方の手錠が開いたら開放感があるのだろうかとか、自由になれるのかとか、いろいろ想像していたけど、実際そんなことはなく、なんとも思えなかった。ただ、身体的には少し楽というだけ。むしろ、また手錠をされ、この姿勢になるとわかっているのだから、外されない方が良かったかもしれない。一度楽な姿勢を知ってしまえば、慣れるまでまた、しんどい思いをしなくてはいけなくなる。
うれしいのかうれしくないのかよく分からないまま、服を手に取った。こんな服持っていただろうか。沖田さんのことだし、新調していたのかもしれない。
ズボンを脱いでから、沖田さんがまだいることに気づいた。僕が監禁している側の時はそのあたりの配慮をしていたけど、監禁されてからは普通に見られるようになった。もう、慣れたもので羞恥心はない。
「さっさとしなさい。早く行くわよ。」
沖田さんは僕に好意を持っているなどと、少しでも頭をよぎってしまったが、その不安は杞憂に終わった。沖田さんはいつも通り、ぶっきらぼうに僕を急かした。あげた腰は本当に重かった。




