第三章 青年期事件編 ⑭
***
三月三十日
「ちなみに、それぞれの今月の給料はどれくらいなの。」
「そうね。私は十五万くらいで、先生は二万くらい。そんなところね。」
呆然。
十二日から仕事を始めた。月給換算すると約一点五倍。沖田さんは普通に二十万は超えるじゃないですか。僕はその倍の時間働いて、休みも少ないのにたったの三万。パソコンの何かしらって、そんなに給料いいのか。それとも沖田さんが特別なことをしているのだろうか。
「格差社会だ。」
「違う。実力社会よ」
「理不尽だ」
「人生ってそんなものよ。そうだ。これからも私が家事をするのだから、一食当たり三百円払うってどうかしら。」
計算
一日九百円。月二万七千。
「ほぼ全額じゃないか。横暴すぎる。」
「その日の食べる物にも困っている人を思うと好待遇じゃない。」
「生活保護の方が確実にもらっているし、下手したら刑務所でももっともらっているんじゃないか。」
「そうね。児童誘拐。拉致監禁。相場くらいじゃないかしら。」
確かに、そうだけど。それを言われると何も言えない。僕が悪いけど。それでも、なんか納得いかない。沖田さんだって監禁しているし。
「僕の名義がなかったら、沖田さんは働けないし、この家にも住めないのかなーなんて。」
「家賃を払うのは私よ。そうそう。なんだか御恩と奉公みたいね。」
「鎌倉時代のか」
「うん。私がこの部屋と仕事を斡旋して、先生がそれに報いる。」
「僕が従者なんだね。」
「当たり前じゃない。」
「今思うと「沖田さん」ってすごく他人行儀ね。」
「じゃぁ何と呼べば。」
「そうね。主人だからネル様、とか」
間
「冗談よ。今まで通り「沖田さん」でいいわ。私も「先生」って呼ぶから。それに「先生」って呼ぶの結構気に入っているから。」
終始ご満悦そうだった。
いったい何がそんなに楽しいのか。僕をからかうことか。僕よりも上にいるというマウント的な状態か。はたまた。
確かに、この二十日間、生活自体は変わっていない。
しかし、確実に沖田さんは変化している。あるいは、成長している。
最近まで、僕への監禁は僕がやったことに対して、僕のを意識してのことだと思っていた。
でも、僕はここまで監禁という行為に対して積極的ではなかった。どちらかといえば、僕のしでかした罪に対して保身のためやむなくという感じ。
エスカレートしていく沖田さんの言動、自分の存在が上だという顕示。
その姿は散々話に聞いていた、父親のそれを連想させる。
血
しっかりとそのDNAが受け継がれてしまっているということか。もともと宿していたそれはこの二十日で覚醒してきている。
沖田さんはそのことを自覚しているのか。




