第三章 青年期事件編 ⑬
終わったのは九時を少し過ぎたころ。空になったダンボールを見ると、思いのほか達成感が得られた。
それと同時に虚無感に襲われる。僕の人生この仕事で一生を終えるのかな。そう言ってしまうと内職を生業としている人には申し訳ないけど、小学校の先生と比べると人には自慢できない。もう自慢する機会自体ないかもしれないけど。
「お疲れ様」
部屋に入ってくると暖かいコーヒーを置いてくれた。まるで優しい上司のように。自然な動作だった。
「沖田さんも、お疲れ。ずっとやっていたの。」
「そんなわけないでしょ。」
「えっ」
「朝とお昼の五時間で今日のノルマは終わったわ。」
「さいですか。」
ご飯時。
話しかけるのはいつも沖田さんから。
「質問、いいかしら。」
「あぁ」
「先生ってどんな人がタイプなの」
藪から棒に。
「そんな話をしてどうする。」
「ちょっと興味を持っただけ。」
「別に言う必要はないだろ。」
「うん必要ない。もう一生恋愛とかできないんだね。かわいそうに。」
その原因を作った張本人が、というセリフは毎度自分に返ってくるので言えない。質問に意味なんてなく、ただ、からかいたいだけだ。
それからのは生活は、特に変化もないまま日々が過ぎて行った。ただ、たんたんと作業をこなすだけ。なんとなくの勤務体制のようなものができた。僕は日曜だけ休み。沖田さんは土日共に休み、その代り家事は全部やる。僕は手錠のせいでできないから納得するしかない。人によってはこの状態を平和と呼ぶかもしれない。でも、僕にとっては決してそんなことはなく、胸が騒ぎ、気の休まらない日々。
毎日ひたすらに作業をした。




