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誘拐から  作者: 高束奏多
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第一章 少年期事件編 ⑤

出口は二か所。

窓の方が脱出できる確率は高いが、正直なところ飛び降りるのは怖い。

ドアの方が、犯人がいない場合は安全だ。もちろん、鍵がかかっていたり、物を置いたりして開かない可能性はある。こればっかりはドアノブを回してみない限り分からない。次に犯人と遭遇する可能性だが、これは大丈夫な気がする。時計はないものの、外を見た感じでは昼だ。朝でも夕方でもなさそうだ。部屋の感じからしても、主は一人暮らしの気がする。連れ去られた時の感覚として、大人の男の人が一人だったと思う。つまり、単独犯だ。家族がいるなら、そんな家に私を連れてこないだろう。そして、昼ならおそらく、働きに出ていて留守にしているはずだ。ここまで考えてから、いけると直感した。

 それでも、念には念を入れておくべきだ。

 私のプランはこうだ。

 まず、カーテンと窓を全開にしておく。そして、机で踏み台を作り、外に走ってジャンプできるように準備しておく。それから、ドアノブを回してみる。開いて、犯人がいなかったら、そのまま玄関から出ればいい。いたら全力でダッシュをしよう。私の身長なら、少しかがめば、勢いそのままに飛び降りられるだろう。開かなかった場合、もしも、犯人が隣の部屋にいたら、ドアノブの音で気づかれる。気づかれたら、終わりだと思おう。次にこんな機会はないはずだ。犯人のいる・いないは考えてもしょうがないことだ。だから、ドアノブが回らなかった時点で、同様に、全力でダッシュをして、飛び降りよう。

 そう決意した。

 やはり、足はすくむものだ。ドアノブを目指して上げた手は震えている。

 もう一度計画を反芻する。反芻とは哺乳類が一度飲み込んだものを、再び口に戻して噛み直して飲み込むことを言うらしい。こないだの動物番組でやっていた。どうでもいいことが頭をよぎる。集中しきれていない。恐怖のせいだろうか。

雑念を払うため、深呼吸をする。

なぜだろう。それだけのことで少し、落ち着いた気がした。

そして、敢えて笑顔を作って見せた。

もう一度、深呼吸をしてからドアノブに手をかけてみた。

意に反して、ドアはあっさりと開いてしまった。

普通は、部屋の扉に鍵なんてついていないか。



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