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誘拐から  作者: 高束奏多
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第一章 少年期事件編 ④

***


そこはあまりにも無機質で無表情な部屋だった。確かに、私の家も整頓されているという点では無機質かもしれないが、そういうのとは違っていて、殺風景な部屋だった。もちろん見覚えはない。カーテンの隙間からわずかに漏れる光のおかげで夜ではないということはうかがい知ることができる。

もう一つ理解できることがある。

私は誘拐された。

そして、監禁されているということを。

_あれからいったいどれくらいの時間が経過したのだろうか。

 おそらく、こんなことを考えている私は変わっている。きっと、普通の十歳児だったなら、泣き叫んだり、パニックになったりするのだろう。冷静というのとはまた違う。この気持ちは何なのだろうか_。

監禁されているとは言ってもそれほどしんどくはない。両手が後ろでテーブルに縛ってあるだけだ。とってつけたような、この部屋には不釣り合いなテーブル。私を縛るためだけに用意されたようなテーブル。それにしては、わざわざテーブルを設える必要はない。隣の部屋にもともとあったものなのだろう。扉の先には目的を半分果たせずにいる椅子だけが控えているのだろう。

音をたてないようにその場で動いてみると、ひらめいてしまった。確かに、ロープをほどくことはできない。でも、両脚で踏ん張りながら、頭で押し上げると、テーブルを浮かすことができる。その状態のままで両手を下にスライドさせるだけで簡単に抜け出せてしまった。テーブルの脚を縛っていた分の隙間ができたので、そのあとは簡単にほどくことができた。

身体だけは自由の身に慣れた。

改めて見ると本当に殺風景な部屋で、私を繋いでいたテーブルしかない。

家具としても不自然で、この部屋に対して大きすぎるという点でも異質だ。ある意味、私と同じくらいこの部屋には似合わない。

それより、次のことを考えなくてはいけない。

ドアまで歩いていくことはできる。ただ、開けるまでもなく、鍵は締まっているに違いない。万が一、開いてしまったとして、私をここに連れて来た犯人と鉢合わせする可能性を考えると、さすがにその勇気はない。窓に近づくこともできる。カーテンの隙間から覗く限り、ここは二階だった。ベランダや雨どいなどの、足掛かりこそないものの、怪我をする覚悟があれば、飛び降りるなんて、なんてことはない。大声を出せば、通りがかった人に通報してもらえるだろう。

なんて、お粗末な犯行なのだろうか。縛り方といい、監禁する場所といい。小学生の私ですら、監禁だけならもう少しましにできる自信がある。

どうやって脱出しようか。


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